出版社 : ベネッセコーポレーション
文学のみならず、20世紀の社会思想に広範かつ決定的な影響を与えたカフカの傑作短篇を精選して収録。カフカ文学の一大転換点ともなった記念碑的作品「判決」をはじめ、長篇「アメリカ」の序章ともいうべき「火夫」、アフォリズム的断章を積み重ねた「彼」など21篇を、長谷川四郎の名訳でおくる。
土から離れ、切り割りされた都会の空間で“生”を営む現代の姿を、ワンショットで捉えた断片を積み重ねるという斬新な手法で描いた表題作に、生の飢餓感を満たそうと彷徨う“性”の実相を見事に浮彫りにした中篇「裸」を収録。
第一次世界大戦に席捲され、暴力と死の翳におおわれた「われらの時代」の行き場のない不安と焦躁、そこからの脱出の苦闘を、日常生活の断片のスケッチによって描き上げた初期傑作短篇集。ドス・パソス、F.S.フィッツジェラルド、フォークナーら「失われた世代」の聖書として、当時の若い読者の圧倒的な共感を呼んだ。
夜更けに天麩羅を揚げて食べる隣家の活気にむせるアパートの住人たち。ナマケモノで鼻つまみの男がホトケとなり、同じアパートに住むよしみで、葬式を手伝うことになった若い夫婦の姿を鮮やかに描いた表題作ほか、淀みかかった生活の活力を描き出した短篇連作。
シチリアの貧しい家庭に育ったパスカルは、ある日故郷をとび出し、モンテカルロの賭博場で思いもかけない大金を手に入れる。郷里で偶然発見された水死体を自分と誤認された彼は、全く新しい人生を始めようと決意するが…。人間のアイデンティティ(存在証明)を根源まで問いつめた、ノーベル賞作家の代表的長篇。
陰鬱で閉塞的な地方都市ダブリンから希望に溢れる外界への脱出を夢に描き、挫折していく人々の生きざまを、幼年・思春期・成年・老年という人生の諸相においてとらえた短篇集。自然主義リアリズムと象徴主義、さらには「意識の流れ」の手法が複雑微妙に融け合い、壮大なるタブリン交響楽を奏でている。
電話こそ知恵の根源であり、電話コードこそ人間の連帯の具現である。-現代人の絶対的交流を電話コードを通して実現しようと企てる〈電話男〉たち。現在が孕む人間の閉塞を、斬新な文体と想像力で描き出した表題作と姉妹篇「純愛伝」を収録。
天窓からの光が、いま体じゅうに降り注いでいる。「聖霊」がぼくの中に入りこんでくるーコンクリートガレージの宇宙船に乗りこんだ少年が、異界の光と交感する幻想的な都市小説の表題作ほか、無人世界の不思議な力と感応して現代文学に新たな地平を切り拓いた6篇を収録。