出版社 : ベネッセコーポレーション
赤ん坊の誕生を間近にひかえた一家のほほえましいやりとり(「小さな弟」)。木箱で作った車で遠出をして帰りが遅くなり、両親にこっぴどく叱られる子供たちの話(「箱車」)。フランスの田舎町を舞台に、素朴な人情のふれあいと人生の深い味わいを流麗な文章で紡ぎ出した、郷愁を誘う32の掌篇。
どうぞ雨をふらせてくださいと、美しい雨姫さまのもとへ雨ごいに向かう少年と少女を抒情的に描いた「雨姫」、けちんぼの老人と猫とをめぐる怪奇な物語「ブーレマンの家」等、19世紀ドイツを代表する作家シュトルムが描いた珠玉の短編童話4編。
いなかの古い屋敷にあずけられた少女、グリゼルダ。ある日のこと、その屋敷に代々伝わる時計の中に住んでいるかっこうに出会い、不思議な世界への冒険に旅立ちます。-1877年の初版以来、世界中の子供たちに愛読され、“ファンタジーの元祖”と評される幻の作品。待望の初邦訳。
どんな願いもかなえてくれるという魔法の木。誕生日の朝、どこからともなく現われた不思議な少年に誘われ、その木を捜して森をさまよう少女の姿を、美しく、幻想的に描いた文豪フォークナー唯一の童話。
虚言癖のある男の妻に恋した主人公の千々に乱れる心の動きを克明に追った表題作「嘘つき」ほか、「五十男の日記」「モード・イーヴリン」の中篇3作を収録。登場人物の内面に〈視点〉を置くという画期的な手法で20世紀文学の扉を開いた、ヘンリー・ジェイムズの傑作心理小説。
「愛し、愛される、これが理想である。ただし、同一人物について、という条件が必要だろう。」-淡い光と影のなかを揺れまどう若者たちの姿を描いたみずみずしい青春小説。原題のLe Grand ´Ecartとはバレー用語で「両脚を広げて床にぴたりとつけること」であるが、幼い少年が一人の青年へと成長していく暗喩にもなっている。
外国で殺した男の形見として持ち帰った1本の手に復讐される話(「手」)、雪深い山小屋に一冬閉じこめられ、遂に発狂してしまう男(「山の宿」)、眠っている間に無意識のうちにテーブルの上の水を飲んだりする一種の「人格遊離〈ドッペルゲンガー〉」をテーマにした「オルラ」など、11篇の怪奇短篇を厳選して新訳。
カリフォルニア州サリーナスにほど近い港町キャナリー・ロウで、ある日突飛なパーティーが催される。-皆から「先生」と呼ばれ尊敬されている生物学者、ビジネスにはうるさい雑貨商リー・チョン、女主人ドーラの経営する売春宿の女たち、「ドヤ御殿」と名づけられた小屋に寝泊りする浮浪者たちが巻き起す笑いと涙の物語。
人生というばくちに敗れ、はずれ者として死んでゆく男虫喰仙次に対する深い親愛と共感を綴る表題作ほか、入学試験に失敗し挫折してゆく叔父〈御年さん〉や元海軍司令の父に寄せる想いを描く作品など7篇を収録。
人々が寝静まった深夜のロンドン。あらゆる物質的快楽に倦み果てた者たちが集まる秘密のクラブで、世にも残酷な死のゲームが繰り広げられる。享楽の果ての退廃した人間の姿を仮借なくあばき出した表題作のほか、美しい1個のダイヤモンドをめぐって次々に起こる奇怪な事件を描いた「ラージャのダイヤモンド」の2篇を収める。
何か1つプレイするたびに言いわけをしなければ気のすまない男を主人公にした「弁解屋アイク」、とんでもない癖の持ち主で誰も同じ部屋に泊まりたがらない「相部屋の男」-本場アメリカを舞台に描く抱腹絶倒のユーモア野球小説を中心に編んだ7篇。
天正年間、薩摩攻略から朝鮮出兵に至る秀吉の晩年の動静を、著者の郷里の城主・小早川隆景の恩顧をうけた武将たちが、茶会記という形式のなかであたかも日常の風景のように交々語り、その時代相を浮彫りにした名作。
孤独な老人の飢餓死によって発見された500巻の壮大な長篇小説は、人類に何をもたらしたか?この小説をめぐって、狂騒するマスコミ、昏睡する読者、跳梁する犯罪集団ー想像力の盲点を突いた過激な表題作に、無為の日常からの脱出を幻想的寓意で描いた「迷宮生活」を併せて収録。
「新しい第一級の作家の出現」とガルシンに激賞され、颯爽と文壇にデビューしたチェーホフの短篇から、「あるがままの生活を描く」という手法で書かれた前期の傑作「ともしび」、当時のロシアを閉塞した精神病棟になぞらえた問題作「六号室」、崇高な愛と凡俗な生活との間で揺れ惑う男女を描いた「犬を連れた奥さん」など6篇を収録。
「スカートに導かれて魂へ到達した」「臀に魂はない」-。70の坂を越えてなお貧欲に男漁りを続ける老女優テレーズをめぐる、狂気・反逆・無償の犯罪・自由と宿命の相剋。卓抜な警句が奔流のように迸り、濃密な香りを漂わす禁断のエロスの華が妖しく咲き乱れる世紀の奇書。
孤細胞(シングル・セル)のように生きる一大学院生と女子学生の共生と別離ー単独者の生の論理を思考実験的に追求し、人間の永遠の孤独と現代の愛の窮極のかたちを豊かな筆力で描き切った第14回泉鏡花文学賞受賞の長篇小説。
ヘンリー・ジェームズが「13ページで書かれた傑作」と激賞した「ねじけジャネット」、サマセット・モームが「世界短篇小説百選」の一つにとりあげた「マーカイム」、解剖用死体の盗掘と売買を扱った「死骸盗人」など、鬼気迫る7篇を収録。眠れぬ夜の一服の清涼剤として、ぜひお試しください。ただし、のみすぎにご注意!