出版社 : 中央公論新社
函館市内の中学校に通う関口俊太は、ロードバイクにあこがれていた。だが、父は失踪。母は水商売で、お金も愛情にも恵まれず、一人、ママチャリでトレーニングする毎日だった……。そんな俊太を回りは憐れみ、あるいはからかう。だが、ある日、岩熊自転車という自転車屋の店長との出会いが、俊太を変えることに! 『超高速!参勤交代』の著者による助け合うことの大切さと、最後まで諦めないことの意味を教えてくれる成長物語。
法律事務所で調査員として働く風町サエは、服役経験のあるシングルマザー。今回の依頼者は、アイドル候補生が店員の安売りピザ店で大儲けをした男。自殺した少女の両親から要求された一億二千万円の賠償金を減額させたいという。調査を進めるうち、ある人の過去にも迫っていくことになったサエはー。
望遠鏡で近隣の生活を覗き見する趣味を持つ老女・田島あぐ。ある晩、隣のマンションの屋上で一組の男女が争っている光景を目撃し、翌日、その女性が屋上から墜落死したことを知る。直前の様子を見てしまった自覚はあるものの、覗き見の罪悪感から警察に駆け込めないあぐだった。第二、第三の惨劇も起こり、棟居刑事が動き出す!
不可解な密命を帯び、太閤秀吉に接近、能の指南役となった、役者・暮松新九郎。目論見通り、秀吉は能楽に没頭するが、その狂気と妄執は新九郎を翻弄する。舞台の上では、家康・利家ら大名たちの思惑が交錯し、各座の役者たちの駆け引きも繰り広げられる。天下人と新九郎の運命が織りなす、桃山時代絵巻。
漱石、荷風、安吾、太宰、潤一郎ら16人の作家と白秋、中也、朔太郎ら8人の詩人の作品を厳選。酒に託された憧憬や哀愁がときめく魅惑のアンソロジー。 収録作品屠蘇……夏目漱石「元日」どぶろく……幸田露伴「すきなこと」ビール……森鴎外「うたかたの記」食前酒……岡本かの子「異国食餌抄」ウィスキー……永井荷風「夜の車」ウィスキーソーダ……芥川龍之介「彼 第二」クラレット……堀辰雄「不器用な天使」紹興酒……谷崎潤一郎「秦准の夜」アブサン酒……吉行エイスケ「スポールティフな娼婦」花鬘酒……牧野信一「ファティアの花鬘」老酒……高見順「馬上侯」ジン……豊島與志雄「秦の出発」熱燗……梶井基次郎「冬の蝿」からみ酒……嘉村礒多「足相撲」冷酒……坂口安吾「居酒屋の聖人」禁酒……太宰治「禁酒の心」●諸酒詩歌抄上田敏「さかほがひ」与謝野鉄幹「紅売」吉井勇「酒ほがひ」北原白秋「薄荷酒」木下杢太郎「金粉酒」「該里酒」長田秀雄「南京街」高村光太郎「食後の酒」中原中也「夜空と酒場」萩原朔太郎「酒場にあつまる」」
太平洋戦争の天王山・レイテ島での死闘を再現した戦記文学の金字塔。巻末に講演「『レイテ戦記』の意図」(昭和四四年)を付す。〈解説〉大江健三郎 (目次より) 第一巻 1 第十六師団 2 ゲリラ 3 マッカーサー 4 海軍 5 陸軍 6 上陸 7 第二十五軍 8 抵抗 9 海戦巻末付録 講演「『レイテ戦記』の意図」解説 大江健三郎(岩波書店版全集より再録)
突然の入院、離婚、介護費用。心配ごとは数あれど、前を向いて生きていたい。女の人生、どう貯めて、どう使う? 70代、50代、30代、20代の御厨家の3代にわたる女性たちの節約ストーリー。 【目次】 第1話 三千円の使いかた 第2話 七十歳のハローワーク 第3話 目指せ、貯金一千万 第4話 費用対効果 第5話 熟年離婚の経済学 第6話 節約家の人々
長野の山奥で起こった住民消失事件。それを解決するため派遣された陸上自衛隊特殊部隊サイレント・コアの土門康平一佐は、その現場でひとりの少女を保護する。彼女の体内には見たこともないメモリ機器が埋め込まれており、そこには動画データがーこの世界にはもういない人物から、司馬と姜を名指しして「自分たちを助けてほしい。われわれが全滅したら、この被害は拡大するだろう」というメッセージが記憶されていた。検証を重ねた結果、土門は最強コマンド・司馬は残し、原田&姜小隊を連れ、“彼”の救出を決意するが…?
五十三歳の真行寺弘道は、「巡査長」という肩書きが警視庁捜査一課で異例なだけでなく、きっちり公休を取り自宅のオーディオでロックを聴くのが楽しみという、刑事としてはかなりの変わり種。 捜査の「お約束」である所轄刑事との相勤を避けて単独行動するなど、型破りな行動・言動で知られている。これまた異例ながら、キャリアで捜査一課長の水野玲子警視に命じられた真行寺は、八王子の高級老人介護施設で起きた入居者死亡事件を捜査する。AI搭載の人形型介護支援ロボットが関わっているらしいその事件を調べるうちに、真行寺は、自らの職業を「ハッカー」と称するオーディオマニアの青年・黒木良平と親しくなった。同事件の捜査が一段落したところに、水野課長から連絡が入る。元警察官僚で衆院議員の尾関一郎が新宿のホテルで変死したという。捜査を進めるうちに、この事件の背後に政界・芸能界・反社会的勢力などが連なる大きな組織の存在をかぎ取った真行寺は、黒木の力を借りて真相に迫るがーー。 AIやゲノム編集など、リアルな知見に裏打ちされた痛快なエンターテインメント!〈解説〉北上次郎
ジャスミンはジゴバの酒場での出逢いが初めてではないことを直接告げることなく逝った。ケリーは婚姻を承諾した本当の理由を彼女に伝える前に、一方的に別れを告げられた。ジャスミンは知らない。己の命がまだ尽きていないことを。ケリーは知らなかった。『命の恩人の形見』が大切にされていたことを。-スカーレット・ウィザードこれにて完結。
「読めばきっと、時間を無駄にできないな、と思える、うつくしい作品でした」(伊坂幸太郎さんによる帯コメントより) 世にも不思議な病「量子病」に冒され、世界中を跳躍し続ける坂知(さかち)稀(まれ)。大学の図書館から信州の老婆宅に跳んでしまう午後もあれば、中東で目覚める朝や、ウィーンでオペラに興じる夜もある。これは神のサイコロ選びなのか、一瞬後の居場所すら予測できず、行き先も滞在期間も不明。人生を“積み重ね”られない彼女が、世界に爪痕を残すためにとった行動とはーー。これからの「幸せ」の意味を問う、感動のSF長篇!
しっかり貯金して老後の備えは万全だったわが家に、突然金難がふりかかる!後藤篤子は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるという。折も折、夫の父が亡くなり、葬式代と姑の生活費の負担が発生、さらには夫婦ともに職を失い、1200万円の老後資金はみるみる減ってゆく。家族の諸事情に振り回されつつもやりくりする篤子の奮闘は報われるのか?普通の主婦ががんばる傑作長編。
昭和五〇年代、上野稲荷町の「落語長屋」。噺家連中が持ち込む謎の数々を解き明かすのは、あの八代目林家正蔵!? 名人の推理が光る洒脱な落語ミステリ登場!〈解説〉林家正雀 【目次】プロローグ1話 「天災」から「初天神」幕間2話 「写真の仇討ち」から「浮世床」エピローグ解説 林家正雀
日の神は、いま、私の生を見棄てられた。私にそのことが、はっきりわかるーー輝かしい戦績を上げ、ガリア軍を率いて首都へ戻るユリアヌスに、コンスタンティウス帝崩御の報が届く。皇帝に即位した彼は宮廷政治と宗教政策の改革に着手する。そして、ペルシア軍討伐のため自ら遠征に出るが……。歴史小説の金字塔、堂々完結!【全四巻】〈解説〉山内昌之〈巻末付録〉対談「長篇小説の主題と技法」北杜夫/辻邦生
30代半ば、カフェで副店長をしているメイ。彼氏も好きな人もいないが、それなりに充実した日々を送っている。でも、結婚や出産、仕事の昇進試験から目を逸らしつづけてはいけないのもわかっていて…。人生の基本問題は解けても応用問題が解けないメイを、恋が大きく変えていく!ときめく気持ちを取り戻す恋愛小説。