出版社 : 中央公論新社
“絶望”から、目を背けるな。バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた…。
「--あなたに出会えてよかった」 東京湾を横断するフェリーが発着する小さな港町・金谷を舞台に、約30年に亘って、紡がれる出会いと別れ、そして再生の物語。--愛する妻、大好きな母を失った血の繋がらない父子。挫折し故郷に戻ったバレリーナと、寄り添う書道の先生。映画好きの同級生に恋した女子中学生の一大決心。卒業式間近に親友となった二人の男子高校生。余命宣告を受けた元妻と数十年ぶりに偶然再会した男。彼らを見守るフェリー乗り場の総合案内係・椿屋誠。無機質に見えた彼の心と表情も、人々の出会いと別れに触れ、やがて……。
どうして彼女がここにいる。 俺の前から、永遠にいなくなってしまったはずの彼女がーー。 千真の前に現れた少女は、かつての恋人と同じ姿、そして同じ《夕海》と名乗った。だが彼女は、二年前に死んでいる……。 更に、仕事中に遭遇した殺人事件ーー密室の中で死んでいたのは、恩師の亡き妻とそっくりな女性だった。 彼女たちの正体は? そして、この世界には《ナニ》が起きているのか? 注目作家・市川憂人が描くのは、《世界の色》がガラリと変わる驚愕必須のミステリ。
「飛ぶのが、怖いの?」 仕事で空を飛んで、この島にやってきた「僕」に人生2度目の決行のときが近づく。 無人のはずの北硫黄島に住む人々、戦争の記憶、看守と囚人、6色の風船……。人はなぜ飛ぼうとするのか、そして飛ぼうとしないのか。 文藝賞受賞第1作に書き下ろし「孤島をめぐる本と旅」を収録
「聞けや、者! 前右大臣ここにあり!」 本能寺の変を生きのび、関ヶ原合戦で柴田勝家を下し、天下獲りを目前にする信長。だが、密かに伊達政宗、上杉景勝と手を組み力を蓄えた家康が、ついに叛旗を翻す! 異貌の戦国史長篇(未完)、待望の合本版。 短篇時代小説「葉桜」を収録。 【目次より】 信長伝 1 本能寺炎上 緒言 転換点 序 本能寺炎上 一 その日まで 二 猟狗たち 三 第一次関ヶ原合戦録 2 天下普請 一 築城 二 大海の彼方で 三 叛逆 四 要塞 3 家康謀反 一 城塞 二 到着 三 衝突 葉桜
ついに台中が陥落した。300万都市を占拠した人民解放軍に対し、次期総統選を睨む台中市市長は驚きの行動に出ようとしていた。一方、台北市とその周辺では、国土防衛少年烈士団として中高生も動員されたが、そこにはひとりの日本人少年の姿も……。その頃、日本の奄美で、重要な会議が開かれようとしていた。一堂に会したのは、特殊部隊〈サイレント・コア〉を指揮する土門康平ほか、海上自衛隊第一護衛隊群司令、航空自衛隊総隊司令部班長、陸幕長といった面々。陸海空の力を結集させるその作戦名は“玉山作戦”。決死の進軍が始まるシリーズ第六巻!
「思いがけないことになったものだ。我が帝国海軍は長年、米英海軍を仮想敵と考えて作戦研究を進めてきた。それが今や、ドイツが最大の仮想敵になったのだから」 昭和一四年八月、ドイツがソ連との不可侵条約を締結したことにより、日本がそれまで進めていた独伊との同盟は頓挫する。かわりに日本に接近してきたのはドイツと対峙するイギリス、フランスであった。 やがて日英仏同盟が締結されるが、大陸を席捲したドイツ軍はついに英本土へ上陸。首都ロンドンを陥落させる。本国を脱出して東アジアに逃れた英艦隊は日本に亡命、これにより日本もまたヒトラー総統の怒りを買い、宣戦布告がなされた。 英仏政府の要請を受けた連合艦隊は、第一航空艦隊にセイロン島トリンコマリーへの進出を命じる。だがインド洋海面下では、牙を研いだ狼の群れがで息をひそめ獲物を待ち構えていた!
自分の目となり耳となって遠野保の民草の動向を見極め、逐一報告せよ。盛岡藩筆頭家老の密命を受け、御譚調掛として市井の噂話を蒐集する宇夫方祥五郎。座敷童衆に花嫁衣装を着たのっぺらぼう、火を吐く怪鳥、雪女。集まる「ハナシ」は虚実曖昧で荒唐無稽なものばかり。だが、迷家に棲む男と出会い、その裏に、法で裁けぬ悪を祓う小悪党たちが暗躍していたことを知ってしまったことからー。大好評巷説百物語シリーズ!第56回吉川英治文学賞受賞作。
1996年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年経った今も、被疑者の足取りはつかめていない。 殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受け、半地下で暮らす殺人犯から小さな窓越しに食糧をもらって生き延びる少年。 それぞれに守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を見せていくーー。 『火のないところに煙は』『汚れた手をそこで拭かない』の著者による、慟哭の長篇ミステリー。
海の向こうでは、戦争で毎日人が死んでいる。 でも遠くない将来日本からは、戦争を経験した人がいなくなる。 まだ若い僕たちは、この事実とどう向き合えばいいのだろう。 「僕は祖父の戦争体験を捏造したことがある」 戦時中のモノクロ写真をカラーにして掲載した『時をかける色彩』という写真集が刊行された。祖父母ですら戦争を知らない二十代の書店員がそれを店頭に並べたことで、やがて世界が変わり始める。保健室登校の中学生、ワーカホリックのテレビマン、アメリカから来た少年と、福島で生まれ育った高校生。遠い昔の話のはずだった「戦争」を近くに感じたとき、彼らの心は少しずつ動き出す。 平和を祈る気持ちが、小さな奇跡を呼ぶ。 読み終えたとき、少しだけ世界が優しく見える感動の青春小説。
SNSで取り上げられ、令和になってリバイバルヒットした伝説の作品を、刊行当時大きな話題を呼んだ「袋とじ」ごと復刻! 「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい……。 言葉が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。
人民解放軍は、驚異的な機動力を誇る空中機動旅団を台湾中部の濁水渓戦線に投入した。5万人規模の第2梯団は、その機動力をフルに活用しながら北上を進めていた。 その頃、台湾の北端、陽明山国立公園の森のなかでは、先に上陸していた軍神雷炎擁する第164海軍陸戦兵旅団と、台湾の海兵隊〈鐵軍部隊〉が対峙。台北と基隆の防衛を懸けた激戦が始まろうとしていた。 台湾が戦火に燃えるシリーズ第5巻!
プライツィヒ高校では学園祭において、二年生は演劇をおこなうこととされている。二年A組に在席するヴァンツァーは裏方を志望するも、クラス全員の反対にあい主役を務めることに。 ライジャもある人物から課外活動の一環で、舞台に出演を、と熱心に誘われ困惑する。 レティシアに至っては大学のセミナーの仲間たちがノリノリで芝居を企画、なんと『かわいそうな孤児』の役を演じる羽目に。だが、独特すぎる過去を持つレティシアには「自殺しようとする少年(レティシア視点による)」がなぜかわいそうなのか皆目理解できない。 一方、ジンジャーも少々悩むことがおき、インストラクターとしてジャスミンとケリーを引っ張り出した。かつて、映画撮影と偽り、黒玉(ジャスミン視点による)を吹っ飛ばした際の映画監督が関わる案件だった。 ジャスミンはルウもリィもシェラも誘い出し、プロの演技者に用事のできたヴァンツァーとレティシア、ライジャも同行するというフルメンバーがつどうことになる。
「別れた女に金の無心までして、あの人が目指すのは何なのでしょうーー」 明治に浪漫主義運動の旗頭「明星」を創刊し、数多の才能を育てた与謝野鉄幹。その人生には、彼に身も心も翻弄された女性たちがいた。「明星」の草創期を支え、子をなすも裏切られ続けた滝野、歌の才を愛されながら夭折した登美子、鉄幹の妻となり歌人として大成した晶子。それぞれに訪れる鉄幹との修羅場、女たちのふしぎな連帯、そして鉄幹を凌ぐ歌人となった晶子の壮絶な運命とはーー。心も金も才能も燃やし、自らの足で歩み始めた明治女性たちの不屈の歴史恋愛長篇。
義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は公演間近のオーケストラ!? ヤクザということがばれないように、コンサルティング会社の社員を装う代貸の日村。慣れないネクタイを絞めるだけでもうんざりなのに、楽団員同士のいざこざが頻発する。そんな中、指揮者が襲撃される事件が発生! 警視庁捜査一課からあの名(?)刑事がやってきて……。
元・警視庁刑事の藤原は二十四年前、「平成の刀狩り」で大量の銃器を摘発する大功績を挙げるも、女性関係で失脚したまま定年を迎えた。雨の夜、池袋の不動産会社で強盗殺人が発生。容疑者は刑期を終えたばかりの昇龍会元構成員・明石。過去に藤原が集めた銃器はすべて、この明石の提供によるものだった。事件後、藤原の前に現れたのはかつての不倫相手で現・公安部係長の橘。彼女は明石を逮捕するのではなく、殺害を目論んでいた。一方、六本木の半グレである南部はバイオ燃料の若手研究者と組み、ベンチャービジネスでの成功を夢見ていた。天涯孤独の南部は、所属するギャングチームから足抜けするために大金が必要であった。だがある時南部の前に現れた男が、顔も知らない父親の話を始める。なぜ警察は明石の命を狙うのか?そして明石の真の目的とは?
連合艦隊が総力を挙げて臨んだトラック沖海戦は、米海軍の撃退に成功したものの被害は甚大であった。開戦以来、艦隊の主力を担ってきた空母「赤城」「加賀」、戦艦「長門」他多数の艦艇や航空機が失われてしまったのだ。 もはや彼我の勢力は完全に逆転し、連日の空襲に晒されるトラックの防衛は限界に達していた。 じりじりと戦力を削られ続ける状態に、連合艦隊は苦渋の決断を下す。トラックを放棄し、マリアナに集中させた全軍をもって米海軍との最終決戦の敢行。 果たしてこの戦いの先に講和への道は開けるのかーー
「人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ」 スリルに憑かれ空き巣を繰り返す羽矢子。だが侵入した家の猫に引っかかれ、逃げた先で奇妙な老人に出会い……「猫どろぼう猫」 自尊心が高く現実に向き合えない王司。金目的で父の死を隠蔽した後、家にやってきたのは……「窮鼠の旅」 〈お手伝いさん〉として田舎の館に住み込むことになった、たえ。そこでの生活は優雅だが、どこか淫靡で……「風のない夕暮れ、狐たちと」 その他「十字路の蛇」「胡乱の山犬」「日陰の鳥」「音楽の子供たち」全七篇。 恒川光太郎が描く、《化物》たちの饗宴を、ご覧あれ。
時は元禄。紀州の農民の子・文吉は、巨大な廻船に憧れたことをきっかけに商人を志す。許嫁の死をきっかけに、彼は「ひとつの悔いも残さず生きる」ため、身を立てんと江戸で材木商を目指すー。蜜柑の商いで故郷を救い、莫大な富を得ながらも、一代で店を閉じた謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生き様に迫る痛快作!