出版社 : 中央公論新社
『家康、江戸を建てる』の数十年後…「大江戸」と「小江戸」をつくった男の人間ドラマ。明暦3年(1657)1月、江戸が燃え尽きた。のちに言う「明暦の大火」である。日本史上最大、世界史的に見ても有数の焼失面積と死者数を出したこの大惨事に立ち上がった男がいた。代官の息子に生まれながら、先代将軍・家光の小姓から立身出世を遂げた老中・松平伊豆守信綱。その切れ者ぶりから「知恵出づ(伊豆)」と呼ばれた信綱は、町奴・花川戸の長兵衛を「斥候」として使いながら、「江戸一新」に乗り出す。
やすらぎのひとときに、心にあかりを灯す21話の物語。 ◇オオカミの先生の〈ヴァンパイア〉退治 ◇五番目のホリーに託されたスープの秘密 ◇ギター弾きの少女の恋 ◇5391番目の迷える羊 ◇予言犬ジェラルドと花を運ぶ舟 ◇遠い場所で響き合う夜の合奏 ◇天使が見つけた常夜灯のぬくもり ……ほか 中公文庫既刊関連作を含む至福の掌篇小説集。 〈中公文庫創刊50周年記念刊行〉
2050年。日本の国力は低下し、海外資本が大量に流入。人口も減少し、かつて栄えた都市も今や廃墟と化していた。刑事である谷悠斗は池袋で発生した外国人拉致事件を追ううち、中国資本「未来集団」が経営するカジノに潜入することになる。不当逮捕された悠斗は民間刑務所に収監される。洗脳とも言える教育の果てに「未来集団」の一員として、日本国土の買収を繰り返すー。悠斗に、そしてこの国に希望はあるのか?荒廃が待つ未来の中に微かな光を示す傑作長編。
「遺憾ながら、第一五軍では敵新型戦車への対抗策をまだ見出しておりません。二式中戦車の七五ミリ砲では、あの戦車の正面装甲を射貫くことはできず、速射砲にも新型戦車を撃破可能なものはありません」 英本土奪回を目指す日本・イギリス連合軍はスエズ運河を押さえ、地中海への航路を確保せねばならなかった。しかしドイツ海軍との激戦を経て紅海を突破した連合軍の前には、北アフリカを堅守するドイツ・イタリア枢軸軍が立ち塞がる。 新型戦車を装備し戦力を飛躍的に強化したと思われた日本陸軍。だが、欧州を席巻したドイツ機甲師団を相手にかなりの苦戦を強いられてしまう。 枢軸軍はさらなる増援を計画していた。これを阻止するためには海上輸送路を断たねばならない。それには地中海を制するイタリア艦隊との激突は必須である。 連合艦隊はついに戦艦長門・陸奥の地中海派遣を決定ーー。
エスピオナージからミステリ、ミリタリーまで、著者の現代小説を集成した合本愛蔵版。長篇三作と、短篇「幻虎の吠える丘」を収録。 一等陸佐のもとに届いた、かつての上官である退役陸将補の訃報。彼はその死に、存在を秘匿された対敵諜報部門の関与を疑うが……。(『東京の優しい掟』) グラフィッカーの僕は、勤めているゲームソフト会社の社長から、独立を目論む者を突き止めて欲しいと頼まれる。何かが会社に起きている。裏切り者は誰なのか? ゲーム業界の中で新たな“ゲーム”が始まった。(『虚栄の掟 ゲーム・デザイナー』) 内憂外患に煩悶する青年将校が、母国再生のために叛乱を決意。果たして首都占領は成功するのか?(『平壌クーデター作戦』)
食品会社の社長・篠原の遺体が高速道路の非常駐車帯で見つかった。手形が不渡りになり、自殺の恐れがあると、妻からの捜索願を受理していた大阪・京橋署の上坂と磯野は、自殺とみて捜査を始める。篠原をめぐる人間関係、巨額の保険金、そして手形の行方……絡まりもつれ合う糸をほぐすような調査から見えてくる真相、その連鎖から浮かび上がる複数の事件は。
75歳になって、86歳のひとを好きになって、何が悪いの? 燿子がついに出会った「ぴったりな人」。 人生仕上げの情愛がもたらすものはーー。 ベストセラー『疼くひと』で70代女性の性愛を描いた著者が、 実感を込めて後続世代に送る、希望の物語 奇跡の出会い、周囲の偏見、肉体的交わり、終活への備え…… 「人は老いても、毎日を幸せに生きる権利がある」を合い言葉に、 燿子と理一郎がとった選択は?
「エレアル」-パラオの言葉で、「明日」「未来」の意味。太平洋戦争さなかの昭和17年。日本統治下のパラオ・コロール島。小学校教員である宮口恒昭の長男・智也はある事件をきっかけに、パラオ人少年のシゲルと親友になった。だが、父の転勤で智也も隣島へ転校することに。二年が過ぎ偶然再会したふたりは喜び合うが、戦争の暗い影は、こののどかな南の島々にも迫っていたー。時は流れ、昭和63年末。パラオ共和国独立準備のため訪日したシゲルは、天皇の容体悪化が報じられる中、戦後すぐ消息が途絶えた宮口家の人々を捜しはじめるのだが…。日本人とパラオ人の歴史と心の交流、戦争の悲惨さ、そして日本人の未来を問う、感動長篇。
武田晴信は、今川義元の臣・太原雪斎からの提案に驚愕した! 両上杉に古河公方、今川勢に武田を加え、北条大包囲網を敷こうというのだ。その戦略は現実のものとなり、いまや北条の河越城は8万の敵に囲まれている。 氏康の命運尽きたと誰もが思ったその時、10倍もの敵の目を眩ませる小太郎の奇策が発動する! 〈北条氏康シリーズ〉第三弾は緊迫の展開。
「屍体の重量がずしりと腕先にきたとき、はじめて私に任務らしい感情が充実しました」--。国民作家が終生描き続けた「組織・社会と個人との葛藤」をテーマに、これまで単著・全集未収録だった短篇小説を精選。自身の体験を反映した戦争小説から実在の事件をモデルにした小説まで、巨匠のエッセンスを凝縮した全十篇。没後三十年記念企画第二弾。 【目次】 任務(1955) 危険な広告(1954) 筆記原稿(1957) 鮎返り(1955) 女に憑かれた男(1956) 悲運の落手(1957) 秘壺(1960) 電筆(1961) 特派員(1979) 雑草の実(1976) 解説:権田萬治
世界の中心に聳える巨大な〈木〉。人々は枝の上に家を建て、各地から人が集まり、やがて国ができ、文明ができた。だが、他国から〈木〉のもとを訪れた学者は気がつく。 「こんなものは本来、地球に存在しえない」。 この〈木〉はいったい何なのか? 宗教の長となった少女、天文学に人生を捧げる青年、革命組織に身を置く男ーー 数奇な運命に巻き込まれた人々の叡智と苦悩が積み重なり、やがて壮大な謎が解き明かされていく。 これは力ではなく、知性で世界を変えようとした人たちの、幾千年の物語。
「フランス製の戦艦三、巡洋艦六、駆逐艦一〇隻以上から成る艦隊がマンデブ海峡を指して、紅海を南下している。それが現在の状況ですな?」 亡命イギリス政府を保護したことで、ドイツ第三帝国と敵対することになった日本。 第二次日英同盟のもとインド洋に進出した連合艦隊は、Uボートの襲撃により主力空母二隻喪失という大損害を出してしまった。さらなる被害を阻止するためには、紅海を封鎖しUボートの侵入路を塞ぐしかない。 攻略目標はマンデブ海峡を扼する要衝ジブチ。航空戦力を結集した日英連合軍の機動部隊の出撃ーー。 だが、対するドイツ海軍は強力な反撃を繰り出す。元フランス海軍最新鋭戦艦リシュリュー級とダンケルク級である。 想定外の強敵の出現に英海軍KGV級戦艦デューク・オブ・ヨークが立ち向かうが……。
その転校生は、クラス全員を圧倒し、敗北させたーー 夏休み明け、北海道立白麗高校2年8組に、東京からひとりの転校生がやって来た。汐谷美令ーー容姿端麗にして頭脳明晰。完璧な彼女は学校中から注目を集めるが、些細な事からクラスで浮いた存在になってしまう……。学校祭準備で美令と友人となった、クラスで孤高を演じる松島和奈。そして美令が孤立する原因を作ってしまった、クラスのカースト上位である城之内更紗もまた、美令、和奈と深く関わってゆく。それぞれ秘密を抱える三人が向かう先に待つものは、そして美令の「私、神様の見張り番をしているの」という言葉の意味とは……。今、彼女たちの人生で、もっとも濃密な一年が始まったーー。誰もがあの時を思い出す、青春群像劇の傑作! 最高に美しいラストシーンを、ぜひご堪能ください!! 「 今、私がひとりではないことが、奇跡なのだーー」
町田そのこ氏、おすすめ! 「自分を誰かに明け渡さない。それが、誰かを救うことにもなるのだ」 札幌の進学校に通う土橋輝明は、数学と生物が得意な高校3年生。同学年の特進クラス国立文系で第一志望は北大文学部という秦野あさひとは、「優等生」同士ということで、学校行事にペアで駆り出されることも少なくない「腐れ縁」だ。ある日、あさひに相談を持ち掛けられた輝明は、予想外の内容に驚き、思わず席を立ってしまう。翌日、彼女が失踪したことを知った輝明は、片親の違う弟で「料理研究部」では彼女の後輩でもある吉川航とともに、その行方を追い始める。彼女はどこへ消えたのか? 輝明は東京へ、そして沖縄へ向かう。徐々にあさひの過酷な生い立ちを知るにつれ、輝明は……。 親に期待できなくても、人生を諦めなくていいーー名作『氷の海のガレオン』『悦楽の園』の著者、10年ぶりの新作長篇。 【目次】 前口上 起 二○一三年七月中旬、北海道札幌市 承 二〇一三年七月下旬、埼玉県所沢市 転 二○一三年七月下旬〜八月上旬、沖縄県那覇市〜慶良間諸島 結 二○一三年十二月下旬、北海道札幌市 納め口上
最低限の食料しか与えず、幼い命を死に追いやり、自分たちだけ温かく安全な家に住む人間を追い出すため動物たちは謀反を起こした。 動物たちは文字を覚え、「動物農園」を営んで、自らのために働く喜びを手に入れる。 しかし一部の豚が君臨し始めると、動物たちが掲げた普遍の戒律は改竄され、恐怖と残酷な死が支配する世界に変わっていくーー。 非人間的な政治圧力を寓話的に批判したジョージ・オーウェルの世紀を超えた衝撃。発掘された名訳を描き下ろし装画とともに。 装幀・本文デザイン 名久井直子