出版社 : 中央公論新社
元・警視庁刑事の藤原は二十四年前、「平成の刀狩り」で大量の銃器を摘発する大功績を挙げるも、女性関係で失脚したまま定年を迎えた。雨の夜、池袋の不動産会社で強盗殺人が発生。容疑者は刑期を終えたばかりの昇龍会元構成員・明石。過去に藤原が集めた銃器はすべて、この明石の提供によるものだった。事件後、藤原の前に現れたのはかつての不倫相手で現・公安部係長の橘。彼女は明石を逮捕するのではなく、殺害を目論んでいた。一方、六本木の半グレである南部はバイオ燃料の若手研究者と組み、ベンチャービジネスでの成功を夢見ていた。天涯孤独の南部は、所属するギャングチームから足抜けするために大金が必要であった。だがある時南部の前に現れた男が、顔も知らない父親の話を始める。なぜ警察は明石の命を狙うのか?そして明石の真の目的とは?
トラック沖における連合艦隊の総力を挙げた海戦は、米海軍の撃退に成功するも被害は甚大であった。艦隊の主力を担ってきた空母「赤城」「加賀」、戦艦「長門」他、多数の艦艇や航空機が失われてしまったのだ。これにより勢力は完全に逆転した。連日の空襲に晒されるトラックの防衛は限界に達する。逼迫する戦況の中、ついに連合艦隊は苦渋の決断を下す。トラックを放棄し、マリアナに全軍を集中、米海軍との最終決戦に挑む。この戦いの先に、講和の道は残っているだろうかー。
スリルに憑かれ空き巣を繰り返す羽矢子。だが侵入した家の猫に引っかかれ、逃げた先で奇妙な老人に出会いー。(「猫どろぼう猫」)自尊心が高く現実に向き合えない王司。金目的で父の死を隠蔽した後、家にやってきたのはー。(「窮鼠の旅」)“お手伝いさん”として田舎の館に住み込むことになった、たえ。そこでの生活は優雅だが、どこか淫靡でー。(「風のない夕暮れ、狐たちと」)その他「十字路の蛇」「胡乱の山犬」「日陰の鳥」「音楽の子供たち」全七篇。“化物”たちの饗宴を、ご覧あれ。
時は元禄。紀州の農民の子・文吉は、巨大な廻船に憧れたことをきっかけに商人を志す。許嫁の死をきっかけに、彼は「ひとつの悔いも残さず生きる」ため、身を立てんと江戸で材木商を目指すー。蜜柑の商いで故郷を救い、莫大な富を得ながらも、一代で店を閉じた謎多き人物、紀伊國屋文左衛門。天才商人の生き様に迫る痛快作!
人民解放軍による台湾侵攻が止まらない。中国は、東京を狙った弾道弾攻撃で日本を牽制しつつ、台湾への攻勢を強めていた。台湾北部の紅樹林エリアでは、のちに「地獄の夜」と呼ばれる激戦が繰り広げられたが、台湾軍が辛くも勝利。ところが時を同じくして、中国からは5万もの兵が「第2梯団」として送り込まれていた。主戦場は、台湾中部の濁水渓へ。渡河の瞬間を叩くべく厚い防御陣を敷く台湾軍に対し、中国人民解放軍は、極秘裏に開発していた新兵器を大量に投入する。“サイレント・コア”部隊も参戦する、慟哭必至の第四巻!
ラバウルを巡る日米新鋭戦艦の激突に、連合艦隊は辛くも勝利する。これで根拠地トラックへの脅威を排除できたはずだった。だが、米国はニューギニア方面に進出。新たな航空基地を建設し再びトラックを脅かし始める。海戦を制するも戦況は好転せず、講和への道筋もまったく見えない。米軍の戦略目標は間違いなくマリアナ諸島だ。連合艦隊はトラックを死守すべきか?連合艦隊の総力を結集した第一機動艦隊が出撃する先はー
建久6(1195)年。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、目的のためには手段を選ばない政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とはー。
直木賞受賞第一作 昌幸、信之、幸村の真田父子と、徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永らの思惑が交錯する大坂の陣ーー男たちの陰影が鮮やかに照らし出されるミステリアスな戦国万華鏡。 誰も知らない真田幸村 神秘のベールに包まれた武将の謎を、いま最も旬な作家が斬る! 七人の男たちが、口々に叫んだーー幸村を討て! 彼らには、討たなければならないそれぞれの理由が……。
特別強行捜査局の朝倉の元に、海軍犯罪捜査局(NCIS)のハインズが訪ねてきた。米海軍の最高機密情報漏洩の疑いがあり、極秘捜査を手伝ってほしいという。その矢先、朝倉が襲撃され、中国中央統制部の工作員と間違われた可能性が浮上する。中国内部の複雑な事情から、元公安調査庁・特別捜査官の影山もその男を追っており……。日本を舞台に、水面下で激化する米中の対立を朝倉たちは止められるか。人気シリーズ第9弾!
わたしにはモノの声が聴こえるーミコは、依頼された家の“片づけ”を手伝う仕事をしている。服を手放せない主婦、本を捨てられない新聞記者、なんでも溜め込んでしまう夫婦、好きなものが見つけられない少女、死の間際に片づけを決意する老婦人…。部屋の数だけ、そこに暮らす人と、おしゃべりなモノたちとの思い出がある。近藤麻理恵が片づけてきた1000以上の部屋にまつわる実話を基に、川村元気が紡ぐ7つの部屋の物語。
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に突然、原稿が届く。それは以前新人賞で落選した志村多恵からのもので、学生時代の友人が時を経て再会するところから物語は始まっていた。立場の違う二人の会話はすれ違い、次第に殺意が募っていく。「いっそのこと、最後にこの女を殺してやろうか」-。そんな登場人物の苦境に思いを馳せるうち、梨帆自身の忘れられない出来事と原稿内容がリンクし始める…。私たちのシスターフッドがここにある、著者渾身のミステリー!
今、だれもがスタートを待っている。周囲の人々が“意義ある仕事”に邁進する中、心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。実家に届く不審な手紙、不登校になった甥の手で祖父の過去がひもとかれるとき、みのりの心は、予想外の道へと走りはじめるー。
新選組副長・土方歳三は箱館で落命したーはずだった。頭部に銃弾を受け記憶を失った土方は“内藤隼人”と名を変え、彼を慕う時枝ゆらとともに米国西部へと渡った。元新選組隊士・高脇との決闘の末、断崖から転落した隼人。意識を取り戻した矢先、母子が何者かに襲撃を受ける場面に遭遇する。隼人は、トウオムア(黒い月)と名乗るその母親とともに、さらわれた息子の奪還に乗り出すことになるが…。一方、ゆらの元には、兄である新一郎が岩倉使節団の一員としてサンフランシスコを訪れるという情報が舞い込む。帰国の好機に喜ぶゆらだが、隼人の消息は杳として知れぬままであった。果たして二人は、再び故郷の地を踏むことができるのか?