出版社 : 中央公論新社
世界の中心に聳える巨大な“木”。人々は枝の上に家を建て、各地から人が集まり、やがて国ができ、文明が生まれた。だが、他国から“木”のもとを訪れた学者は気がつく。「こんなものは本来、地球に存在しえない」この“木”はいったい何なのか?宗教の長となった少女、天文学に全てを捧げる青年、人生に絶望する配達員の男ー運命の奔流に巻き込まれた人々の苦悩と情熱が積み重なり、やがて壮大な謎が解き明かされていく。これは力ではなく、知性で世界を変えようとした人たちの、幾千年の物語。
20世紀初頭の清末民初、匪賊が跋扈し自然災害が襲う混迷の時代、林祥福は、兄とともに南方の町「文城」からやって来た女・小美を妻にする。束の間の幸せが訪れたが、小美は林家の金を持ち出し姿をくらましてしまう。林祥福は生後まもない娘を連れて妻を探す旅に出るが…。人災と天災、過酷な運命に翻弄され、それでも強く生きていく人々を圧倒的筆致で描く大河巨編。
亡命イギリス政府を保護したことでドイツ第三帝国と敵対することになった日本。第二次日英同盟のもとインド洋に進出した連合艦隊は、Uボートの襲撃により主力空母二隻喪失という危機に。さらなる被害拡大を阻止するには、紅海を封鎖しUボートの侵入路を塞ぐしかない。マンデブ海峡を扼する要衝ジブチに向け、航空戦力を結集した日英連合軍の機動部隊が出撃する。ドイツ海軍はフランス製の最新鋭戦艦を繰り出して迎え撃つ。想定外の強敵に、立ち向かう日英連合軍に勝機は…。
その転校生は、クラス全員を圧倒し、敗北させたーー 夏休み明け、北海道立白麗高校2年8組に、東京からひとりの転校生がやって来た。汐谷美令ーー容姿端麗にして頭脳明晰。完璧な彼女は学校中から注目を集めるが、些細な事からクラスで浮いた存在になってしまう……。学校祭準備で美令と友人となった、クラスで孤高を演じる松島和奈。そして美令が孤立する原因を作ってしまった、クラスのカースト上位である城之内更紗もまた、美令、和奈と深く関わってゆく。それぞれ秘密を抱える三人が向かう先に待つものは、そして美令の「私、神様の見張り番をしているの」という言葉の意味とは……。今、彼女たちの人生で、もっとも濃密な一年が始まったーー。誰もがあの時を思い出す、青春群像劇の傑作! 最高に美しいラストシーンを、ぜひご堪能ください!! 「 今、私がひとりではないことが、奇跡なのだーー」
高校3年生の土橋輝明は、同学年の秦野あさひとは「優等生」同士ということで、学校行事にペアで駆り出されることが多い「腐れ縁」だ。ある日、あさひに相談を持ちかけられた輝明は、予想外の内容に驚き、思わず席を立ってしまう。翌日、彼女が失踪したことを知った輝明は、片親の違う弟で「料理研究部」ではあさひの後輩でもある吉川航とともに、その行方を追い始める。徐々に彼女の過酷な生い立ちを知るにつれ、輝明は…。
最低限の食料しか与えず、幼い命を死に追いやり、自分たちだけ温かく安全な家に住む人間を追い出すため動物たちは謀反を起こした。 動物たちは文字を覚え、「動物農園」を営んで、自らのために働く喜びを手に入れる。 しかし一部の豚が君臨し始めると、動物たちが掲げた普遍の戒律は改竄され、恐怖と残酷な死が支配する世界に変わっていくーー。 非人間的な政治圧力を寓話的に批判したジョージ・オーウェルの世紀を超えた衝撃。発掘された名訳を描き下ろし装画とともに。 装幀・本文デザイン 名久井直子
大政奉還前夜、史上最大の乱痴気騒ぎはなぜ起こったのか。やくざ者に老婆に童、新米御庭番と御用町人。三河国吉田宿に降った数枚の御札が、彼らの命運を、そして天下をも混沌の渦に陥れていくーー 作家生活10年目に切り拓く新境地。人智を超えた運命の交錯が、歴史を、物語を駆動する!
“絶望”から、目を背けるな。バラが咲き乱れる家で、新進気鋭の建築家・青川英樹は育った。「バラ夫人」と呼ばれる美しい母。ダムと蕎麦が好きな仕事人間の父。母に反発して自由に生きる妹。英樹の実家はごく普通の家族のはずだった。だが、妻が妊娠して生まれてくる子が「男の子」だとわかった途端、母が壊れはじめた…。
「--あなたに出会えてよかった」 東京湾を横断するフェリーが発着する小さな港町・金谷を舞台に、約30年に亘って、紡がれる出会いと別れ、そして再生の物語。--愛する妻、大好きな母を失った血の繋がらない父子。挫折し故郷に戻ったバレリーナと、寄り添う書道の先生。映画好きの同級生に恋した女子中学生の一大決心。卒業式間近に親友となった二人の男子高校生。余命宣告を受けた元妻と数十年ぶりに偶然再会した男。彼らを見守るフェリー乗り場の総合案内係・椿屋誠。無機質に見えた彼の心と表情も、人々の出会いと別れに触れ、やがて……。
千真の前に現れた少女は、かつての恋人と同じ姿、そして同じ“夕海”と名乗った。だが彼女は、二年前に死んでいる…。更に、仕事中に遭遇した殺人事件ー密室の中で死んでいたのは、恩師の亡き妻とそっくりな女性だった。彼女たちの正体は?そして、この世界には“何”が起きているのか?灰色のベールが剥がされた時この謎の、真の姿が現れる。
仕事で空を飛んで、この島にやってきた「僕」に人生2度目の決行のときが近づく。無人のはずの北硫黄島に住む人々、戦争の記憶、看守と囚人、6色の風船…人はなぜ飛ぼうとするのかそして飛ぼうとしないのか。書き下ろし「孤島をめぐる本と旅」を収録。
ついに台中が陥落した。300万都市を占拠した人民解放軍に対し、次期総統選を睨む台中市市長は驚きの行動に出ようとしていた。一方、台北市とその周辺では、国土防衛少年烈士団として中高生も動員されたが、そこにはひとりの日本人少年の姿も…。その頃、日本の奄美で、重要な会議が開かれようとしていた。一堂に会したのは、特殊部隊“サイレント・コア”を指揮する土門康平ほか、海上自衛隊第一護衛隊群司令、航空自衛隊総隊司令部班長、陸幕長といった面々。陸海空の力を結集させるその作戦名は“玉山作戦”。決死の進軍が始まるシリーズ第六巻!
昭和一四年八月、ドイツはソ連との不可侵条約を締結し、日本が進めていた独伊との同盟は頓挫する。そこに接近してきたのはドイツと対峙するイギリス、フランスであった。やがて日英仏同盟が締結されるが、大陸を席捲したドイツ軍は英本土へ上陸。首都ロンドンは陥落した。英艦隊は東アジアに逃れ日本に亡命したため、ヒトラーの怒りは日本に波及、英仏政府の要請を受けた連合艦隊は、第一航空艦隊をセイロン島トリンコマリーへ派遣するが、インド洋海面下には牙を研いだ狼の群れが…!
自分の目となり耳となって遠野保の民草の動向を見極め、逐一報告せよ。盛岡藩筆頭家老の密命を受け、御譚調掛として市井の噂話を蒐集する宇夫方祥五郎。座敷童衆に花嫁衣装を着たのっぺらぼう、火を吐く怪鳥、雪女。集まる「ハナシ」は虚実曖昧で荒唐無稽なものばかり。だが、迷家に棲む男と出会い、その裏に、法で裁けぬ悪を祓う小悪党たちが暗躍していたことを知ってしまったことからー。大好評巷説百物語シリーズ!第56回吉川英治文学賞受賞作。
一九九六年、横浜市内で塾の経営者が殺害された。早々に被害者の元教え子が被疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から二年経った今も、足取りはつかめていない。殺人犯を匿う女、窓際に追いやられながら捜査を続ける刑事、そして、父親から虐待を受け、半地下で暮らす殺人犯から小さな窓越しに食糧をもらって生き延びる少年。それぞれに守りたいものが絡み合い、事態は思いもよらぬ展開を見せていくー。
海の向こうでは、戦争で毎日人が死んでいる。そして遠くない将来、日本からは戦争を経験した人がいなくなる。自分のことで精一杯の私たちは、こんな重い事実を受け止めなければいけないのだろうか。セクシャルマイノリティの書店員、保健室登校の女子中学生、家族にコンプレックスを持つテレビマン、アメリカから来た高校生と、福島から来た高校生。古い写真に秘められた記憶が解凍されるとき、若い彼らの心も動き始めるー
「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい…。言葉が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描き、その後の著者自身の断筆状況を予感させる、究極の実験的長篇小説。
中国人民解放軍は、第2梯団にホバーバイク、電動キックボードを導入した「空中機動旅団」を投入。戦局は一気に変わり、台湾軍の多大な犠牲とともに、台湾中部の濁水渓戦線は破られてしまう。彰化県へと軍を進めた第2梯団は、人口300万人を抱える台中市を次なる目標に据え、ある作戦を立案する。一方、日本からは、コンビニ支援部隊が空路と海路を経て、台湾東部上陸を目指していた。彼らが向かう台湾東部の軍港では、郷土防衛隊と自警団がバリケードを築いてはいるが、無数の避難民が殺到していた。戦線が拡大し、ますます混沌の度合いを深めるシリーズ第五巻!