出版社 : 中央公論新社
十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。
平安末期。十二歳の少年・駒王丸は、信濃国の武士・中原兼遠の養子として、自然の中でのびのびと育つ。兼遠の息子たちとも兄弟のように仲良く過ごすが、彼は実の父と母の名も、自分が何者なのかも、いまだ知らずにいた。ある日、駒王丸はささいなきっかけから、同じく信濃の武士の子と喧嘩になる。同等の家格であるにもかかわらず、後日、当主が謝罪に訪れ、深々と頭を下げて言った。「駒王丸殿はいずれ、信濃を束ねる御大将となられる御方。我ら信濃武士は、ゆくゆくは駒王丸殿の旗の下に集わねばならぬ」駒王丸、のちの木曾義仲の波瀾の生涯が始まろうとしていた。この男が幕府を開いていれば、殺戮の歴史はなかったかもしれない。日本史上最も熱き敗者の鮮烈なる三十一年。
夫は、私のこの秘密を想像だにしないだろう。ある翻訳家の告白的小説。1975年、ペンパルとして出会った主婦・怜子とイタリア人数学者・パオロ。魂の交流がやがて現実の交情に変じ、互いが79歳と87歳になるまでの濃密な日々を描く。
中国人民解放軍は、台湾海峡に一筋の人工雲を作りだした。線状降水帯に発達した特殊加工の雲は、日台両軍をいわば目隠し状態に陥れ、中国はその隙を突くように第3梯団を送り込む。第3梯団上陸の可能性があるのは台湾北西部、桃園か新竹のいずれかーその報に接した“サイレント・コア”率いる土門康平陸将補は、新竹市郊外で交戦中の待田小隊と、台北に詰めていた第三即応機動連隊を向かわせ、自らも上陸候補地点へと急行する。人工雲と第3梯団によって、未曽有の混乱に見舞われる台湾戦線。いよいよシリーズ第九巻、陸海空のすべてで繰り広げられる激戦を見届けよ!
ドイツ・イタリア枢軸軍を打ち破り、紅海からスエズへと攻め上る日英連合軍。次の目標は地中海の制圧とイタリアの打倒である。まずはシチリア島を占領すべく日英の上陸船団が進出するが、枢軸軍がそれを座視するはずがなかった。イタリア海軍に加え、ドイツ海軍も強力な艦隊を差し向けてきたのだ。対する連合艦隊もついに切り札である戦艦大和・武蔵が地中海に進出した。果たして、地中海の覇権を握るものとはー!?
「好きでやってることだすけな、仲間っこが来てければ嬉しいよ」 趣味もなく学校でも進路に迷っていた綾。でも「ひし形屋」で、より子先生に南部菱刺しを教わって、世界が一変した!?「魔女の菱刺し工房」 母が認知症となり、接し方に悩む香織。より子先生と一緒に無心で刺している中、あるアイディアを思いつく。「ひょうたん」 長らく引き籠もっていたより子の孫・亮平。より子は静かに亮平を見守っていたが……。「真麻の聴色」 苦しい時、嬉しい時、そして誰かを想う時。布の目を数え、模様を作るーー。 青森の南部菱刺しをテーマに描く、手芸×再生の四篇。
特殊部隊“サイレント・コア”原田小隊は、台湾の若者を集めた即席部隊を指揮し、台湾北部の都市新竹の外れにいた。台湾軍第6軍団が敵に包囲されているサイエンスパークに睨みをきかせていたその頃、上海国際警備公司(S.I.S)-中国最大の民間軍事会社の傭兵部隊が、桃園国際空港に迫っていた。人民解放軍の新たな兵器も投入され、少年烈士団が詰める空港エリアに最大の危機が訪れようとしている。高度な飛行性能を誇るドローンや跳躍地雷の性能を持つドローン、脅威判定を瞬時に行い敵を葬るAI制御の四足歩行兵器…新兵器続々登場のシリーズ第八巻!
『家康、江戸を建てる』の数十年後…「大江戸」と「小江戸」をつくった男の人間ドラマ。明暦3年(1657)1月、江戸が燃え尽きた。のちに言う「明暦の大火」である。日本史上最大、世界史的に見ても有数の焼失面積と死者数を出したこの大惨事に立ち上がった男がいた。代官の息子に生まれながら、先代将軍・家光の小姓から立身出世を遂げた老中・松平伊豆守信綱。その切れ者ぶりから「知恵出づ(伊豆)」と呼ばれた信綱は、町奴・花川戸の長兵衛を「斥候」として使いながら、「江戸一新」に乗り出す。
2050年。日本の国力は低下し、海外資本が大量に流入。人口も減少し、かつて栄えた都市も今や廃墟と化していた。刑事である谷悠斗は池袋で発生した外国人拉致事件を追ううち、中国資本「未来集団」が経営するカジノに潜入することになる。不当逮捕された悠斗は民間刑務所に収監される。洗脳とも言える教育の果てに「未来集団」の一員として、日本国土の買収を繰り返すー。悠斗に、そしてこの国に希望はあるのか?荒廃が待つ未来の中に微かな光を示す傑作長編。
英本土奪回を目指す日本・イギリス連合軍はスエズ運河を押さえ地中海への航路を確保する必要があった。だがドイツ海軍との激戦を経て紅海を突破した連合軍の前に、北アフリカを堅守するドイツ・イタリア枢軸軍が立ち塞がり、欧州を席巻したドイツ装甲師団を相手に苦戦を強いられてしまう。強敵のさらなる増援阻止のためには、海上輸送路を断たねばならず、地中海を制するイタリア艦隊との激突は必至であった。連合艦隊はついに戦艦長門・陸奥の地中海派遣を決定ー。
失踪した食品会社社長の遺体が、高速道路非常帯に駐車中の車内で発見された。多額の保険金、手詰まりになった資金繰り、不渡り手形…。彼の死は自殺と推定され、捜査はすすめられるがー。大阪・京橋署暴犯係の刑事、映画オタクの「勤ちゃん」こと上坂勤と、麻雀好きの礒野次郎のコンビが、丹念な捜査と緻密な見立てで、絡んだ糸を一つ一つひもといてゆく。ほどけた糸の先に見えてきたものとは?
人は、年をとればもう、肉体的な交わりは卒業するのが当たり前、と思っている。それが一般的な社会通念であり、言わずもがなの常識だ。理一郎と燿子も、出会うまではそんなものだと思っていたー。
“横山”でもなく、戦う理由もない僕の前に現れた一羽のカラス。導かれた先に、僕を待っているものは?世の中から距離を取っていた僕と、事件の渦中にいるカラス。わけもわからず向かった先には、刺激的で、危険で、でも、ちょっと楽しい世界が広がっていた。情報を持った鳥と、何も持たない僕の旅。その終着点には…。
「エレアル」-パラオの言葉で、「明日」「未来」の意味。太平洋戦争さなかの昭和17年。日本統治下のパラオ・コロール島。小学校教員である宮口恒昭の長男・智也はある事件をきっかけに、パラオ人少年のシゲルと親友になった。だが、父の転勤で智也も隣島へ転校することに。二年が過ぎ偶然再会したふたりは喜び合うが、戦争の暗い影は、こののどかな南の島々にも迫っていたー。時は流れ、昭和63年末。パラオ共和国独立準備のため訪日したシゲルは、天皇の容体悪化が報じられる中、戦後すぐ消息が途絶えた宮口家の人々を捜しはじめるのだが…。日本人とパラオ人の歴史と心の交流、戦争の悲惨さ、そして日本人の未来を問う、感動長篇。
日本は台湾防衛への参戦を決定した。台湾軍ならびに陸海空の自衛隊が協力して行われた“玉山作戦”によって、水陸機動団が台湾南部に上陸。水機団の指揮を執るのは土門康平陸将補、土門が率いる“サイレント・コア”部隊も台湾上陸を果たした。その頃、台湾北部の桃園国際空港エリアには、国民中学の生徒たちで編制された少年烈士団が詰めており、土嚢を積んだ防塁陣地の構築に駆り出されていた。そこに現れたのは、中国人民解放軍の輸送機の大編隊で運ばれてきた空挺兵の第一波であった…。自衛隊参戦で揺らぐ戦線を描く白熱のシリーズ第七巻!
武田晴信は、今川義元の臣・太原雪斎からの提案に驚愕した! 両上杉に古河公方、今川勢に武田を加え、北条大包囲網を敷こうというのだ。その戦略は現実のものとなり、いまや北条の河越城は8万の敵に囲まれている。 氏康の命運尽きたと誰もが思ったその時、10倍もの敵の目を眩ませる小太郎の奇策が発動する! 〈北条氏康シリーズ〉第三弾は緊迫の展開。