出版社 : 五月書房新社
クリック? クラック!クリック? クラック!
カリブ海を漂流する難民ボートの上で、屍体が流れゆく「虐殺の川」の岸辺で、ニューヨークのハイチ人コミュニティで…、女たちがつむぐ十個の「小さな物語」が地下茎のようにつながり、ひとつの「大きな物語」を育んでいく。「クリック?(この話、聞きたい?)」「クラック!(聞かせて!)」-物語の始まりを告げる掛け合いの言葉とともに、現代の“伝承”が生まれ出る。
デュー・ブレーカーデュー・ブレーカー
夫は、わたしの身内を拷問した「デュー・ブレーカー」(朝露を蹴散らす者=拷問執行人)かもしれない。わたしが勘づいていることを、夫もまた知っているだろう。いつの日か娘が両親の秘密を知って、アメリカでやっと手にしたこのささやかな幸せが失せる時が来てしまうのだろうか…。九つの挿話が、まるでカリブの濃密な夜空に輝く星座のように配置されるとき、故国ハイチの社会的記憶が浮かび上がる。
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