小説むすび | 出版社 : 作品社

出版社 : 作品社

泉鏡花きのこ文学集成泉鏡花きのこ文学集成

出版社

作品社

発売日

2024年6月4日 発売

「牛肉のひれや、人間の娘より、柔々(やわやわ)として膏(あぶら)が滴る……甘味(うまい)ぞのッ」 “世界に冠たる「きのこ文学」作家”泉鏡花の8作品を集成! 『原色日本菌類図鑑』より、190種以上のきのこ図版を収録! その魅力を説く「編者解説 きのこ文学者としての泉鏡花」付!  お姫様は茸(きのこ)だものをや。  紅茸と言うだあね、薄紅(うすあこ)うて、白うて、美い綺麗な婦人(おんな)よ。  山路はぞろぞろと皆、お祭礼(まつり)の茸だね。坊様も尼様も交ってよ、尼は大勢、びしょびしょびしょびしょと湿った処(ところ)を、坊主様(ぼんさま)は、すたすたすたすた乾いた土を行く。湿地茸(しめじたけ)、木茸(きくらげ)、針茸、革茸(こうたけ)、羊肚茸(いぐち)、白茸、やあ、一杯だ一杯だ。  初茸なんか、親孝行で、夜遊びはいたしません、指を啣(くわ)えて居るだよ。……さあ、お姫様の踊がはじまる。(「茸の舞姫」より) 化鳥 清心庵 茸の舞姫 寸情風土記 くさびら 雨ばけ 小春の狐 木の子説法 編者解説 きのこ文学者としての泉鏡花 飯沢耕太郎

森のロマンス森のロマンス

都パリを逐電したラ・モット夫妻は、荒野の一軒家で保護した美しき娘アドリーヌとともに、鬱蒼たる森の僧院に身を隠す。彼らを待ち受けるのは恐るべき悪謀ーー 今なお世界中で読み継がれる名著『ユドルフォ城の怪奇』に先駆けて執筆され、著者の出世作となったゴシック小説の傑作。刊行から二三二年を経て本邦初訳!  袖口にスリットが入ったグレーのキャムレットの衣装は、彼女の容姿を引き立てこそすれ、飾り立てるものではなかった。開いた胸元には乱れた髪が覆いかぶさり、慌てて纏った軽いベールは、混乱していたためか、上げられたままになっていた。(…)この荒涼とした家、そしてそこに巣くう粗暴な輩たちとはあまりに対照的な、優雅で洗練されたその様相を見るにつけ、彼は、これは実人生での出来事というよりは、想像力が生み出したロマンスなのではないか、という気がしてくるのであった。彼は何とか彼女を慰めようと努めたが、その誠意あふれる同情心に疑いを差し挟む余地はなかった。娘の恐怖心は徐々に収まってゆき、悲しみと同時に感謝の念も湧き上がってきた。 「ああ、ありがたや……」彼女は言った、「わたしをお救いくださるために、天が貴方様を遣わしてくださったのですね……どうか貴方様に神の報いがございますよう……わたしには貴方様以外、この世に一人の味方もないのです……」(本書より)

慈悲の糸慈悲の糸

オランダの文豪が描き出す、日本の原風景 大正時代、五か月にわたって日本を旅したオランダを代表する世界的な作家が、各地で見聞・採集した民話・神話・伝承や絵画などから広げたイメージをもとに描いた物語、全30話。 著者没後100年記念出版!  浄福と慈悲の阿弥陀、高く伸びた茎の先に花を咲かせ、陽ざしを浴びてきらめく幾千もの蓮華の池を越えて、至福の涅槃(ねはん)に入ることをみずからは望まなかった阿弥陀、その阿弥陀が東の水平線の上に、あるいは高みから波打つように下方に向かう山々の広大な稜線の合間に姿を現わすとき、その両眼は、胸元は、指先は光り輝く。  そして、その光とともに首の周囲の〈慈悲の糸〉を摘(つま)みあげる。死後の世界に阿弥陀のそばへ寄るすべての者たち、たとえ、ちっぽけな、とるに足らぬ者であれ、今こうして、両眼に光輝をたたえたその姿を仰ぎ見るすべての者たちへ向けて。いかにちっぽけでとるに足らなくとも、苦難に満ちた現世の生を終えたすべての者たちがその糸をつかみ、胸にしかと抱くようにと、首に三重(みえ)に巻いた糸を持ち上げるのである。(本書「序奏」より) 序奏 第一話 女流歌人たち 第二話 岩塊 第三話 扇 第四話 蛍 第五話 草雲雀(くさひばり) 第六話 蟻 第七話 明かり障子 第八話 篠突く雨 第九話 野分のあとの百合 第十話 枯葉と松の葉 第十一話 鯉のいる池と滝 第十二話 着物 第十三話 花魁(おいらん)たち 第十四話 屏風 第十五話 ニシキとミカン 第十六話 歌麿の浮世絵 『青楼絵抄年中行事』下之巻より 第十七話 吉凶のおみくじ 第十八話 源平 第十九話 蚕 第二十話 狐たち 第二十一話 鏡 第二十二話 若き巡礼者 第二十三話 蛇乙女と梵鐘 第二十四話 波濤 第二十五話 審美眼の人 第二十六話 雲助 日本奇譚一 権八と小紫 激情の日本奇譚 日本奇譚二 雪の精 親孝行の日本奇譚 日本奇譚三 苦行者 智慧の日本奇譚 日本奇譚四 銀色にやわらかく昇りゆく月 憂愁の日本奇譚 訳者あとがき

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP