出版社 : 作品社
天才と呼ばれた美術学校生と、そのモデルを務めた少女の悲恋。大正ロマンの旗手による長編小説を、表題作の連載中断期に綴った関東大震災の貴重な記録とあわせ、初単行本化。挿絵97枚収録。
東の大国・今川の脅威にさらされつつ、西の新興勢力・織田の人質となって成長した少年時代。秀吉の命によって関八州に移封されながら、関ヶ原の戦いを経て征夷大将軍の座に就いた苦労人の天下人。その生涯と権謀術数を、名手たちの作品で明らかにする。
一九六九年、秋。大学闘争が激化する中、フィギュアスケート場で出会った、四十九歳の自動車修理工・雪森厚夫と二十四歳の大学生・池端和香子。人生の大半を獄中で過ごした厚夫と心を病む和香子。いつしか惹かれ合うようになった二人は、突如新幹線爆破事件の容疑者として逮捕されるー。清冽な釧路湿原を舞台に、魂の救済と愛情の本質を根源から問う感動の恋愛長篇。大佛次郎賞受賞。
絶大な権力をもって冤罪を仕立てていく検察・警察と、厚夫と和香子の無罪を確信して二人のアリバイ証明に奔走する弁護団との熾烈な闘いがくり広げられるー。故なき罪に余儀なく問われ、互いの愛を確かめながら、時代の激流に翻弄されていく男女の孤独な魂を描く、感動の恋愛長篇。大佛次郎賞受賞。
「SWHラジオが言った、ニルヴァーナのバンドリーダー、カートなんとかの死体が発見されたって」一九九四年、ライフスタイルがデジタル化される前の最後の時代。ソ連からの独立後間もないラトヴィアで、ヘヴィメタルを聴き、アイデンティティを探し求めた少年たちの日々を描く半自伝的小説。一〇ヶ国語以上に翻訳され、ラトヴィア文学最優秀デビュー賞、ラトヴィアの文学作品で初となるEU文学賞を受賞し、舞台化・映画化されるなど刊行と同時に大きな反響を得た、著者デビュー作。
徳川三代(家康・秀忠・家光)を支え、江戸の繁栄を基礎づけた謎多き僧形の大軍師!比叡山焼き討ちから、三方ヶ原の戦い、本能寺の変、小牧長久手の戦い、関ヶ原の戦いと続く戦国乱世の只中を一〇八歳まで巧妙に生き抜き、江戸二六〇年の太平を構築した無双の傑物が辿る壮大な戦国絵巻。
★第9回日本翻訳大賞受賞 愛と憂鬱の〈ユートピア〉。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。 革命後に生の意味を問いつづける孤高の魂。「翻訳不可能」といわれた20世紀小説の最高峰のひとつが、〈ロシア的憂愁(タスカー)〉の霧の中からついに全貌を現した!--沼野恭子 わたしもプラトーノフのようになれたらーーピエル・パオロ・パゾリーニ(映画監督・詩人) 20世紀には、重要な作家が3人いたーーベケット、カフカ、そしてプラトーノフだーースラヴォイ・ジジェク(哲学者) 死への興味が嵩じて湖に自ら身を投げだした父親の息子アレクサンドル(サーシャ)は、ドヴァーノフ夫妻に引き取られて生活するようになり、やがて、ボリシェヴィキとして、彼の同伴者であり親友のコピョンキンとともに共産主義を探して県域を放浪し、共産主義が完成した理想郷チェヴェングールを見出すーー。 「もっとも謎めいて、もっとも正統的でないロシア作家」とも称されるプラトーノフの代表作にして生前に完成した唯一の長篇小説。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。 「『チェヴェングール』は、[……]世界史的な規模のインパクトをもった第一次世界大戦やロシア革命を念頭におきながら、現実を逆転させたような事柄を描いた挿話に溢れている。それらを通して〈あるいはそうであったかもしれないロシア革命〉が描き出されている。」(本書「解説」より) ◎解説=古川哲「あるいはそうであったかもしれないロシア革命」 ◎付録=P・P・パゾリーニ「アンドレイ・プラトーノフの『チェヴェングール』」+関連地図+主な登場人物
田舎の古い精神科専門病院に赴任した若手精神科医の鴇枝啓祐は、同じ病院に勤務する医長の杜臣慧から「声に邪魔されて眠れない」という相談を受け、薬の処方を頼まれる。途切れることのない頭の中の雑音と、自分を呼ぶ何者かの声に悩まされる杜臣。やがて病院では、夜中になると図書室や遊歩道で独りごちる杜臣の噂が立つ…。
「不吉な予感がする。今朝こそ、自分の番だという気がする」犯した罪の重さに煩悶しながら、神への信仰へ向かう死刑囚と若き精神科医との精神の交流を描く、畢生の代表作!日本文学大賞受賞。
「さて、恵津子君、悲しいお知らせですが、いよいよお別れの時が来ました。明日がその日だと、けさ、教えられ、なにかとせわしない一日を過しました」執行の日を迎える死刑囚の内面を余すところなく描く、畢生の代表作!日本文学大賞受賞。
1930年代、ソウルの路地裏。幼いノマと、その友だちトルトリ、ヨンイ、そしてキドンイが繰り広げる日常の物語。貧しくも、元気いっぱいの子ども時代。どこか懐かしい気持ちになる、大人のための童話集。
大学受験を控える高校生の少年が夏休みにプールの監視員のバイトをしていると、ある男から小学生の息子に水泳を教えてほしいと頼まれ、やがて、少年を自宅に招いた男は長い口づけをする…。高校生から大学生へと成長する少年のひと夏の経験が語られる、本集最年少の新星による表題作のほか、全十一篇を収録。
田舎町に魚売りの娘として生まれ、ソウルにわび住まいする大学生ビトナは、病を得て外出もままならない裕福な女性に、自らが作り出したいくつもの物語を語り聞かせる役目を得る。少女の物語は、そして二人の関係は、どこに辿り着くのかー。ノーベル文学賞作家が描く人間の生。
いまふたたび熱い注目を集める作家・都筑道夫が手がけた、翻訳にして創作“創訳”ミステリ小説3作品を一挙復刻!底本の書影・口絵・挿絵を収録!エッセイ・解説・註によって「ツヅキ流翻案術」を解剖!
昭和二十年の夏、敗戦によっていきなり奈落の底へ突き落とされた陸軍幼年学校の少年兵たちーその懊悩と混乱の中で引き起こされる精神のドラマを鮮烈に描いた問題作!
原色の、台湾文学。 「ほんとうの悲劇にはいつも滑稽な要素があるのよね」 大学生の主人公は、乗っていた車に自分からぶつかり飛ばされた謎の少女・品琴に興味をひかれ、調べていくうちに、バナナ畑のなかで暮らす彼女の家族とある宗教団体の関係を突き止める……。新世代作家の期待の星による、家族の秘密をめぐる怪奇的で幻想的な表題作のほか、中篇全三篇を収録する小説集。 邱常婷「バナナの木殺し」 王定国「戴美楽嬢の婚礼」 周芬伶「ろくでなしの駭雲」
張赫宙は、かつては、魯迅と相並ぶ、アジアを代表する作家と称された。しかし、植民地期朝鮮の作家として日本語で活躍したため、張の文学は戦後社会に帰属先を失い、長い間、漂流してきた。現在、多文化、多言語における「近代」の急速な見直しが進められるなか、「世界文学」としてその作品は再び注目されはじめている。本書は、代表作「仁王洞時代」をはじめ、文学的な価値が高いものを中心に珠玉の短編を編む。