小説むすび | 出版社 : 作品社

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不思議の探偵/稀代の探偵不思議の探偵/稀代の探偵

明治32年に「中央新聞」に連載された『シャーロック・ホームズの冒険』全12作の翻案と、翌33年に同紙に連載された「マーチン・ヒューイット」シリーズからの5作品の翻案。日本探偵小説の黎明期に生み出された記念碑的な作品の数々を、120年以上の時を経て初単行本化! 初出紙の挿絵129点を完全収録!  では何故、南陽外史は『不思議の探偵』のあとに、シャーロック・ホームズ譚ではなくマーチン・ヒューイット探偵譚を連載したのだろうか? おそらく彼は、黒岩涙香の影響から抜け出して、イギリスの探偵小説を中心に独自の世界を築こうとしていたのではないかと思われる。(…)  しかし『稀代の探偵』を発表したあと、南陽外史は、どういうわけかイギリスの探偵小説に対する関心が急激に薄れていったようで、結局、『シャーロック・ホームズの回想』が彼の手で訳述されることはなかった。(…)『不思議の探偵』の新聞連載が好評であったにもかかわらず、単行本として出版されなかったのも南陽外史の意向だったのかもしれない。  今回、『不思議の探偵』と『稀代の探偵』が復刻されたことにいちばん驚いているのは、案外、東京郊外の多磨霊園に眠る南陽外史その人ではあるまいか。(「編者解説」より) 不思議の探偵 毒蛇の秘密/奇怪の鴨の胃/帝王秘密の写真/禿頭倶楽部/紛失の花婿/親殺の疑獄/暗殺党の船長/乞食の大王/片手の機関師/紛失の花嫁/歴代の王冠/散髪の女教師 稀代の探偵 三度に渡る不思議の窃盗/自殺に擬う不思議の暗殺/水雷秘密設計書の不思議の紛失/希臘古代宝玉の不思議の消滅/破船に搭載せし万両箱の不思議の行衛 編者解説

線が血を流すところ線が血を流すところ

サーガはここから始まった! 高校を卒業して自立のときを迎えた双子の兄弟を取り巻く貧困、暴力、薬物ーー。そして育ての親である祖母への愛情と両親との葛藤。全米図書賞を二度受賞しフォークナーの再来とも評される、現代アメリカ文学を牽引する書き手の鮮烈なデビュー作。 「デビュー作には作家のすべてがある」とはよく聞く言葉だが、本作はただ舞台が同一であるという以上に、後続の作品でも一貫して問われ続ける貧困、人種、格差といったテーマや問い、そして事物(人物、動物、植物、薬物)が描かれている。 (…)南部の黒人コミュニティが人種差別だけでなく階級的にも虐げられた存在であることは、カトリーナ後の政府の対応の酷さによりアメリカのみならず世界中が知ることになった。しかし、そもそもカトリーナ以前から南部の黒人たちが過酷な生を強いられていることを『線が血を流すところ』は痛烈に突きつける。その筆致に、一切の容赦はない。 青木耕平「狼の街(ウルフ・タウン)の慈悲深い神ーージェスミン・ウォードが刈り取れなかった男たち」より

犬が尻尾で吠える場所犬が尻尾で吠える場所

パリとカリブ海、一族の物語。 小さな島の一つの家族の歴史と世界の歴史・人・文化が混ざり合い、壮大な物語が展開されるーー。 カリブ海/全゠世界カルベ賞などを受賞し、各所で好評を博した著者デビュー小説! パリの街外れに生まれ、父がルーツを持つカリブ海のグアドループ島とは肌色と休暇時の記憶のみでしか接点を持たない若い女性である「姪」が、家族のルーツを求めて自身の父と父方の伯母たちに話を聞きながら一族の歴史を掘り起こし、自らの混血としてのアイデンティティを練り上げていくーー。 複数の言語の間で、語り手の三姉弟はそれぞれに、自らの望むありようや生き方にふさわしい言語態度を探り当てようとした。(…)「姪」も、クレオール語を母語とはしていない。十全に話せるわけでもない。それでも「姪」はグアドループから受け継いだ何かを「自分の体の内に、言語の内に、世界の多様性の受け止め方の内に感じて」(…)いたし、「すべての大陸を旅した迷えるさすらい人たるアンティル人」(…)としての「自分の来歴とそれを形作るものを愛することを学んでいた」(「訳者あとがき」より)

秘薬紫雪/風のように秘薬紫雪/風のように

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2022年12月6日 発売

矢崎忠一は、最愛の妻を殺しました。 陸軍中尉はなぜ、親友の幼馴染である美しき妻・雪野を殺したのか。 問わず語りに語られる、舞台女優・沢子の流転の半生と異常な愛情。 大正ロマンの旗手による、謎に満ちた中編二作品。挿絵106枚収録。  どうした訳だろう。彼女(あれ)は、あの晩に限って、今まで一度も見せたことのないような厳然とした顔をして言った。 「あなたは取返(とりかえ)しのつかないことを仰言(おっしゃ)いましたわね。しかしあたしはもう覚悟をきめました。あなたはあたしの良人(おっと)です。さ、どうでも気のすむようになさい」(「秘薬紫雪」より)  私は一人の不思議な、風のような女の知り合いになった。(…)其日(そのひ)にも私は例の隅の卓(テーブル)で、食後の煙草(たばこ)をふかしていたのです。一人の見知らぬ女が、恰度(ちょうど)私と反対の隅に坐ってじっとこちらを見ているのです。特に注意を惹(ひ)く女でもなかったのですが、一見非常な苦悩を湛(たた)えて、世にもたよりないと言ったようなその眼が、じっと私を瞶(みつめ)ているのです。(「風のように」より) 秘薬紫雪 風のように 解説(末國善己)

岬 附・東京災難画信岬 附・東京災難画信

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2022年10月7日 発売

どうぞ心配しないで下さい、 私はもう心を決めましたから 天才と呼ばれた美術学校生と、そのモデルを務めた少女の悲恋。 大正ロマンの旗手による長編小説を、表題作の連載中断期に綴った 関東大震災の貴重な記録とあわせ、初単行本化。挿絵97枚収録。  葉山はお幹を帰してから、長椅子に腰かけ一つ所を見詰(みつめ)ながら、坐っていた。葉山は若い娘の泣くのをはじめて見た。洪水のような彼女の涙に誘われて一所に押流されそうだった自分を、危く踏止(ふみとど)まった、生れて始めての経験について自分を省みた。(…)  それにしても、彼女が画室を出る時「私もう決心しています」と言った言葉を、葉山はふと思い出した。 「お幹は死ぬかも知れない、それはもう理窟ではない、これは放ってはおけない」そう思いつくと、葉山は弾かれたように椅子から飛上がって、そこそこに着物を着換(きがえ)て外へ飛出した。お幹が、彼から遠く遠く去って行ったであろう路を歩きながら、彼は非常に感傷的(センチメンタル)になって路を急いだ。(本書より) 岬 東京災難画信 解説(末國善己)

小説集 徳川家康小説集 徳川家康

東の大国・今川の脅威にさらされつつ、西の新興勢力・織田の人質となって成長した少年時代。秀吉の命によって関八州に移封されながら、関ヶ原の戦いを経て征夷大将軍の座に就いた苦労人の天下人。その生涯と権謀術数を、名手たちの作品で明らかにする。 2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』視聴者必読! 家康は温和な人だという評言は秀吉の家康についての極(きま)り文句のようであった。秀吉は知っていたのである。(…)家康も温和な人だ。けれどもいつの日かその眼前に天下に通じる道が自然にひらかれたとき、そのときを思うと家康という人は怖しい。いったん道がひらかれた時、そのかみの彼自身が俄(にわか)に天下をめざす獰猛(どうもう)な野心鬼に変じた如く、家康も亦(また)いのちを張って天下か死かテコでも動かぬ野心鬼となる怖れがある。そういう怖れをいだくのも、家康自体にその危さが横溢しているためよりも、時代の人気があまり家康に有利でありすぎたせいだった。--坂口安吾「家康」より 鷲尾雨工「若き家康」 岡本綺堂「家康入国」 近松秋江「太閤歿後の風雲ーー関ヶ原の前夜」 近松秋江「その前夜ーー家康と三成」 坂口安吾「家康」 三田誠広「解説 徳川家康とは何ものか」

チェヴェングールチェヴェングール

★第9回日本翻訳大賞受賞 愛と憂鬱の〈ユートピア〉。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。 革命後に生の意味を問いつづける孤高の魂。「翻訳不可能」といわれた20世紀小説の最高峰のひとつが、〈ロシア的憂愁(タスカー)〉の霧の中からついに全貌を現した!--沼野恭子 わたしもプラトーノフのようになれたらーーピエル・パオロ・パゾリーニ(映画監督・詩人) 20世紀には、重要な作家が3人いたーーベケット、カフカ、そしてプラトーノフだーースラヴォイ・ジジェク(哲学者) 死への興味が嵩じて湖に自ら身を投げだした父親の息子アレクサンドル(サーシャ)は、ドヴァーノフ夫妻に引き取られて生活するようになり、やがて、ボリシェヴィキとして、彼の同伴者であり親友のコピョンキンとともに共産主義を探して県域を放浪し、共産主義が完成した理想郷チェヴェングールを見出すーー。 「もっとも謎めいて、もっとも正統的でないロシア作家」とも称されるプラトーノフの代表作にして生前に完成した唯一の長篇小説。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。 「『チェヴェングール』は、[……]世界史的な規模のインパクトをもった第一次世界大戦やロシア革命を念頭におきながら、現実を逆転させたような事柄を描いた挿話に溢れている。それらを通して〈あるいはそうであったかもしれないロシア革命〉が描き出されている。」(本書「解説」より) ◎解説=古川哲「あるいはそうであったかもしれないロシア革命」 ◎付録=P・P・パゾリーニ「アンドレイ・プラトーノフの『チェヴェングール』」+関連地図+主な登場人物

ノマと愉快な仲間たちノマと愉快な仲間たち

1930年代、ソウル近郊の村。少年ノマと、その友だちトルトリ、ヨンイ、そしてキドンイが繰り広げる日常の物語。貧しくも、心豊かな子ども時代。どこか懐かしい気持ちになる、大人のための童話集。  ノマはいたずら好きでやんちゃな五、六歳くらいの男の子だ。ノマは次々に遊びをみつけては仲間を引っぱっていく。おもちゃがなくてもボール紙を切り抜いて汽車や小犬を作り出す創意工夫のできる賢さもそなえている。大好きなお母さんのお使いをしたり、友だちが誘いに来てもがまんしてお手伝いをする優しい子でもある。  路地で遊ぶノマやトルトリやヨンイの家の暮らし向きはゴムの靴一つ新調するのも困難なほどで、それに比べるとキドンイの家は裕福で(…)それでも「ウサギと自動車」に見るように、いつしかキドンイも仲間に入っていっしょに遊ぶようになる。ひとりでに解決する子どもの世界に、読者はほっと心の温まる思いがするのではなかろうか。--「訳者解説」より 序にかえてーーノマってだあれ? 牧瀬暁子 1 ぼくが一番だ 2 水鉄砲 3 トウモロコシのポン菓子 4 電車ごっこ 5 お米屋さん 6 はだしになって行きます 7 コオロギ 8 ケンカ 9 ブドウとビー玉 10 女の子のコムシン 11 ふたりだけの秘密 12 いくらやってもきりがない 13 みんな、風の子 14 汽車とブタ 15 あんたとなんか、遊ばない 16 ノマの勇気 17 小さな発明家 18 自慢くらべ 19 いかけ屋のおじいさん 20 ネコ 21 コムシン 22 小さな母さん 23 ウサギの三きょうだい 24 ウサギと自動車 25 子犬 26 大きな決意 27 短篇小説 ヒキガエルが呑んだお金 訳者解説 初出一覧 訳者あとがき

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