出版社 : 光文社
港町を見下ろす高台にある高級料亭旅館“銀の鰊亭”。一年前の火事で当主とその妻は焼死。二人を助けようと燃え盛る炎の中に飛び込んだ娘の文は怪我を負い、記憶を失った。ところが、その火事の現場には身元不明の焼死体もあったー。あの火事は“事故”なのか“事件”なのか?文の甥・光は刑事の磯貝とその真相を追うことになるのだが…。
かつては温泉客で賑わっていた岐阜県宝幢村。十六年前の地震で温泉が涸れ、村は衰退する一方だ。この村で生まれ育った希子は、地震で家族を亡くし、伯父夫婦と暮らしている。年金で生活を支えながら伯父の介護に明け暮れる日々だが、村役場の課長・竜哉との結婚が決まり、伯母は誇らしそうに嫁入り道具を披露している。希子が暮らす家と空き家を挟んだ隣家に住むのは、七年前にIターンしてきた長谷川一家。家にはいつも頑丈に鍵が掛けられ、高校生の長男・耀は奇声を上げて自転車で走り回るなど、村人から不審がられていた。ある日、村おこしのために雇われたブロガー・茗が突如消えてしまう。希子は、村長の妻であり、農園や工場を手広く商う来宝ファームの社長・麗美に、茗の代役を強引に依頼されるが…
坂本壮馬は、生き方を探して兄・栄達が宮司を務める源神社で働いている。一緒に神社で起こるトラブルを解決してきた「名探偵」の美少女巫女・久遠雫に想いをよせるが、いつもクールで感情の見えない雫の心はわからない。雫につきまとう謎の男・上水流や、壮馬の元カノ・佳奈が絡み、壮馬と雫の関係は渾沌としていく。謎やお悩みを鮮やかに解決する雫と壮馬のコンビだが、二人の恋の行方は、神さまにもわからない?
元クリエイターで無職・無年金の夫と築45年の団地で倹しく暮らす59歳の私。遠い実家で独居する我侭で惚けた父の介護に行き来する日々。入退院、施設探し、説得、契約、実家の管理。時間に、お金に、人間に、振り回され、仕事は、定年は、介護の終わりは…。そんな矢先、夫に癌が見つかる。神は老いた父の死を願うような不埒な私に、罰として私の一番大切なものを奪うことに決めたのだ。還暦を迎える女のリアルな日常が胸を衝く、切実小説。
同級生の女子から絶えず言い寄られ、人妻との不倫に暗い愉しみを見いだし、友人は皆無の高校生・清家椿太郎。ある日、姉の御鍬が十字架に磔となって死んだ。彼女が遺した「この家には悪魔がいる」というメモの真意を探るべく、椿太郎は家族の身辺調査を始める。明らかとなるのは数多の秘密。父は誘拐事件に関わり、新聞で事故死と報道された母は存命中、自殺した兄は不可解な小説を書いていた。そして、椿太郎が辿り着く残酷な真実とは。第23回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
強盗容疑で勾留されていた竹迫和也が弁護士と接見中に脱走。彼は、定年間近の“乗り鉄”刑事・片倉康孝が、六年前に逮捕した男だった。休暇を使い、秘境のローカル線・飯田線で天龍峡に赴く片倉。道中で竹迫の生家を訪ね、近隣住民から、彼の幼い頃、祖母が強盗に殺されていたことを聞く。一方、犯罪を重ねて逃げる竹迫もまた天龍峡へ。彼にとって拭えぬ過去の眠る地で惨劇の幕が上がる。片倉は凶悪犯・竹迫の暴走を食い止められるか。そして衝撃の結末!
橘百花25歳。高校時代の同級生と結婚し、妊活を始めた矢先に乳がん発覚。古賀菜都32歳。老舗造り酒屋の嫁として育児に奮闘する最中に乳がん発覚。田中柚子29歳。花嫁検診で乳がんが見つかり婚約破棄。怒涛の三年が経過。闘病ブログを通して出会った三人は、ひょんなことから金沢を旅することに。若年性乳がんを乗り越えた著者が、女性たちの生きる希望と勇気を描く。
就職活動はうまくいかなくて、そもそも特にやりたい仕事もなくて、彼女とは喧嘩になり、未来が全然見えない。実家の母親はすでに亡く、父親はアイドルグループにはまっていた。笑うチャンスはたくさんあったけど、素直に笑える気はしなかった。気は優しくて、なさけない。モラトリアムを生きる若者たちを瑞々しく描いた傑作小説集。第11回小説宝石新人賞受賞作収録。
もっと気楽に、自分を愛したいあなたへ。200冊限定のブックファンドから、40万部を超えるベストセラーに。不安定な心をありのまま描き韓国で話題となったエッセイ、待望の日本語訳。
ヒステリックな母親がもたらすストレスは、大西恵子の精神を蝕んだ。苦痛から逃れるため薬物摂取に至り、彼女は壊れるばかり。父親の浩平は娘のために決意した。「どっかに逃げよう」十五歳の恵子は父と共に神戸へ赴き、慈愛に満ちた日々が心を癒していく。平穏な生活の合間、病の完治を期して訪れたクリニック。主治医の方針で二人は本心を綴ったレポートを提出することに。だが、暴かれる本音と醜悪な思惑が、幸福な生活に影を落とす。新たな問題作となる無慈悲の人間ドラマ。
小学6年生の橘玻璃は、少し前から小児脱毛症を患っている。慣れないウィッグはかゆみと違和感、友人にバレるのではという不安でいっぱいだ。そんな矢先、将棋部に属するハルは「Hu・cafe」という将棋の指せるカフェを近所で見つけ、店主の夕子さんの人柄に惹かれるようになる。女流棋士として活躍していた夕子さんは、訳あって引退し、カフェを開いたというのだが…大人への階段を上り始めた少女が、将棋と向き合い、悩みや苦しみを受け止めてゆく様をみずみずしく描く成長小説。
緊張の入社当日、初めて挨拶した上司は生まれたときから一寸、つまり三センチほどしかなく!?-一寸上司(一寸法師)。おばあさんが川で拾ったノートパソコンの桃のロゴから生まれた女の子は、情報工学の天才児で!?-ロゴから生まれた(桃太郎)。わらしべエージェンシー(わらしべ長者)、鬼の救い(こぶとり爺さん)など全12編収録。現代ショートショートの旗手による、魅惑のショートショート第2弾!
片桐真治は亡母の遺品から、行方不明だった母の弟・赤石の住所を知った。そこは過去、凄惨な殺人の現場となっていた房総半島奥地の山荘だった。翌日友人・貫井の勧めで、片桐は赤石を訪ねるが、赤石の態度に奇妙な違和感を感じる。帰途、自動車内でムカデに襲われ死にかけた片桐が戻ると、自宅が放火され、留守番をしていた貫井の妻と娘が惨殺されていたー。さらに一族の宿命の「敵」は奇怪な力で大量の死者を出しながら、片桐を狙う。彼に逆転の方法はあるのか!?第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した著者が満を持して放つ伝奇ホラー・サスペンス力作長編。
エドガー・アラン・ポーによって書かれた世界最初のミステリーは、短編小説『モルグ街の殺人』でした。シャーロック・ホームズのシリーズ短編が雑誌に連載されて大人気となったことで、ミステリーは大変な数の読者を獲得し、その波に乗って幾多の名探偵が生まれます。短編ミステリーには栄光の歴史があり、それは連綿と今日まで続いているのです。その最先端にご案内しましょう。あなたの心を捉えて離さない魅力に満ちたキャラクターも、謎も、捜査も、推理も、意外な結末も、この本に詰め込まれています。 日本推理作家協会 会員 有栖川有栖
あなたが日々何気なく発する一言の、「言葉の温度」は何度ですか?私たちが紡ぎだすひとつひとつの言葉には、それぞれに固有の温度がある。心地よい温かさで人を癒す言葉、熱すぎたり冷たすぎたりで誰かを傷つける言葉…日々の何気ない会話に耳をそばだて、本や映画の胸を打つ一節を心に留め、それらの言葉のもつ大切さや切実さを語りつくすー韓国で異例の150万部突破、社会現象にもなったベストセラーエッセイ。
ドイツの町ルーレッテンブルグ。賭博に魅入られた人々が今日もカジノに集まる。「ぼく」は将軍の義理の娘ポリーナに恋心を抱いている。彼女の縁戚、大金持ちの「おばあさん」の訃報を、一同はなぜか心待ちにしていて…。金に群がり、偶然に賭け、運命に嘲笑される人間の末路は?