出版社 : 光文社
ウォール街の法律事務所で雇った寡黙な男バートルビーは、決まった仕事以外の用を言いつけると「そうしない方がいいと思います」と言い、一切を拒絶する。彼の拒絶はさらに酷くなっていき…。不可解な人物の存在を通して社会の闇を抉る、メルヴィルの代表的中篇2作。
社長から休暇取得を厳命された爽香は、部下のあやめたちと温泉旅行の計画を立てる。そんな折、恩師・河村布子から相談が。社会人との交際が問題となった生徒・淡口かんなを、旅行に同行させてほしいというのだ。しかし、彼女とつながりのある人々は物騒な事情を抱えていた。爽香の休日は不穏な影に覆われて…。登場人物が年齢を重ねる人気シリーズ。特別短編「赤いランドセルー杉原爽香、十歳の春」収録!
航空自衛隊航空中央音楽隊でアルトサックスを担当する鳴瀬佳音は、ちょっぴりドジだけど憎めない女性隊員。練習と任務の演奏会に明け暮れる中、数々の不思議に遭遇する。失われた楽譜の謎、楽器のパーツ泥棒、絵葉書に込められた見えないメッセージ…。個性豊かな仲間たちと共に“事件”を解決!クライシス・ノベルの名手が意欲的に描く、爽やかで心温まる物語。
不審死や迷宮入りした事件、事故などを科学的に解明すべく設けられた警視庁行動科学課。FBIで捜査の訓練を受けた上條麗子刑事、日本で初めてME(メディカル・イグザミナー)の資格を取った一柳清香特別検屍官。幼なじみコンビは、相次いで不審死した夫婦を調べていた。結婚紹介所を経て、五十歳年の差婚をした夫婦に浮上した“派遣妻”の疑惑。その真相とは!?
東京の大学病院に勤めていた内科医の望月美並は、長野県大町市で祖父のあとを継いで警察嘱託医を務めることとなった。ある日、美並に警察から検死要請がくる。遺体は、北アルプスで滑落死したと思われる男性だった。検死が終わり、死体検案書を作成する段階になって、事態は一変、事件の可能性が出てきた。いったい死因は何か。著者渾身のシリーズ、待望の第二弾。
相模湾沖で発生したM7.9の巨大地震は、日本の首都機能を一瞬にして崩壊させた。内務大臣に就任した後藤新平は、未来を見据えた都市計画をもとに、帝都復興への壮大な構想を描いた。高額な復興資金、利権にこだわる各省庁の思惑、土地所有者からの反対。幾多の困難が立ちはだかるなか、後藤は高邁な理想に向かい突き進む。「真の政治家」の姿を問う著者渾身の傑作。
国内外の観光客で賑わう浅草に聳える高層ホテル。その警備室に、不審な男から“殺人予告”の電話があった。悪戯とは思えないが、被害者も犯行動機も判らない。数時間おきにかかってくる予告電話だけが唯一の手がかりだった。応対する田辺は元警視庁刑事で、住み込み警備員として勤務していた。見えざる犯人との息詰まる三十時間の攻防を描く傑作ハードボイルド!
駿河国汐崎藩の御刀番・左京之介は、藩主から、突然現われた「御落胤」の真偽を確かめる命を受ける。藩主の「御子」和千代は、誕生の砌に名刀「来国俊」の小太刀を下げ渡されていたという。その真贋を見極めようと動き出した京之介だったが、藩主の跡継ぎをめぐる権力闘争が勃発する。お家騒動に巻き込まれた京之介が最後に選んだ「道」とはー。著者会心のシリーズ第二弾。
将軍の毒味役を務める矢背蔵人介の元にかつて矢背家に居候していた望月宗次郎が帰ってきた。窮地に陥った吉原の花魁を助けに戻ったと告げる宗次郎だったが、その花魁は消息を絶っていた。宗次郎とともに行方を追う蔵人介の前に、宗次郎の出生と実の母にまつわるとんでもない秘密が明らかになったー。真の親子とは何かを問う、超人気シリーズ、感涙の第十六弾。
忍者の学舎が開校して迎える初めての夏。一平は、あやめら仲間たちとともに過酷な修行を積み、めざましい成長を遂げていた。一方、学舎では、妙義山中に隠す資金二千両を江戸へ運ぶ計画が持ち上がる。商家一行に化けての江戸行きー特に秀でた子供六人も旅に同行することになるのだが…。宿敵、風魔一党との凄絶な闘いが待ち受けていた!大好評シリーズ第二弾。
普請請負問屋「丹後屋」の娘を殺めた咎で捕まっていた、大工の磯吉が処刑された。磯吉は北町奉行所に無実を訴えていたのにもかかわらず、突然の執行であった。「事件の裏には何かある」。北町奉行のやり方が腑に落ちない忠兵衛の勘が騒ぎ、磯吉の娘おりつを訪ねるが…。(表題作)くらがり同心・角野忠兵衛と南町奉行・大岡越前が正義と人情で裁く、精選シリーズ第七弾!
江戸時代、紀伊半島の漁村・太地に、世界でもまれな漁法「組織捕鯨」を確立した人々がいた。磨かれた技を繰り出し、集団で鯨に立ち向かう「鯨組」は、仲間との強い絆と厳しい掟により繁栄を極めた。命を削る凄絶な戦いゆえに、鯨にも畏布の念をもって立ち向かう彼ら。江戸末期から明治へ、共同体の熱狂の季節と終焉を躍動感溢れる筆致で描く、全六編の一大クロニクル!
馬術師範として、近藤を救けた安富才助。粗暴なる英雄芹沢鴨。陸援隊に潜入した密偵村山謙吉。剣ではなく人を自在に操った土方歳三。生真面目な能吏尾形俊太郎。そして若き天才剣士沖田総司。激しい価値変転の時代、内部抗争の嵐を抱えながら、若き隊士たちは、青春の炎をいかに燃やし尽くしたのか。時に爽やかに、時に怜悧に、そして時に凄惨に描きあげた傑作!
愛媛に署長として赴任してきた若き警察キャリア。やる気ナシ。警察官としての使命感ナシ。ところがなぜか、難事件をたちどころに解決!?『長い腕』の川崎草志、まさかの新境地。ユーモア警察小説の傑作!
利一が小学生だった頃、仲間といれば毎日が冒険だった。真っ赤に染まった川の謎と、湖の人魚伝説。偽化石づくりの大作戦と、洞窟に潜む殺意との対決。心に芽生えた小さな恋は、誰にも言えなかった。懐かしいあの頃の記憶は、心からあふれ出し、大切な人に受け渡されるー。子どもがもつ特別な時間と空間を描き出し、記憶と夢を揺さぶる、切なく眩い傑作長編小説。
雨の夜、市議会議長が殺害された。波山署の本宮は県警捜査一課の若手・平原優子と組み捜査にあたるが、意外な容疑者が浮かび上がる。その影を追ううち、本宮たちは一人の青年の心の闇に出会うー。八〇年代のバブル経済に呑み込まれた男女と、それを見つめた彼らの子どもたち。ある家族の崩壊と殺人事件を通して、時代を生きる人間を鋭く描き出す、傑作刑事小説。