出版社 : 双葉社
女医桂千鶴のもとに重い下痢を訴える商人三人から立て続けに往診依頼が入る。流行病かと思いきや、全員、茶漬け屋の女将おつるに売りつけられた“霊水”を飲んでいたことが判明。涙ながらに潔白を主張する妖艶なおつるに不審を抱く千鶴。やがて、おつるの背後に蠢く乱倫な男関係が思わぬ事件を呼ぶ。稀代の悪女に隠された忌まわしくも哀しい過去とは?超人気シリーズ、待望の第十弾!
盗賊“眠り猫”の名を騙る謎の一団が日本橋室町の呉服屋に現れ、有り金全部を奪って店の主を惨殺した。盗賊“眠り猫”を率いる錏勘兵衛は、己に恨みを持つ者の犯行だと睨み、その正体を暴こうと動き出すが…。闇夜に繰り広げられる偽盗賊との息詰まる攻防。周到な罠を掻い潜り、勘兵衛らは“偽眠り猫”を追い詰めることが出来るのか!?大好評書き下ろし時代小説、シリーズ第四弾。
旧幕臣の娘である去場安は、岩倉使節団の留学生として渡米した。帰国後、日本にも女子教育を広めたいと理想に燃える安のもとに、伊藤博文から手紙が届く。「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。使用人たちに「けものの子」のように扱われ、暗い蔵に閉じ込められていたが、れんは強烈な光を放っていた。彼女に眠っている才能をなんとしても開花させたい。使命感に駆られた安は「最初の授業」を行う。ふたりの長い闘いが始まったー。
あなたの近しい人が、ある日突然殺されたらどうするでしょうか。嘆き悲しみ、怒り憤るでしょうか。-高校生の真裕子は、母を殺された。犯人は逮捕されるが、苦しみは終わらない。現実を受け入れようとするのだが、それができない。必死に精神のバランスをとろうとする彼女の周囲には、重く張り詰めた空気だけがある。果たして真裕子は、安らぎを得ることができるのだろうか…。
一方で、あなたの近しい人が殺人を犯したとしたら、しかもそれが夫だったらどうでしょうか。-刑事が訪ねてきて、夫が人を殺めたと香織に告げる。捜査の過程で明らかになる夫の姿。裏切り。そんな言葉では済まされない状況におちいる香織だが、夫は裁判で無罪を主張した。いったい、何が本当なのだろうか…。“事件”に関わる“人間”をあますことなく描いた大作。
失踪した若者たちに共通点がある。その背後にあるものを燻り出すべく、警視庁人事二課の環敬吾は特殊任務チームのメンバーを招集する。私立探偵・原田征一郎、托鉢僧・武藤隆、肉体労働者・倉持真栄。三人のプロフェッショナルは、環の指令の下、警視庁が表立って動けない事件を、ときに超法規的手段を用いても解決に導く。失踪者の跡を追った末、ついにたどり着いた真実とは。悪党には必ずや鉄槌を下すーノンストップ・エンターテインメント「症候群シリーズ」第1弾!
いつものようにコンビニでアルバイトをしていると、フルフェイスのヘルメットをかぶってゴルフバッグを持った客が入ってくる。防犯上の理由からヘルメットを取るようお願いする“おれ”に、客はゴルフバッグからライフルを取り出して言った。「今からこの店を占拠する」-人質となった探偵・川庄。不可思議な犯人たちの要求に、迫るタイムリミット。ラストで思わず膝を打つ、書き下ろし探偵ミステリー。
おいしいと評判のレストラン「ハライ」に、同じ時に訪れた6組の客の物語。仕事に納得がいっていない。認知症の症状がではじめた。ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない。人の失敗の匂いをかぎとってしまうー「足りない」を抱える事情はさまざまだが、前を向いて一歩踏み出そうとする時、おいしい料理とともに始めたい。決心までの心の裡を丁寧に掬いあげ、本屋大賞にノミネートされた感動作。
不動産会社に勤める独身サラリーマン辰巳友基は、ひと夏だけ、湘南のリゾートマンションの管理人を任される。赴任してすぐ、大企業の愛人と関係を持ってしまった友基は、それをきっかけに、様々な住人の女性たちと淫靡な交わりを持つ。そんなある日、浜辺でロングケアをなびかせた美女に出逢い、一目ぼれしてしまうが、友基には人には言えない性癖があった。オリジナル長編エロス。
川から引き上げられた錠前師八十吉の指無し死体。その下手人を追う定廻り同心樺山富士太郎は、錠前屋の高久屋岡右衛門に目星をつけるが、なかなかその証拠を掴めずにいた。一方、そんな窮状を見かねた湯瀬直之進は、探索の手助けを始めた矢先、かつて掏摸に遭ったところを助けた薬種問屋古笹屋民之助と再会、用心棒仕事を頼まれるが…。人気書き下ろし長編時代小説、シリーズ第二十九弾。
浜町堀の稲荷堂で倒れていた旅姿の女を助けた岡っ引の弥平次は、傍らに寄り添う幼い娘おつるを連れて小石川養生所に担ぎ込んだ。左腕に三分二筋の入墨のあるその女の名は“弁天のお染”、江戸所払いになっていた女掏摸だった。己の死期を悟り、三年前に攫ったおつるを親元に帰そうと江戸に舞い戻ったお染。その願いを叶えるため、弥平次はおつるの親を捜しはじめるが…。これぞ人情捕物の決定版、人気シリーズ第三弾。
定海藩では守旧派の首魁たちによる横暴が目立つようになり、さらに天候不順による飢饉が襲いかかろうとしていた。一方、江戸において藩を憂うも為す術のない筧忠兵衛には、神原采女正や浅井蔵人との避けようのない立ち合いのときが迫っていた。定海藩の運命と忠兵衛の運命、すべてが決着を迎える。書き下ろし長編時代小説第十五弾、堂々のシリーズ完結編。
江戸の上空に光る物体が現われ、人々から「なんじゃもんじゃ」と名づけられる。そんな折、鏡三十郎のもとへ、商家から妙な依頼が来る。四年前に姿を消した息子が帰って来たが、「天狗と暮らしていた」といい、天狗こそ「なんじゃもんじゃ」の正体だと断言するというのだ。果たして真相は?「三十郎あやかし破り」シリーズ第三弾。
キッド・ラビットが昏睡から目覚めると辺りには人っ子ひとりーというか、兎っ子一匹いなかった。そう、ぼくたちは人間じゃない。兎だ。人間たちはまだ気づいていないけど、兎社会を脅かす大事件が勃発した。死者が甦り生者を襲ってむしゃむしゃ喰っているんだ。いまや森は屍兎どもの天下だ。この兎史上最悪の状況を終わらせるには、死の山に棲む人喰い熊をキッドが狩らなければいけないという魔女ラビットのお告げなんだが…いったいなんてこった!
私の人生には猫が足りないの。彼女が猫のために動くと、必ず「死」や「犯罪」につきあたる。だから、放っておけないのだ。ラストに漂う、この祈るような静かな気持ちー。巻き込まれ型ミステリーに新たな味わいの傑作誕生!
明治になって衰退する柔術界に、新星のごとく「講道館流」が誕生した。提唱者は文武二道の達人、嘉納治五郎である。技のたゆまざる追究と人間教育への情熱によって、「姿三四郎」のモデルとされる志田(西郷)四郎ら「四天王」がめきめきと頭角を現す。若き気概に充ちた、闘う漢たちの壮大な物語が、いま幕を開ける。
柔術王国たる九州では、古流柔術の猛者たちが激突し、全国一の規模を誇る関東の揚心流戸塚派は、新興の講道館に激しく対抗心を燃やす。新しい時代、この国で覇をとなえるのは誰なのか?運命の「警視庁武術試合」を前に、闘いはいよいよ激しさを増す。
抗いがたい力によって掏摸を続ける男が掏摸集団にスカウトされる。そこで出会う個性豊かな人間たちとは…「指」。失業中かつ恋人の部屋に居候中の男が、刑務所前にある定食屋で働かないかと誘われる。出所者を見張るのがその仕事なのだが、男は恋人の助言もあって料理に手を加え定食屋を大繁盛させる…「飯」。そして文庫化にあわせて新たに書かれた物語…「嘘」。3編を繋ぐ妙技も見事な作品集。都会の片隅に生息する“放浪者”を鋭く活写した第33回吉川英治文学新人賞候補作。