出版社 : 国書刊行会
20年の時を経て、のどかで平和な山の村を再び襲った恐怖の出来事とは?(『アルプスの恐怖』)。表題作ほか、「アルプスのロビン・フッド」と今でも慕われる実在の通貨偽造者をモデルに描いた『贋金作りファリネ』、ある日突然異国の地からやってきた美少女が巻き起こす事件(『美の化身』本邦初訳)の2編収録。
泉鏡花晩年の傑作幻想長篇小説『山海評判記』の貴重な新聞初出テキストと、連載時に小村雪岱が描き下ろした面妖不可思議な三百点近い挿絵すべてを収めた豪華美麗本。別冊として、福永武彦と種村季弘の先駆的作品論、新発見の草稿原稿、詳細な解題等も収録。
『ユリシーズ』や『失われた時を求めて』と並び称される20世紀文学の大金字塔が半世紀の歳月を掛けて遂に翻訳なる!!カフカ、ムージル、ブロッホと並ぶドイツが生んだ巨匠ヤーンの最大の問題作。
船、棺、地下室、箱、馬、血液交換、吸血鬼、分身、死体保存、天使、妖怪、同性愛、時間、逆行、音楽…ひとりの作曲家を主人公に、人間と宇宙の謎と深淵、生存と死の深奥の根拠に迫る、異端の一大大河小説。
現代アメリカ文学を代表するファンタジストにして幻想文学のグランドマスター、ジョン・クロウリーの華麗な語りと静謐な物語世界が堪能できる傑作選。瑞々しいボーイ・ミーツ・ガールものから、異色の怪異譚、詩情あふれるSF作品まで、ヴァラエティに富んだ全12篇収録。
乙女心を魅了する秘密の花園“宝塚”。伝説のスターをモデルに実話を織り交ぜて描いた少女たちの夢と希望と友愛の日々-中原淳一の挿絵と共に『花物語』を彷彿とさせる花弁のように麗しい十八篇を収録。
アメリカ中西部の町に住む老人ウィアは静かに回想する、自分の半生を、過去の不思議な出来事を、説明のつかない奇妙な事件を…時間と空間を錯綜して語られる、魅惑と謎に満ちた物語の数々。邯鄲の夢と幽霊の館、千夜一夜物語とアイルランド神話、死者を縛める書と聖ブレンダンと猫と鼠の王、腕のない女と石化する薬剤師ー巨匠の初期傑作長篇がついに登場!美しい謎につつまれた記憶と物語についての物語。
16歳のときギリシア・ケファリニア島のユダヤ人社会を飛び出した美貌の少年ソラル。たぐいまれなる美しさと野心を合わせ持つ少年は、「運命の女性」オード・ドゥ・モサヌと結ばれ、25歳の若さでフランスの労働大臣まで登り詰める。しかし自ら捨てたはずの出自と、西欧社会の間で苦悩し絶望に陥った彼は、やがて破滅への道を歩み始めるー。圧倒的に饒舌な語りと狂奔する熱情がからみあう傑作長編。アカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した名作『選ばれた女』へとつながる物語。
結婚して13年、ゲーム・デザイナーで小説家の卵のデイヴィッド・ペピンは妻のアリスを深く愛しながらも、妻の死をくり返し夢想せずにはいられない。そしてアリスは不可解な死を迎え、ディヴィッドは第一の容疑者となる。アリスの謎の死を捜査する刑事二人も複雑な結婚生活の経験をもつ人間であった。ウォード・ハストロール刑事は自分の意思で寝たきりとなる妻と静かな闘いを続け、かつて医師であったサム・シェパード刑事は数十年前、妻の惨殺について有罪判決を受け、のちに無罪と認められた過去がある。デイヴィッド、ハストロール、シェパードの人生ドラマがヒッチコック的サスペンスを高めながらエッシャーの絵のように絡み合うなか、メビウスという名の不思議な殺し屋があらわれる。「おれが小説を終わらせてやる」そして現実とフィクションは浸食しあい、読者を迷宮に誘うー愛と憎しみ、セックス、不倫、妊娠、摂食障害、鬱病など結婚生活における諸問題をユーモラスに時にグロテスクな色彩を帯びた文章で緻密に描き、同時にエッシャー的構造の小説化を試みる、実験的かつ大胆な驚異のデビュー作!
絵が現れ出た瞬間、時の船は過去へと遡行して、耳奥に残った紙のざわめきが、舳先の切り進む波の音に聞こえた。日常のなかに仄めく幽かな異界との交感。夢と現、幻視と写実が交錯する、無気味で不思議な味わいの幻想譚6篇を収録。
とってもいい目をしているが、おつむが足りない若き新聞記者フレッド・フォーリー。彼はテレパシーでつながって人間を越えた存在になろうとする七人組の“収穫者”にそそのかされ、さる政界の大物が五百年前に実在した政治家と同一人物ではないかと思いつく。この記事を調べるうちに、フォーリーはいくつもの超自然的友愛会が世界に陰謀をめぐらしていることを知り、熾烈な争いの中に巻きこまれていく…世界最高のSF作家、ラファティによる初期傑作長篇がついに登場。善と悪、現実と幻想、正気と狂気が入り乱れ、奇天烈な登場人物が大暴れする唯一無二のラファティ・ワールド。
“レニングラードを地球上から抹殺せよ”1941年9月、ヒットラーの命を受けたナチス・ドイツ軍により完全包囲されたレニングラードは、その歴史上もっとも絶望的な冬に突入した。幼い弟コーリャをかかえるアンナ、アンナの父と秘められた過去を持つ元女優のマリーナ、アンナと心を通わせあう医学生のアンドレイ。飢餓と厳寒が牙を剥く極限状況のなかで、必死に生き抜き、希望の火を灯し続けようとする彼らの闘いを描き、「最高級の文学作品」と絶賛された、第1回オレンジ賞受賞作家による傑作長篇。
異国の地で城の地下牢に囚われた女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる人々-孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。
22世紀のある巨大都市で、突如理解不能の残虐な連続殺人事件が発生した。犯人は、ゴーレム100、8人の上品な蜜蜂レディたちが退屈まぎれに執り行った儀式で召喚した謎の悪魔である。事件の鍵を握るのは才気あふれる有能な科学者ブレイズ・シマ、事件を追うのは美貌の黒人で精神工学者グレッチェン・ナン、そして敏腕警察官インドゥニ。ゴーレム100をめぐり、3人は集合的無意識の核とそのまた向こうを抜け、目眩く激越なる現実世界とサブリミナルな世界に突入、自らの魂と人類の生存をかけて闘いを挑む。しかしゴーレム100は進化しつづける…『虎よ、虎よ!』の巨匠ベスターの最強にして最狂の幻の長篇にして、ありとあらゆる言語とグラフィックを駆使して狂気の世界を構築する超問題作がついに登場。
革命のたびに巨大化する銅像を崇拝する都市、精神状態の沈殿を再構成することで甦る絶世の美女、人間とロボットが逆転した世界、時間を貯める永遠時計…。ノンセンスな奇想と風刺と感傷が渾然一体となった台湾SF小説集。
1930年代なかばのスイス・ジュネーヴ。国際連盟事務次長の要職にあるギリシア・ケファリニア島生まれのユダヤ人ソラルと、大貴族ドーブル家の血筋を引く完璧な美女アリアーヌ。抜群の政治センスと類稀なる美貌とでその地位を築いたソラルは、社交界の貴婦人たちを虜にする現代のドン・ファンであり、ブラジルのレセプションで見初めたアリアーヌにも危険な恋を仕掛ける。「一つ賭をしませんか。もし三時間以内にあなたが恋に落ちなかったら、あなたのご主人を部長に任命しましょう」。ホロコーストの暗雲忍び寄るヨーロッパで、死の予感を秘めながら繰り広げられる反時代的な恋愛劇。人間の愛と欲を赤裸々に描いたその物語を縦糸に、アリアーヌの夫アドリアン・ドゥームが国際連盟で過ごす怠惰な一日、アドリアンの養母アントワネットのスノビスム、ドゥーム家の人々がソラルを招待するディナーの準備、国際連盟情報部長が開くカクテル・パーティー、女中マリエットのモノローグ、ソラルの故郷からきた5人の親類の狂騒など、魅力的なエピソードが織り込まれ、二人の恋は運命の深みへとはまっていく…。アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞の恋愛大河小説。