出版社 : 地方・小出版流通センター
明治のおわり。群馬県前橋市のちいさな織物屋の末っ子として、裕福ではないが暖かい家庭で育った小野沢智和。進学の夢をあきらめきれない彼は、東京本郷にある老舗の茶問屋・南条家で書生をしながら、一高へ通うことになる。智和が仕えるのは、帝大へ進む貴臣という涼しげな切れ長の目が印象的な青年であった。旦那様にも奥様にも似ていないような、怜悧な美貌の-。周囲を拒み憑かれたように勉学する貴臣に、慈愛と尊敬を込めて仕える智和であったが…。
自称「日本一わがまま」な、しかし極上のポスト鷲尾香。有能な通訳&秘書である穐谷絹一。対照的な人生を送る二人を、仕事上のほんの偶然が結びつける。ハードな毎日に身も心も疲れきっていた絹一は、鷲尾の持つ雰囲気に心地好さを感じる。そして、彼らはホストと客として契約をかわし、夜をすごした-。恋、ではない。だが、互いを愛しく想い、優しくしたいと願うこの気持ちは。大好評を博した小説b-BOY連載作品に、書き下ろしを加えた完結編。
チャイコフスキーコンクールで優勝を果たしたクラレスとスターシュ。名器「レギナ」を手放したスターシュに、クラレンスはグァルネリ作の「ディアボロ」を紹介した。憑かれたように練習を続けるスターシュをクラレンスは案じていたが、彼らは素直になれずケンカ別れをしてしまう。気まずいままスターシュはデビューのためNYへ飛び立ち、クラレンスはショパンコンクールへ向けて猛練習を重ねた。そんな時、クラレンスはジョルジュから意外な告白を受ける…。
最初に見えたのは喉だった。濡れた肌の色で綺麗にそらされた喉。それから少し開いた唇-。高校生活二年目も終わり、春休みが始まったある日。羽根智矢は中学時代からの友人四人と、冬から計画していた旅行を実行に移した。だが山荘に彼らが足を踏み入れた途端、洞院遥はある予感に襲われた。“ここに来てはいけなかった”と-…。時間を越えた哀しくも切ない愛を描いた表題作他、書き下ろしを含むモダン・ホラー傑作集。
藁科学園高校の廊下に、ある日写真が貼り出された。それは男子生徒が抱き合い、口づけている場面を隠し撮りしたものだった。写真の生徒の一人、則正和臣は学園中から攻撃され、顔が写っていなかった相手は誰なのかと追求される。その時、和臣の相手は自分だとクラスメイトの三条潮音が嘘の名乗りを上げた。潮音の真意がどこにあるのか-。複雑に絡み合う想い。そして、潮音に心を奪われた人ではない美しい生物が…。不破飛鳥、珠玉の描き下ろし小説。