出版社 : 実業之日本社
岸本勇二は、元銀行員。上司を殴って退職し、タクシードライバーをしている。学生時代、アメリカン・フットボールの選手だった彼は、いまも社会人のクラブチームに所属し、休日には仲間たちとフットボールを楽しんでいた。ある晩、勇二のタクシーに刑事が乗ってきた。スリの常習犯を追っているというその刑事に頼まれた勇二は、囮となって犯人逮捕に協力することになったのだが…。惜しまれて急逝した著者、最後の長編スポーツ小説。
一九四一年三月、太平洋戦争開戦を目前にして、日本海軍首脳は艦隊の編制に頭を悩ませていた。途中で駆逐艦が不足する恐れがある…。その不安を取り除くため、特別武装の駆逐艦四隻を新たに建造することになった。軍籍簿に記載されない“闇の艦隊”の誕生である。
新直木賞作家の最新小説集。街で偶然出会った男との逢びきに胸をときめかせる人妻…「うつせみの夢」。一年ぶりに思い出の土地にやってきたセールスマンの哀しみ…「入り日」。映画を観ているうちにスクリーンに突入していった男の不思議な体験…「ワイルド・シング」。仕事場のビルの窓から作家が目撃した出来事とは…「窓」など、名作映画を素材にした八編の作品集。
ロシアのスペース・シャトル“ブラン”を破壊するため、NASAの全面的支援のもと天翔は三度、宇宙へと飛び立った。しかし、ブランは天翔の放ったミサイルを難なく躱して帰投してしまう。失意のまま硫黄島に帰還した篠原原達を待っていたのは、周囲の批難と罵声だった。再度の決戦をめざし訓練に励む天翔隊だが、そんな中、日本上空に反射衛星を投入するため再びブランが打ち上げられるとの情報が届く。いよいよ天翔対ブランの一騎打ちの時が迫る。
美貌のOL純子は21歳のとき、20歳年上の日本画九鬼と出会い、初めて性の歓びを知った。やがて若い純子は九鬼と別れ、家庭をもち共稼ぎ主婦となるが、会社の周囲から信頼され、管理職として活躍する。しかし人生の充実感が感じられず、その不満から途絶えた九鬼との関係が復活する。そして以前にも増して深い性の充足を覚える。だが純子の好色はプロ野球選手、取引先のエリート社員などと交渉を持つが、いずれも満足できず、また九鬼のもとに帰って行く。純子の25年におよぶ半生の性と愛との真実の姿を描く。
江戸幕藩体制の危機管理はいかにしてなされたか。一揆、大火災、反乱、殺人…、数々の危機に、深慮と英断をもって対処した名君、会津藩主保科正之の実像に迫る、直木賞作家の傑作時代小説。
リュウ・アーチャーやフィリップ・マーロウやマイク・ハマーや、とにかく、その種の探偵小説を読んでいると、そこに自分の願望と人生の理想がうっとりするほど投影されているのだった。長い間夢に見てきた日々が、木野塚佐平氏の六十年の人生において、ついに現実のものとなりつつある。…新宿に『木野塚探偵事務所』を開き、電話を引き、秘書の募集広告をした。そして、応募してきた秘書は、華奢な首と、丸いとぼけたような大きい目を持ち、女子高生のアルバイトとみまがう痩せた女の子だった。木野塚氏はこの梅谷桃世と難問にとりくむことになる。
芸能界に続発する事件をマネージャー探偵が名推理。赤面症ゆえ表舞台に立てない朝館吾郎は、「芝山プロ」で元宝塚の大スター、神宮寺園子のマネージャーを務めている。このギョーカイは海千山千の猛者ばかり。だからさまざまな思惑がぶつかりあって、果ては殺人事件へと発展する。朝館吾郎、通称「オッタチ」は園子とのコンビで事件を推理、解決。
中国人マフィアと対決する警視庁刑事。東京都知事室へ、男の声で電話がかかってきた。「東京を火の海にしてやる…」。犯人は何者か。狙いは。その夜、入国管理局の収容所から、不法残留でつかまっていた中国人が集団脱走した。二つの事件を結ぶ意外な真実を知った刑事は、怒りに燃えてー迫力の書き下ろし。
ロシアのキラー衛星を無事破壊して帰還した篠原達に衝撃的にニュースが届いた。ロシアで革命が勃発、軍事政権が樹立され日本に宣戦布告した、というのだ。緊張した状況の中で、日本初の有人スペースプレーン・天翔の第二回フライトを目指し訓練を続ける天翔隊。しかし、ついにロシアはレーザーで根室を攻撃、街は焦土と化した。日本政府は遅ればせながら、天翔に出撃を命じた。