出版社 : 小学館
異国に暮らす由梨は、夫と自分双方の浮気相手が集うホームパーティーに参加する気になれず、ひとりで外出してしまう。遊園地の民芸館で知り合ったアメリカ男に誘われ、海辺のドライブについて行き、そこで男は、赤いネオンが点滅している宿「三匹の蟹」へ行こうと誘うのだった。果てしない存在の孤独感、そして愛の倦怠が引き起こす生の崩壊を乾いた筆致で描き出した「三匹の蟹」は第59回芥川賞を受賞。「三匹の蟹」以前に執筆された日本人女性留学生の青春への決別を描いた連作「構図のない絵」「虹と浮橋」も併録。
一神教のモノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリアの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていた「アマノン国」は、一切の思想や観念を受け容れず、実益のみが意味をもつ実質主義の国だった。男は排除され、生殖は人工受精によって計画的に行われるアマノン国に「男」と「女」を復活させるべく、Pは「オッス革命」に乗り出す。究極の「性」と「宗教」と「革命」のSF大冒険大作であり、第15回泉鏡花賞受賞作。
ママチャリたちが所属する心霊研究会は、本来の活動をそっちのけで、駐在さんとのイタズラ合戦を繰り広げていました。しかし、「心霊現象」にも、かかわっていたのです。今回の主人公は、騒がしいメンバーの中では寡黙なキャラの村山君。身長、年齢、車の運転技術、停学回数、モテモテ度はナンバー1。そんな村山君が、雨の日にジェミーを車で送っていったことから、怪奇現象の連鎖がはじまった。そして、ついに真夜中、村山君はスポーツカーとバトルし、事故に遭ってしまう。その事件の、おもしろくも切ない顛末を、ママチャリがホラータッチでレポートしちゃいます。
中学校の職員室を舞台に、14歳という繊細で多感な年齢の子どもたちと日々真剣に向きあう中学教師たちの、リアルな姿を描いた連作集。その中学校には代々語り継がれる伝説のヒーロー「エンドーくん」がいる。校内のあちらこちらに残された「エンドーくん」にまつわる落書きの言葉が、それを目にした悩みや葛藤を抱える教師や生徒の一歩踏み出すきっかけとなった。なぜ「エンドーくん」が伝説となったのか?その謎がラストで明かされるー。坪田譲治文学賞受賞作家の傑作が待望の文庫化。巻末に文庫版のために書き下ろした「エンドーくん」のその後の物語を収載。
父親と弟との三人暮らしを始めた女子高生の香月は、転校先になじめず孤独な毎日。ある時、隣に座る男子生徒のノートを間違えて開くと、そこにはたくさんのスイーツレシピが。「あの間宮くんが、ケーキ作り?」間宮立海は洗練された男の子。そんな彼の意外な秘密に驚く香月だが…。夜だけ開く喫茶店で、立海とたくさんのデザートを作りながら、祖母と母の手作りおやつを思い出す香月。ホットケーキ、プリン、いちご大福。誰かにおいしいと言ってもらうために。自分の居場所を見つけるためにー。思い出の味は、きっと幸せの味。あたたかい涙を誘う青春ストーリー!
古アパートに引っ越してきた青年・大央炎真の正体は、休暇をとって現世へやってきた地獄の大王閻魔様。日頃働き詰めの炎真の願いは、だらだら過ごす癒やしの休日。ところが成仏できない霊を見かけて説教してしまったり、犯罪を見逃せず生者を成敗してしまったり。そのたび「またうっかり裁いてしまった!」と秘書の小野篁に嘆く炎真。大家の地蔵菩薩からも霊がらみの案件を押しつけられ…。駅の自動改札機に冷や汗をかき、人混みに目を回し、コンビニスイーツに舌鼓をうちながら、炎真が現代日本を駆け回る。にぎやかに繰り広げられる地獄行き事件解決録!
人形修理工房“浮世堂”を営む城戸利市は、ある日“死神”が顔見知りの少女を襲う現場に遭遇する。それはかつて、利市の幼い弟が殺されたときとよく似た光景だった。利市が知る“死神”は、怪しげな人形を道具にして他者の命を奪う者だ。そして“死神”に殺されると、なぜか周囲の記憶からその存在を抹消されてしまう。だが、利市は忘れなかった。母親さえも我が子を忘れてゆく中、兄の利市だけが憶えていた。以来十五年、弟の理不尽な死の真相をずっと探っていたのだ。利市は“死神”を追う。しかし、そこへ新たな殺人事件が発生して…。
家庭の事情で住むところに困っていた大学生の僕・遠城寺廉は、尊敬する教授の紹介で田園調布に下宿することになった。ここは東京のはじっこにある、都会のような田舎のような、ちょっと不思議な町だ。下宿先は、ご近所から「おばけ屋敷」と呼ばれるレトロな豪邸で、大家の宝来碧さんは正体不明の美人だった。家事をしない宝来さんの代わりに料理や掃除を担当し、家賃は食費二万円のみ。破格の条件につられて住み始めたが、宝来さんの日常は謎に包まれたまま。そんなある夜、僕は宝来さんが電話で「死体の件は、問題ない」と話しているのを盗み聞いてしまい!?
平凡な公園ランナーであるインテリア会社「ワンダーケース」の社長・高木雅弘は、所属するランニングサークルの仲間たちと行なっている賭けレースにハマっていた。ある日、高木のもとに「明日のレースには負けなさい。さもなければ、ひとが死にます」と書かれた一通の郵便が届く。そして翌日、高木がレースに勝つと、さっきまで走っていた公園内で本当に男の死体が発見される。しかもその男は大学時代の同級生だったー。これは偶然なのか、それとも…。走れば走るほど、日常は壊れ、運命は狂っていくー。江戸川乱歩賞作家が放つ、戦慄のランニングミステリー!
最上級職“竜騎士”から初級職“運び屋”に転職したアクセル。新天地である『水の都』で仕事をこなすアクセルの前に、昔の馴染みである魔術の勇者・サキが現れて…?アクセルはさらに皆から愛され憧れられ頼られまくる!元竜騎士の最強運び屋が超速で送り届ける、トランスポーターファンタジー第二弾!
博物館に勤める青年・時枝正和は機動隊と学生の衝突で、一人の学生が橋から転落する様を偶然目撃する。煩雑な人間社会から逃れるように古美術世界に沈潜していた時枝だったが、この出来事により、閉ざしてきた外界に対する怒りと悲しみが再び覚醒する。事故死と報道された学生の死ーだが、時枝は死んだ学生のガールフレンドに会い、事件の深層に迫ろうとするのだった。全共闘世代に多大な影響を与え、早世した作家・高橋和巳が、その晩年、理想と現実に引き裂かれる内面の荒野を描き、未完のまま絶筆した長編小説の復刻。
太平洋戦争末期、東京から富山の漁村に疎開した小学5年生の杉村潔。その潔に対して屈折した感情をいだく地元の少年、竹下進。進は潔に表面上は友好的に接しながらも、裏で陰湿な悪事を繰り返し、潔はそれに戸惑う。都会からの疎開児への地元っ子の愛憎を中心に、戦争の影にゆれる海辺の村で繰り広げられる人間模様を描いた自伝的作品。のちに「少年時代」として漫画化、映画化もされた。また「長い道」の後日譚「同級会」と、特別に映画「少年時代」の脚本を手掛けた山田太一氏の解説(1989年執筆)も併録。
素封家ながらも実は貧民窟に出自を持つ男と、その妾の間に生まれ落ちた美しい娘・蝶子。第一部では蝶子が女体育教師・安宅と園芸手・葛岡という男との三角関係に巻き込まれる展開を中心に、そこから逃れる目的で選んだ裕福な青年・池上との奇妙な同居生活が描かれる。第二部では乞食に落ちぶれた蝶子が市井の人々を観察しながら自らの半生を振り返る流浪の月日を描く。芸術家・岡本太郎の母親であり、歌人としても名高い岡本かの子の耽美妖艶な大巨編。
ヒロインの生き様に痺れる傑作スリラー! 殺人事件で夫を失った元特殊部隊パイロットのマヤ。2歳の娘を案じ自宅に設置した隠しカメラに写っていたのは、2週間前に殺されたはずの夫ジョーだった。ジョーの死に潜む謎を追ううちに、マヤは4か月前に惨殺された姉クレアの死、そして17年前のある事件の真相へとたどり着く……。 ハードボイルドなヒロインの生き様、予想を大きく超える予想外の結末。ジュリア・ロバーツが惚れ込み映画化権を獲得した、「マイロン・ボライター」シリーズで人気の著者による最新傑作スリラー!
桂助は、虫歯によって歯無しになった人々が生きる希望を失ってしまうことに心を痛めていた。品川の宿から骸で見つかった男は千住品三郎といい、桂助が手当てして歯を抜いた患者だった。その品川では同じ頃、ツクヒ(破傷風)で死んだ男が見つかり、その遺体を焼いた男も不審な死をとげていた。続いて、投げ込み寺で見つかった八つの不審死体にも、全員歯が無かった。調べを進める内に、鋼次が何者かに連れて行かれ、そこに記憶を失った志保が現れる!一連の事件の背後には、歯無しになった人々の苦しみにつけ込んだ、某藩の恐るべき計画があったー。シリーズ終盤となる、第十五弾!
母と兄とさつきで営む万葉堂。体調を崩して寝込んだ母・登勢の容体が回復しないのを心配したさつきは、蘭方医に診てもらおうと伝手を探す。ある時、偶然居合わせた若殿と呼ばれる侍が紹介状を書いてくれたおかげで、大槻玄沢に母を診てもらうことができた。その侍は、老中田沼意次嫡男である田沼意知だった。しかし、母は亡くなり、家業立て直しのためにさつきは瓦版の発行を考える。そんな折、意知が殿中で刺殺の報せが入った。殺したのは、さつきにも縁のある人物だった!さつきは、事件の真相に迫れるのか?江戸の“女性記者”を描く、シリーズ第1作!
医大生でファッション誌のスナップページも飾る瓜生昌午、タクシー代わりにヘリを使う若手カリスマ経営者の巽克利、世界中を飛び回るヴァイオリニスト星川広太郎ー三人の共通点はイケメン、そして筋金入りの「鉄道オタク」!日常生活ではすれ違うこともない三人が、千葉・南房総を走るローカル線「いすみ鉄道」に乗り合わせた。鉄道旅を楽しむはずが、幼稚園の遠足、地元の高校で起きた幽霊騒動、BL好きご婦人の介抱、子供たちの失踪と列車に乗るたびに事件に巻き込まれ…。“イケメン×鉄オタ”トリオのドタバタ謎解き鉄道旅の行方はいかに!?
吉永杏珠は、都内で仕事をするおひとりさま女子。でも最近、公私共にトラブル続きで、気付けば不幸のどん底に。そんなある夜、ひとり暮らしの杏珠の部屋に、突如クラッカーの音が鳴り響いた。「おめでとうございまーす!!あなたには天界のキャンペーンで一億人にひとりが当選する、幸せへのヒントを知る権利が与えられましたー!!」ハイテンションで登場したのは、ゴスロリ衣装に身を包んだ妖精ヴィクトリカ(自称三百歳)と、その旦那(!?)でクマのぬいぐるみの妖精クラウド。ふたりは杏珠に、ハッピーになる「引き寄せの法則」を授けると言うのだが…。