出版社 : 小学館
両親が起こした火事で、ひとり生き残った幸子。子供たちを乗せた車で海に飛び込み、生き残ってしまったシングルマザーの雪絵。宿命的な出会いによって、二人の女性の人生が動き出す。“加害者”と“被害者”の思いが交錯した時、衝撃の真実が明らかになる!!慟哭のミステリー。
女人探訪の旅、新章へ。予測不能な男女の綾 大学三年生になった真吾は、同級生の宮本から自分が今住んでいるアパートの部屋を借りないかと持ちかけられる。なんでも宮本は、アルバイト先の事務員で人妻のセイ子と関係ができ、さらに、彼女から紹介された子持ちの未亡人・絢子とも深い仲になったという。そして、女所帯の絢子とその娘に情が移り、用心棒も兼ねて同居することを決めた宮本の話を、真吾は興味深く聞く。自身も下宿先の未亡人ちえと関係ができ、今後の逢い引きのためにも、また中学生になって女らしさを増してきたちえの娘・雪子と距離を置くためにも、その提案を受けることにする。引っ越しを済ませた真吾は、性の実験相手として始まり、今なお関係が続いている明美の存在をちえに明かす。アパートに住むということは、出入りが自由になる分、真吾が親しくしている女性たちが鉢合わせてしまう可能性があるため、先手を打ったのだ。ちえは、咎め立てることなく、理解を示す。新しい住まい、昭和荘にはいろいろな住人が住んでいた。真吾は引っ越し当日から早速、さまざまな男女間トラブルに巻き込まれることになる。
夏の島へーー旅先は淫らなアバンチュール 昭和荘に移った真吾の周辺には、つねに多くのドラマが発生し、騒動が起こっていた。同じ階の金杉の恋人あゆ子や、階下の人妻・時江から誘惑されるもなんとか逃れ、改めて東京にはいろいろな人間がいることを実感するとともに、その刺激を面白くも思うのだった。部屋には、かつての下宿先の未亡人ちえや東京での性のパートナー明美も訪れたが、ついにはちえの娘で中学一年生の雪子も遊びに来ることに。雪子を欲望の世界に導いてしまったことを悔やんでいる真吾は無難に切り抜けようとするが、雪子は部屋で二人きりになることを望む。雪子の積極性にある痛々しさを覚えながらも、その青い果実に情欲をそそられてしまうのであった。そしてまた夏ーー。郷里に帰る真吾は駅で同級生の岡本と偶然一緒になり、車内では相席となった男女と話がはずむ。男はブローカーで、女は夏休み明けからある商売に身を投ずるという春絵。彼女に誘われて、二人はその実家がある瀬戸内の島に立ち寄るため途中下車をする。島では若い未亡人のあまりある接待や春絵の情熱的な誘惑、そして広島から来ていた女性三人組との濃厚なアバンチュールが待っていた。
ワルシャワ市内の教会で、右眼に焼き串を突かれ男が死んだ。容疑者は、彼と共にグループセラピーに参加していた男女四人。検察官シャツキは早速捜査を進めるが、調べれば調べるほど事件は混迷し、一方で夫婦関係に閉塞感を抱いていた彼は若い女性記者に惹かれ、罪悪感と欲望との挟間で悶々とする。やがて、被害者の遺品から過去のある事件に気づくシャツキ。真実に手が届こうとしたその時、衝撃の事態が起こる…。日本のミステリーファンを唸らせたポーランドの怪作『怒り』、本作はその「シャツキ三部作」の第一作。
死者の無念は食べて解決。洋食異界ミステリ 匂いに誘われて入った「洋食店 幽明軒」で、無職の和泉沢悠人はアルバイトを始めることになった。厨房で働くのはシェフの九原脩平と妻・香子、フロアは娘の果菜子が担当している。悠人は果菜子に教わりながらバイト初日の仕事をスタートさせた。無事に営業を終えた午後8時、急に店内の温度が下がり、ドアからゆらりと現れたのは幽霊? 幽明軒は、現世に思いを残した死者が訪れる洋食店だった。 死者たちは、好きな洋食を一品オーダーし、それを食べることで過去のわだかまりを解消することができるという。悠人が初めて接客したのは、大正時代に交通事故で無くなった珠代だった。オーダーはライスオムレツ。結婚を誓い合った恋人と食べる予定のまま、些細なすれ違いから食べることの出来ないまま死んだ。シェフの脩平は珠代の話を聞きながら、恋人の本当の気持ちを導き出す(第1話「別れのオムライス」)。 「ナポリタンに込めた息子の気持ちとは」「私は誰に殺されたのか」死者たちが遺した思いに寄り添う“幽冥と顕世のはざまの”洋食店での人間模様を描く、全5話収録の食×異界ミステリー! 【編集担当からのおすすめ情報】 『鴨川食堂』など、 美味しいミステリーがお好きな方に、 ぜひ読んでいただきたいミステリーです。 お腹も心も温まります。
ある日、作家の新居航生のもとに一通の書状が届いた。それは、タイムスリップを研究しているという八木俊太郎という人物からで、タイムスリップを体験してみないかという勧誘だった。いたずらかとも考えたが、実際に体験したことを雑誌に書くことにしてやってみることにした。航生は中学生のときにいじめの標的にされたことがあり、それをリセットしたいと思ったのだ。タイムスリップはどう行われるのか!?果たして過去は変えられるのか!?いつしか、航生は中二の文化祭の会場にいた…。そして、過去に向き合った主人公に訪れた心境の変化とはー。ミステリアスな長編小説。
誠実だが真面目で性に対しても淡泊な薫と、好色で不誠実だが女性に優しく情熱的な匂宮。光源氏の血をひく、二人のイケメン貴公子の間で翻弄される女、浮舟の揺れ動く心と、愛欲におぼれゆく様を、恋愛小説の名手、林真理子がリアルに、執拗に描き切った問題作。恋愛小説の原初として、千年以上にわたって読み継がれてきた「源氏物語」の中でも人気の「宇治十帖」部分を大胆に新解釈。甘やかな恋心と若き男達の恋愛ゲーム、世紀を超えた二股愛の衝撃的末路は!?濃密な性愛描写とスピード感に読み始めたら止まらない!林真理子版「小説源氏物語」、ここに完結!
高校生の蕪木摂は、幼なじみで親友の名和秀真に告白しあえなく玉砕してしまう。気まずさを引きずったまま翌日、部活に向かう途中で不意に意識を失った摂が高校の保健室で目覚めると、そこは「どこか不可解な世界」に変わっていた。まったく同じ世界と目には映るのに、そこにいるはずのない人がいて、あるはずのない人間関係が成立している。夢か現実かと混乱するばかりの摂は、昨日とは別人のような秀真によって、とある古寂びた神社へと導かれた…。-世界は至極シンプルで、とても混沌としている。新感覚パラレル・ストーリー。
吉祥寺に住む閻魔様が現世の事件を解決! 吉祥寺の古アパートに住む青年・大央炎真の正体は、地獄の大王閻魔様。久しぶりの休暇を現世でのんびり過ごそうと、地獄から百年ぶりの現代日本にやってきた炎真だが、アパートの大家でもある腹黒な地蔵菩薩が差し出す美味しそうなスイーツに釣られて、はぐれ霊を彼岸に送ったり、罪を犯す生者を懲らしめたり……と、つい真面目に労働しては後悔する毎日だ。 ある日、焼き鳥をつまみながら散りかけた桜の見物でもしようと井の頭公園にやってきた炎真は、赤ん坊を抱えた着物姿の美女と出会う。公園の池に祀られている弁財天だと名乗る彼女は、「池の主が天に昇るのを助けてほしい」と炎真に頼み込むが……。 池の主と赤子をめぐる不思議な一夜、結婚をひかえた姉が見る悪夢の結末、悪徳ブリーダーに立ち向かう少年の奮闘など、痛快&感動の五話を収録。 「地獄でまた会おう」と言いながら悪を裁き、死者に安らぎを与える炎真と、イケメンホスト風な地獄の秘書官・小野篁、記録係のお子ちゃま・司録&司命ら、賑やかな仲間が大活躍。地獄行き事件解決録、第二弾です!
温泉なし、設備古しの海辺のお宿は、経営難を乗り越えられるか?お客さまは、けっして神さまではありません。でも、ときどき神さまがお客さまになってお越しになることはありますー。ひよっこ若おかみに、世間の風は冷たい!
映画『この道』の小説版。主題歌CD付き 童謡誕生100年に制作された映画『この道』の脚本から生まれたオリジナル小説。稀代の詩人・北原白秋と天才音楽家・山田耕筰の交流を通して人間味溢れる表現者たちの人生を描く。さらに映画の原点となった長編小説『ここ過ぎて 白秋と三人の妻』の著者である瀬戸内寂聴と北原白秋を演じた大森南朋、山田耕筰を演じたAKIRA、瀬戸内寂聴の秘書・瀬尾まなほによる『この道』スペシャル座談会、瀬戸内寂聴と主題歌を歌うEXILE ATSUSHIとAKIRAのスペシャル鼎談も収録。EXILE ATSUSHIが歌う主題歌「この道」CD付き。 映画『この道』2019年1月11日新春公開
最上級職“竜騎士”から初級職“運び屋”に転職したアクセル。一行は『神林都市』に辿り着く。しかし、街にそびえ立つ神樹に異常事態が発生。混迷を極めるなか、アクセルは超絶難度の依頼を次々とこなし、人々に希望を届け始める!元竜騎士の最強運び屋が更に飛躍してお届けする、トランスポーターファンタジー第三弾!
漁師として生き、若くして自分の息子を海難事故で失ったジイ。末期ガンを抱えているが、ある日ひ孫の優生が訪ねてくる。優生はいじめが原因で不登校。饒舌に元気に振る舞うジイと優生が交わした、二人だけの約束とは…(『海神』)。長年開業してきた診療所を閉院する決断をした老医師のジイ。そんな彼を長年支えてきた48歳の看護師。閉院間近のある日、老医師は失踪する。看護師が探したどり着いたのは瀬戸内の島。もう戻らない、というジイの覚悟とは。(『夕凪』)。たたき上げで会社社長にまでなった後、潔く退職し島で石の博物館を営むジイ。大晦日、現実逃避でやって来た孫に、自分の半生を語り始める。それは、誰にも語ったことのない自身の青春時代、親友、そして、唯一の後悔だった…(『波光』)。
大阪商人の“市井文化と歴史”を描いた秀作 熟年主人公の「私」は大阪府出身ながら生家は郊外にあり、家庭を持ってからは東京暮らしとあって、大阪の街について、実はよく知らない。そこで「私」は妻の従弟にあたる「悦郎さん」に会い、昔日の大阪を語って貰おうと会いに出かける。 明治・大正・昭和の3代にわたる大阪商人の日常を丹念に聞き取ることで、“水の都”の移り変わりが匂い立つように浮かび上がってくる。淡いファンタジーの如く、さまざまな市井の人々の営みが生き生きと描かれた“第三の新人”庄野潤三の秀作だ。
昭和ホームドラマの金字塔、その原作小説 1977年夏にTBS系列で放送され、「辛口ホームドラマ」として放送史に燦然と輝く名作。その原作小説は1976〜77年にかけて東京新聞ほかで連載された。 高度成長期の大企業に勤めるモーレツサラリーマンの夫・田島謙作。傍目には恵まれた貞淑な妻・則子。才気煥発な女子大生の娘・律子と気弱な高校三年生の息子・繁。一見すると、郊外の戸建て住宅に暮らす幸福そうな一家が、ある1本の電話から破綻に向かって走り出す。主婦の浮気、レイプなど当時は斬新なテーマを意欲的に描いた、脚本家・山田太一の代表作。
人生、何が起こるかわからない(本当に) 下北沢の小さな書店・フィクショネスには、一癖も二癖もある面々が集っていた。癖の強い店主、筋金入りの「ロリータ」愛読者、大麻合法を真面目に主張する謎の男、大手企業で管理職に就く根暗な美形男性、そして、決して本を買わずに店で油を売り続ける、どこか憎めない女子・久美ちゃん。 そんな彼女に新婚間もなく不幸が訪れる。それから十数年。ある日、久美ちゃんがお店にふらりとあらわれた。同じく懐かしい顔の男を伴ってーー。
さつきは、二号目の瓦版(読売)に近所での窃盗事件を取り上げた。犯人が「あやかし」だという読売に対抗して真犯人が分かるように書いたため、逆恨みした犯人によって兄の喜重郎が刺されてしまう。次の号に盗賊団「蛇の目」のことを書こうかと考え始めるさつき。しかし、同業である日吉堂の伍助と栗橋靱負からは「蛇の目のことを書くな」と言われてしまう。その頃、さつきの親友およねは“黒鳶式部”という筆名で黄表紙作家としてデビューし、これまでの熱い胸の内を喜重郎に伝えるのだが…。一方、さつきは伝蔵への恋心を伝えられずにいた。シリーズ第2弾!
国民的詩人・北原白秋が没して四年後の一九四六年暮れ、大分県香々地の土蔵で一人の女性がひっそりと息を引き取った。歌人であり詩人であったその才女の名は江口章子。白秋の二番目の妻でもあった。詩集『邪宗門』をはじめ、数多くの詩歌を残し、膨大な数の童謡や校歌などの作詞も手掛ける一方で、姦通罪による逮捕など様々なスキャンダルにまみれた稀代の天才の陰には、俊子、章子、菊子という三人の妻の存在があった。丹念な取材を元に瀬戸内寂聴が一九八四年に発表した渾身の長編小説に「あと書」を収録。白秋の生涯を描いた二〇一九年公開映画『この道』の原点。
父が隠していた、嘘より哀しい死の真相とは なぜ父は幼い自分を捨てて失踪し、死んでしまったのかーー。母の四十九日を終えた岩崎俊也は、父の死の真相を求めて、両親が青春時代を過ごした北海道の運河町へと旅立つ。二十年前、父が溺死する直前まで飲んでいた酒場の店主によれば、同じ法科大学漕艇部員だった女性の密葬に参加するために滞在していたらしい。さらに、昭和44年に漕艇部で起きたある事件を機に、陽気だった父の人柄が激変したことを知る。 この街には、僕の知らない父がいた。 父が隠し続けた、ぬぐいきれない恥辱と罪悪感。 知られたくない、でも忘れられない過去がある。 果たして、父は事件に関係していたのか? 家族にさえ隠し続けていた苦悩と死の真相とは? 会心の野心作にして、まったく新しい「家族ミステリー」が誕生!! 解説は中江有里氏。 第一章 運河町ホテル 007 第二章 法科大学 034 第三章 運河町倶楽部 055 第四章 硝子町酒房 072 第五章 バイオリン弾き 099 第六章 郡府日日新聞 147 第七章 正教会前広場 164 第八章 幽霊船奇譚 185 第九章 製材所通り 211 第十章 舗道と靴音 243 第十一章 埋もれた街路図 281 解説 中江有里 311