出版社 : 小学館
女医の及川夏未は、東京の大学病院での研究者生活に挫折し、北関東の地元に戻って来た。過疎化が進み、外国人労働者の増加が目立つ地元では、町おこしの目玉にと、地元産の食肉を商品化しようとする動きが進んでいた。そんな中、謎のウイルス感染死が連続して起こる。独自に調査を始めた夏未を妨害する出来事が次々に起こり…。感染源は何か、そしてその裏側に何があるのか!
あらたに真吾に迫りくる未亡人の甘い誘惑 昭和二十六年春。大学二年生になった真吾はある朝電車内で、下宿先の未亡人ちえと一緒になる。すし詰め状態の車内で、偶然か故意か、ちえの手が真吾のからだの一部分に触れてきた。いつもの控えめで貞淑なちえからは考えられない行動に驚く真吾だが、前年の秋に彼女の娘・小学生の雪子にもそれを触らせたことがあり、なんとも刺激的な気持ちになるのであった。実験目的で始まった女子学生・明美との関係は続いていた。だが出発点から大きく逸脱し、今や明美は真吾に夢中になってしまっている模様。明美の友人の知子から、重荷になる前に何とかするよう忠告されるも、今度はその知子の誘惑に乗ってしまう。そんなある日、かつての下宿先の娘アキが訪ねてくる。交際している男の粗暴な振る舞いについて相談しにきたと言うが、強引で奔放な性格は変わっておらず、夜の神社で求めてくる。さらに、旅館で働く中年のキクや、下宿先の隣人・新妻の千賀からも好意を寄せられてーー。己の好色性を自任する真吾の周辺はまさに春、さながら百花繚乱の様相を呈していた。
夏休みの帰省を前に、下宿先の未亡人ちえに誘われて観劇に出かけた真吾。厳格な姑のもと貞淑な嫁に徹するちえの意図を測りかねるも、何かが起きるのではと淡い期待もしていた。帰省のために乗った列車では、隣席の人妻・佳子と同郷であることがわかり、話がはずむ。佳子は、浮気をした夫と一時距離を置くため里帰りするところであった。さまざまな女たちとの交情を繰り返し、真吾の性的探訪の旅はまだまだ続く。
思春期の頃、年齢の近い叔母に密かに寄せた熱い恋心。亡くして初めて知った父の意外な一面。トレードに出されたベテラン・プロ野球選手とリストラ進行中の会社に勤める中堅社員という、岐路に立たされた男二人の友情。輝かしい成績を残しながらも突如プロ球界を去った名投手の秘密ー野球をモチーフに、野球少年なら誰しもが通過するホロ苦い挫折、郷愁などをさわやかに描いた短編集(野球描写がない作品を一編収録)。じんわりと野球ファンの胸にしみる第113回直木賞受賞作。
兵士の日常を描いた芥川賞受賞の戦争文学 第2次大戦後、戦犯容疑でサイゴン刑務所に抑留された日本兵の鬱屈した日々をユーモア交えて描いた第63回芥川賞受賞作「プレオー8の夜明け」。 他に筆者処女作「墓地で」から、晩年の名品「セミの追憶」(第21回川端康成文学賞作品)まで、戦争の記憶をつむぐ短編16作を収録。 戦後すでに70年を超え、戦下の記憶は風化するにまかされる。30年にわたる筆者の貴重な営みを通じ、名もなき兵士たちは、何を考え死んでゆき、生き残った者たちは何を思うのかーー今改めてその意味を問いかける、珠玉の“戦争文学短編集”。
皮膚に鱗状の模様が現れ、身体から発火して焼死ー未知の疾病“竜鱗病”が突如広まり、猛威をふるいはじめた。学校保健師のハーパーは、妊娠と同時に感染が発覚。錯乱した夫に殺されそうになるが、消防士姿の謎の男“ファイアマン”に救われ、迫害された感染者たちが身を寄せ合う秘密のキャンプに導かれる。外の世界では自警組織が感染者狩りをしてまわるようになり、やがてハーパーの暮らすコミュニティの中にも不穏な空気が流れ…。ニューヨークタイムズベストセラー一位獲得、終末期のサバイバルを描く大スペクタクルエンタテインメント!
全人類を滅ぼさんとする未知の疾病“竜鱗病”に冒された妊娠中のハーパー。夫に殺されかけたところを消防士姿の男“ファイアマン”に救われ、迫害された感染者たちが身を寄せ合うキャンプに避難するが、新たなリーダーの登場でコミュニティ内にも疑心暗鬼が広がり、ハーパーは脱出を画策する。だが外の世界での感染者狩りは激化し…。本当の敵はどこに?生き残るのは誰か?人類絶滅の危機という極限の中で、愛する人を守るため瀕死の傷を負いながら闘う炎の使い手を描く、サバイバルエンタメの傑作、激アツな完結編!
吉備桃太郎は、岡山市にある古民家カフェ「桃源郷」の店主だ。持ち前の面倒見のよさと天然のトラブル引き寄せ体質のせいか、桃太郎のもとには今日もさまざまな事情を抱えた客が訪れる。ちなみに桃太郎のひそかなコンプレックスは、ベタすぎる自分の名前。同じく“名前で苦労した仲間”で今は海外で仕事に就く幼なじみの大和尊とは、遠距離で友情を温める日々だ。行き倒れていたのをうっかり餌づけした縁で、桃太郎になついてしまった犬養津与志もスタッフに加わり、「桃源郷」はなかなかに繁盛している。ところがある日、店に不審な人物が現れて…?
現代最高の物語作者の傑作二冊を合本にして初文庫化!第一部「抱擁」は二・二六事件の翌年、東京駒場の前田侯爵邸で起こる謎に満ちた事件を描くゴシック・ミステリ。第二部「この世でいちばん冴えたやりかた」には中国と日本を舞台にした奇譚の数々、七篇の名品が並ぶ。著者の代表作『遊動亭円木』の外伝三作をはじめ、表題作は天安門事件を背景にした奇想あふれる「黄河水源踏査行」の物語。
41年目の誘拐再捜査! 連続ドラマ化! 東名高速道路の裾野バス停付近で、高齢男性の遺体が発見された。事件を捜査する静岡県警裾野警察署の日下悟警部補は、被害者・須藤勲の長男・尾畑守が、昭和49年に誘拐死体遺棄事件に巻き込まれていたことを知る。誘拐事件は、時効直前の昭和63年に再捜査が行われていた。日下は、再捜査の陣頭指揮を取った当時の管理官・重藤成一郎元警視に捜査への協力を願い出る。 平成と昭和、時代を越えた刑事たちの熱い思いは「真犯人」に届くのか。二度敗北を喫した静岡県警の意地と矜持を賭けた三度目の捜査が始まる! 【編集担当からのおすすめ情報】 上川隆也主演で、待望の連続ドラマ化! WOWOW連続ドラマW「真犯人」、9月23日(日・祝)スタート。 毎週日曜夜10時放送(全5話)。
美濃北山三万石の主百目鬼一郎太の楽しみは月に一度の賭場通いだ。秘密の抜け穴を通り、城下外れの賭場に現れた一郎太が、あろうことか、命を狙われた。頭格は大垣半象、二天一流の遣い手で、国家老・黒岩監物の配下だ。突きの鬼一と異名をとる一郎太は二十人以上を斬り捨てて虎口を脱する。だが、襲撃者の中に城代家老・伊吹勘助の倅で、一郎太が打ち出した年貢半減令に賛同していた進兵衛がいた。俺の策は家臣を苦しめていたのか。忸怩たる思いの一郎太は藩主の座を降りることを即刻決意、実母桜香院が偏愛する弟・重二郎に後事を託して単身、江戸に向かう。
母桜香院が寵愛する弟重二郎に藩主代理を承諾させた百目鬼一郎太は、竹馬の友で忠義の士・神酒藍蔵とともに、江戸の青物市場・駒込土物店を差配する槐屋徳兵衛方に身を落ち着ける。暮らしの費えを稼ごうと本郷の賭場で遊んだ一郎太は、九歳のみぎり、北山藩江戸下屋敷長屋門の中間部屋で博打の手ほどきをしてくれた駿蔵と思いもかけず再会し、命を助けることに。そんな折、国元の様子を探るため、父の江戸家老・神酒五十八と面談した藍蔵は桜香院の江戸上府を知らされる。桜香院は国家老・黒岩監物に一郎太抹殺を命じた張本人だった。白熱のシリーズ第2弾。
家族経営の博多とんこつラーメン店「満月亭」。店の前で行き倒れていた耽美ファッションの怪しい女を、見るに見かねてラーメン店で雇うことに。ひたすら美しい世界を探求するその女は、店の中を完全に耽美の世界へと模様替え。ラーメンと耽美という異色なコラボレーションが博多で反響を呼び、地元テレビ局が取材に訪れる。それをきっかけに大ブーム到来。あれよあれよと人気店に成長するが…。老舗ラーメン店に舞い降りた少女は、満月亭を救う天使か、廃業に追い込む悪魔か?耽美女子と九州男児・蓮華による青春ラーメン小説!
累計一五〇万部突破、二〇一七年マンガ大賞受賞の大人気コミック「響ー小説家になる方法」の実写映画脚本をノベライズ。文学界に突如現れた一人の天才少女、鮎喰響。十五歳の彼女の小説は、圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。響は世間の常識と慣習に囚われず、自分の信じる生き方を絶対曲げない。響がとる行動は、過去の栄光にすがる有名作家、スクープの欲だけで動く記者、生きることに挫折した売れない小説家など、さまざまな人に計り知れない影響を与え、彼らの価値観をも変えていくのだったー。
ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負わされた達希(27歳)は発作的に自殺を図り、十五年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に、隠し財産で借金の肩代わりを提案。祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。旅先で出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の記憶。やがて到着した赤道の街には、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。今まで封印されていた「知られざる謀略事件」とは。隠された祖父の真実とは。終戦間近、実際に起こった事件をモチーフに描く、感涙必至の人間ドラマ。待望の文庫化です!
映画監督を夢見る木村勇太は、売れない劇団「チームKGB」の座長をしながら、大阪市K区寿町でバー「デ・ニーロ」を経営していた。ある日の閉店間際、「冬音」という見慣れぬ美女がやってくる。ストリッパーだという彼女から、前座でパフォーマンスをしてほしいと頼まれた勇太。翌日、場末のストリップ劇場「東洋ミュージック」を仲間の劇団員たちと訪れてみると、そこには驚愕の光景が!廃墟寸前といった外観、アンモニア臭が漂う廊下、ガラガラの客席、年齢不詳の踊り子…。一体、ここで何をやったらウケるねん?人気作家が描く“笑撃”の半自伝的青春小説。
英国パブリック・スクールの奨学生の風森心。貴族の子弟ばかりの学校で、お金も身寄りもないシンはいじめに遭っていたが、元来の強さと優しさで親友もできた。親友は没落貴族の息子ギル。ネガティブなのに前向きで商売上手な社交家だ。二人は紅茶予言師と茶葉選定師として、学校で有名な名コンビ。シンは紅茶を飲むと未来が見えるのだ。ある夜、寮の塔から下級生が飛び降りた!シンは紅茶で意外な真相を導くが…。事件の裏にあった思いやりに感動の涙が止まらない。全寮制の男子校を舞台に紅茶で謎を解く青春ミステリ!様々な種類の紅茶の話や英国貴族の暮らしぶりも楽しい物語。
仕事も恋もうまくいかず、打ちのめされた美琴が逃げ込んだのは、かつて祖母が住んでいた田舎の空き家。一人暮らしをはじめた美琴は、気分転換に近所の花咲神社を訪れ、そこで千早と呼ばれる青年と、人の言葉を話す猫に出会う。猫の不思議な力によって過去の自分の姿を見た美琴は、心の奥に押し込めていた後悔と向き合うことに…。心から誰かに再会したいと願えば、きっと叶えてくれる神様の猫がここにいる。生者と死者の再会が許されている花咲神社で、優しい神主見習いと毒舌猫とともに働くことになった美琴の、奇跡と涙と感動の物語!
宇宙から人体へ。次なる部隊は大地。佃製作所の新たな戦いの幕が上がる。倒産の危機や幾多の困難を、社長の佃航平や社員たちの、熱き思いと諦めない姿勢で切り抜けてきた大田区の町工場「佃製作所」。高い技術に支えられ経営は安定していたかに思えたが、主力であるロケットエンジン用バルブシステムの納入先である帝国重工の業績悪化、大口取引先からの非情な通告、そして、番頭・殿村の父が倒れ、一気に危機に直面する。ある日、父の代わりに栃木で農作業する殿村のもとを訪れた佃。その光景を眺めているうちに、佃はひとつの秘策を見出だす。それは、意外な部品の開発だった。ノウハウを求めて伝手を探すうち、佃はベンチャー企業にたどり着く。彼らは佃にとって敵か味方か。大きな挫折を味わってもなお、前に進もうとする者たちの不屈の闘志とプライドが胸を打つ!大人気シリーズ第三弾!!