出版社 : 小学館
大学で知り合い愛し合うようになった一組の若い男女。だが、期せずして自分たちの両親が、夫婦交換遊戯を長年にわたって続けてきたことに気づいてしまう。結婚を夢見る男女と、一方で両親たちが繰り広げる艶麗な恋愛譚を通じ、生涯“物語文学”を追求し続けた倉橋由美子が、古代神話、源氏物語等の系譜を織り込んだ意欲作。倉橋文学後期を代表する「桂子さんシリーズ」の第一弾である。
1964年の第51回芥川賞受賞作で、当時、一大センセーションを巻き起こした『されどわれらが日々-』。その続きともいえる本作では、その時代の新左翼運動にかかわった血気盛んな青年男女の機微を、ダンスパーティーの現金紛失事件とからめてミステリー仕立てで描いている。登場人物がそれぞれの視点で世界を見つめ、それが一つに収斂されることなく多様性に開かれたまま放置されている点は、『されどわれらが日々-』とは対称的な位置づけにある作品といえる。
角兵衛獅子の少年・杉作を囮に、鞍馬天狗を取り囲んだ新選組。隊長・近藤勇も新手をひきつれそこに駈けつける。大坂城代あての密書を奪った鞍馬天狗だったが、謀られて地下の水牢に閉じこめられる。恩人を助けようと城へ忍びこんだ杉作少年ももはや袋のねずみー。幕末の京を舞台に、入り乱れて闘う勤皇の志士と新選組。時代小説の名作「鞍馬天狗」から、評論家・鶴見俊輔が厳選した傑作シリーズの第一弾。
めぐみとかすみは新制中学一年のクラスメート。赤の他人ながら瓜二つ、誕生日も同じとあって親しくなっていく。鵠沼での夏休み、上級生・容子への憧れや嫉妬。微妙にすれ違っていく友情の行方は?日本人初のノーベル文学賞受賞作家・川端康成による幻の少女小説。昭和二十九年から月刊誌『女学生の友』に連載された貴重な秀作が蘇ります。玉井徳太郎による連載当時のイラストも多数収録。また川端が戦前に『セウガク一年生』に寄稿した短編「樅ノ木ノ話」も当時の誌面のまま収載しています。解説は娘婿の川端香男里氏と、生前の著者と親交のあった瀬戸内寂聴氏。
第一五七回直木賞を『月の満ち欠け』で受賞した著者が、デビュー直後、瑞々しい感性で描いた永遠の恋愛小説集。ネクタイから年上女性との恋愛を追憶する『二十歳』、男と女の脆い関係を過ぎゆく季節の中に再現した『夏の情婦』、高校生の結ばれぬ恋を甘く苦く描く『片恋』、夜の街を彷徨いながら人間関係を映していく『傘を探す』、放蕩のなかでめぐり遭った女性との顛末『恋人』、小説巧者と呼ばれる才能がすでに光り輝く五編を収録。
クリエイターになることを夢見る高校二年生の水篠颯太の目の前に、ある日突然、アニメ『精霊機想曲フォーゲルシュバリエ』のキャラクター、セレジア・ユピティリアと、軍服を着た謎の少女が現れる。その後も、次々に“現界”する物語の住人たち。彼らの争いは創造主、さらに日本政府を巻き込む危機に発展しー「軍服の姫君」とは一体、何者なのか。そして、創造主が愛した人々を守るため、颯太たちはこの世界が滅ぶのを阻止することができるのか!?『BLACK LAGOON』広江礼威と『Fate/Zero』あおきえいがタッグを組んだオリジナルTVアニメを完全ノベライズ。
ワケあって、田舎暮らし、はじまる。 苦戦した就活でどうにか潜り込んだ先はブラック企業。働き始めて一ヶ月で辞職した。しかし、再就職のアテもなければ蓄えもない。そんな矢先、疎遠にしていた父親の訃報が飛び込んできた。孤独死したのか。どんな生活を送っていたのか。仕事はしていたのか。友人はいたのか。父について何も知らないことに愕然としながらも、文哉は南房総にある父の終の棲家で、遺品整理を進めていく。はじめての海辺の町での暮らし、東京とは違った時間の流れを生きるうちに、文哉の価値観に変化が訪れる。そして文哉は、積極的に父の足跡をたどりはじめた。「あなたにとって、幸せとは何ですか?」と穏やかに問いかけてくる、著者新境地の感動作! 【編集担当からのおすすめ情報】 千葉県は南房総、館山を舞台にした小説です。 解説は、丸善津田沼店の沢田史郎さんという千葉つながりです。 もちろん、作家・編集者とも千葉出身です。
2006年12月1日、東京で3人の人物が殺され、未解決となっている「12月1日連続殺人事件」。大学生のメイは、この事件を追うテレビ番組の制作会社でアルバイトをすることになる。無関係にみえる3人の被害者の共通点が“祝言島”だった。東京オリンピック前夜の1964年、小笠原諸島にある「祝言島」の火山が噴火し、生き残った島民は青山のアパートに避難した。しかし後年、祝言島は“なかったこと”にされ、ネット上でも都市伝説に。一方で、祝言島を撮ったドキュメンタリー映画が存在し、ノーカット版には恐ろしい映像が含まれていた。
米軍偵察兵のニック・モートンは、中東空爆後、偶然にも古代エジプト王女・アマネットの墓を発見する。しかしそれは悪の化身となった王女を生き埋めにするための牢獄だった。5000年もの間封印されていたその棺を運び出したニックだったが、空輸中におぞましい事故が起きて墜落、同行する元恋人のジェニーだけが奇跡的に脱出に成功する。だが数日後、死んだはずのニックが突然目を覚ます。それはアマネットが仕掛けた恐るべき復讐劇の始まりだった。ニックは愛するジェニーを守るため、強大なパワーを宿すアマネットに命がけで立ち向かうが…。
冒険者が集う街・迷宮都市レイロア。司祭のノエルは、あまりにも遅い成長速度のせいで固定パーティを組めず、便利屋稼業を続けていた。しかし、徐々に彼のまわりには個性豊かな仲間が集まり始めてきてー。はぐれ司祭のノエルと愉快な仲間たちが送る、せちがらくもどこか楽しい冒険活劇、はじまり!はじまり!書き下ろし短編『レイニィブルー』収録!
誇り高い姉と、快活な妹ーいま、この二人の女性の前に横たわっているのは、一人の青年の棺だった。美しい姉妹に愛されていながら、彼はなぜこの世を去らねばならなかったのか?卒業論文を書くために「廃墟のような寂しさのある、ひっそりした田舎の町」にやってきた大学生の「僕」は、地所の夫婦、妻の妹の三角関係に巻き込まれる。古き日本の風情を残しながらも、どこか享楽的な田舎町での青年のひと夏の経験から、人の心をよぎる孤独と悔恨の影を清冽な筆致で描いた表題作「廃市」は、後に大林宣彦監督によって映画化された。ほかに「飛ぶ男」「樹」「風花」「退屈な少年」「沼」の全6編を併録。
海を愛する若者が生の歓びを求め、ブリガンティン型帆船“大いな眞晝”号に乗り込んで船出をする。「無一物主義」という哲学思想をもつベルナールを船長に、フランソワ、ターナー、ケイン、女性のファビアン、そして日本人の私など11人のクルーは、ヨーロッパから日本を経由して、一路、太平洋へと航海を続ける。やがて、南太平洋に入ると、荒れ狂う颶風圏に突入していく中、嵐のさなかに恐るべき事件が起きてしまう。帆船の船内は、さながら芝居の劇場のように複雑な人間関係が入り組んで、それは悲劇への序章にふさわしい舞台だった。辻作品らしい“詩とロマンの薫り”に満ち溢れた長編小説。
ポーランド北部オルシュティン市の工事現場で、白骨死体が見つかった。検察官テオドル・シャツキは、現場が病院に続く地下の防空壕だったことから、戦時中のドイツ人の遺体と考えていた。ところが検死の結果、遺体の男は十日前には生きていたことが判明、この短期間で白骨化することはあり得ないという。さらに調査を続けると、複数の人間の骨が入り交じっていた。やがて、この男は生きたまま大量の配水管洗浄剤で溶かされて死んだことがわかるが…。こんなミステリーがあったのかー「ポーランドのルメートル」が描く衝撃の傑作クライムノベルが日本初上陸!
新宿区市ヶ谷にある防衛省統合幕僚監部会議室のモニターに、一人の東洋人が映し出されたー通称ゴルゴ13。この伝説的スナイパーを脅迫し、日本政府との専属契約を迫るという計画が浮上していた。「わが国の自衛隊は憲法上、攻撃的なことは何も出来ません。それをやらせる、強引に」脅迫材料は、ゴルゴ出生の秘密。一つの仮説を立証するため、政府の調査員が各国へ飛んだ。血なまぐさい惨劇は、そこから始まった。直木賞作家・船戸与一が、作家デビュー前に脚本を担当した『ゴルゴ13』作品から選りすぐりの三話を自ら小説家。魂が震える読み切り第三弾!
先生、これから連続側転するから見ててくださいー。そういって、大学研究室で働く女性秘書は、高層ホテルの最上階のバーで、結構なスピードで部屋の隅から隅までくるくるとまわり始めた。そんな奇怪ながらも有能な彼女に惹かれた准教授はある日、求婚を申し出るのだが、彼女は研究室に珍奇な両生類の水槽を設置したまま、行方知らずとなってしまう(「あほろーとる」)。ほかにも、馬、河童、蟋蟀、猫など様々な生き物をモチーフに、日常と非日常の境界線をのびやかな筆致で揺るがす、読めば読むほどクセになる11の物語たち。
芦原瑞穂(18歳)は地方競馬界にデビューした女性騎手。配属先は「藻屑の漂流先」と揶揄される寂れた弱小厩舎。調教師、厩務員たちは皆それぞれが心に傷を抱え、人生をあきらめたポンコツ集団だった。当初は廃業寸前だった厩舎も、瑞穂の真摯な努力と純粋な心、情熱から徐々に皆の心は一つとなり、ついには大きな夢、中央競馬の桜花賞を目指すまでになる。が、行く手には様々な試練が。温かな絆でつながった彼らの運命は…?競馬に興味がない人も、競馬好きも大満足の爽やかな感動を呼ぶ人間ドラマの大傑作、待望の文庫化。巻末に騎手・藤田菜七子氏の特別寄稿つき。