出版社 : 小学館
米国国防総省直轄の情報機関に所属する葉山隆は、北朝鮮工作員・チョンの足取りを追ううち、チョンが日本で杉川春子と家庭を持ち、息子をもうけていたと知る。同じ頃、チョンが祖国に残した妻・光朱と娘・春花は、国境を流れる豆満江を越えようとしていた。だが、渡渉の途中に北朝鮮の警備隊に銃撃され、光朱は命を落とす。チョンが二つの家族に抱く愛情はどちらも本物だと確信した葉山は、彼を亡命させる決意を固める。祖国とは何か?家族とは何か?工作員の行為にひそむ、凄絶な悲しみが読む者の胸を打つ。ラストは感涙必至。第三回大藪春彦賞受賞作!
防空壕跡から見つかった白骨死体の事件を捜査する検察官シャツキ。身元は判明するものの、犯人に繋がる手がかりは一向に得られない。プライベートでは高校生の娘との衝突をくり返し、苛立ちが募るさなか、検察局を訪れた女性から「夫が怖い」と相談を受けるが、虐待の証拠はなく、すげなく追い返してしまった。部下ファルクにその対応を責められ、不安から彼女の家を訪れてみると、そこには瀕死の女が横たわっていた。そして事件の真相に手が届こうとした時、シャツキ自身の身に思いもよらぬ事件がー。衝撃過ぎるポーラスドミステリー、完結編。
ときは一九七五年。とある町の駐在所の栗林巡査部長は署内でも評判のよく出来た人で、地元住民からの信望も厚かった。そんなわけで、異例の六年間も同じ派出所に勤務していた。その栗林さんの後任に選ばれたのが、ご存じ駐在さん。「駐在さんの700日戦争 赴任編」では、ママチャリたちいたずら高校生たちとの出会いからいたずら合戦を繰り広げる闘争の歴史、彼らとの世代を超えた交流を、駐在さんの視点から振り返る。千葉くんとママチャリのおバカな小学生時代のエピソードが大爆笑間違いなしの「外伝 千葉くんと僕と」も収録。
藻屑の漂流先と揶揄されていた廃業寸前の厩舎。芦原瑞穂という女性騎手の真摯な姿勢と情熱でメンバーが一つになり、大きな夢であるG1桜花賞に挑戦、惨敗した翌年。場違いな超良血馬がやってくる。馬主はメディアでも有名な風水師。一体、なぜ…?そして、厩舎のメンバーに様々な事件が降りかかる。それらを乗り越えた彼らが再び一丸となって臨む、大きな大きな夢の行方は…?
小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。そのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、しゃべりだし、以来、無二の親友になっていたのだ(もちろん、世間には内緒にして)。そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗に大きな転機が訪れる。コアラのぬいぐるみと出版社校正男子の切なさMAXの友情物語。
学徒出陣を目前にした文学青年たちを描く自伝的作品。太平洋戦争の最中、昭和18年、九州大学に通う文学青年たちには深い交わりがあった。文学的揺籃期における恩師・伊東静雄(詩人)から受けた薫陶、そして、学生仲間(島尾敏雄がモデルの小高、森道男がモデルの室、林富士馬がモデルの木谷)との交流を描いている。遼史を読み、東洋史の学問にも励むが、それ以上に仲間たちと文学を論じ、酒を酌み交わしながら、それぞれの仄暗い“前途”を案じている。主人公の文学的形成の様を、約1年に渡り、日記スタイルで描いた“第三の新人”の代表的作家・庄野潤三の青春群像作。
アマゾンの密林で、世界的な大富豪が人間狩りに興じる。おのれの道楽で、残虐な殺人ゲームをくり返すふたりが企てた新たなプランーそれは、プロ中のプロ同士の殺し合いを愉しむ、というものだった。莫大な予算をかけた“史上最大のショウ”の舞台に、姿を現したゴルゴ13。立ちはだかるのは、ゴルゴも認めた数少ない好敵手・スパルタカス。本物のプロとの壮絶な死闘の末、ゴルゴは、命をもてあそぶ鬼畜たちの追跡を始める。直木賞作家・船戸与一が、作家デビュー前に脚本を手がけた「ゴルゴ13」作品から選り抜きの三話を自ら小説化。熱い血が滾る読み切り第二弾。
時は幕末、陸奥国八戸藩と南部藩に挟まれた小さな国・外館藩西根通大平村。大平村には、六十歳になると村での役割を全て解かれ、御山参りをする習わしがあった。それは食い扶持を減らすための姥捨ての旅とも囁かれていた…。そんな大平村は、どんな厳しい飢饉の年も、きちんと年貢米を納めている。代官所は、そこに目を付け、食い扶持を減らすだけでなく、もしや「隠田」を開墾しているのではないかと疑い始める。隠田を持つことは死罪にあたる。真実を悟られまいとする農民と、それを暴こうとする代官の知恵比べが始まる。痛快!幕末老人エンターテインメント。
六十歳になった太平村の人々は姥捨山の奥に老人達の桃源郷でんでら国を作っていた。大平村の真実を暴こうとする代官たちが、その存在に気づき始める。でんでら国に迫り来る代官たちを、あの手この手で翻弄し、行く手を阻む老人たち。老人たちは、でんでら国を守り通せるのか。それとも代官に知られてしまうのか…。老人たちと武士たちの手に汗握る攻防戦が始まる。農民たちの、知恵と経験と勇気が、あっと驚く結末をもたらす。現代の高齢化社会の問題を解くヒントがたくさんつまった物語。
ときは高度経済成長期の真っ只中。長崎で“天才”と期待されたヴァイオリン少年・雅志は、大志を抱き、中学進学を機に単身上京。貧乏に耐えながら、ひたすら稽古に励んでいた。しかし、音楽系の高校受験に失敗したことで、目標に疑問を持ち、悪友たちと過ごす時間が増えていく。『お前を信頼しています』。そんな母の手紙に胸を痛めながら…。切なく哀しいけど、可笑しく、そして絶対に諦めない青春物語。
目標に疑問を持ちつつ高校に進学した雅志は、家計のことも案じ、とうとう父にこう切り出す。「ヴァイオリン、やめてもいいかな?」。夢を見失った青年は、気まぐれにアルバイトを始めるが、大切なヴァイオリンを質入れするほど生活は困窮。病気も患い、思い悩んだ末、逃げるように故郷へと帰った雅志。そこで彼を待ち受けていたのは…。
初恋の人に告白して撃沈してから、小沢くん、山田先輩、あきらくん、滝沢先輩、永谷くん…せとかは、失恋街道を驀進中。ところが十七歳のせとかに突然モテ期が到来!美丘千秋、芹川高嶺に告白されリア充経験ができる!と思っていたのに、なぜかうまくいかなくて。なんと、お兄・はるかが、私の恋路を邪魔していたのだ!いくらお兄でも許せない。と思っていたら、そこには衝撃の事実があった…。累計180万部突破のコミックス「兄に愛されすぎて困ってます」が映画化。映画の胸キュンシーンをたっぷりつめたノベライズ。せとかに彼氏はできるのか?驚きの結末!
砂漠の夜の闇を駆ける一組の男女。サム・ドライデンは軍隊時代の旧友クレアから呼びだされ、事情も判らぬままに四人の少女を救出した。その後、クレアは黒い奇妙な箱を彼に見せ、そこから流れるニュースを聞かせて言った。「このマシーンは十時間二十四分後に放送されるラジオの電波を拾うのよ」。サムが助けた少女たちは、本来は焼死しているはずだったのだ。そしてFBIが二人の足取りを追うなか、謎の組織もまた彼らに迫っていた…。数時間先の未来を知る者たちの息詰まる攻防、下りオンリーのジェットコースター・スリラー!
11歳の誕生日。ママが「大人を卒業します!」と突然宣言。大人になることを余儀なくされたふたりに突如シビアな現実が降りかかる。お料理って大変!お洋服何を着ればいい?私たちの個性って?パパは誰?おちゃめな双子・ハッチとマーロウの大人への冒険が始まる!
冴えない日々を送り、与えられた天職は最下位職である『低級魔道士』でしかなかった少年・ルーク。しかし、ある事件をきっかけに彼を取り巻く環境は大きく変化しはじめる。それは、「包囲殱滅陣」という軍事史上に燦然と輝く陣形を編み出し、戦史にその名を刻まれることになる彼のほんの始まりに過ぎなかった。これは“最下位職”から“天才軍師”へと成り上がっていく少年の物語である。
純文学作家である福永武彦が加田伶太郎のペンネームで発表した「完全犯罪」「失踪事件」「赤い靴」などの探偵小説10編に、随筆「素人探偵誕生記」を併せた異色の一巻。大学助教授で自ら“安楽椅子探偵”を自認する伊丹英典は、助手・久木進を伴い、得意の分析力、想像力、論理力を駆使して、迷宮入りかと思われた難事件を次々と解決していく。また、船田学名義で書かれた未完のSF作品「地球を遠く離れて」も併録した、福永武彦の意外な一面が垣間見える異色作品集。
「奴とは、ばくち打ちであり、ばくち打ちの奥に至らんと五十年もすごしてきたような、顔をしている人物である」-色川武大は“阿佐田哲也”を冒頭でこう評している。阿佐田哲也なるばくち打ちは『麻雀放浪記』を書き、麻雀新撰組などを結成して世間を煙に巻いた。色川武大名義では『離婚』で直木賞を受賞した作家が、虚にして実、実にして虚の“阿佐田哲也”の素顔に迫った異色作。
冷戦時代、米ソは極秘の生物化学兵器を共同開発していた。「死霊の泉」なる猛毒物質はいまも大量に貯蔵されている。製造に関わった両国の元工作員が、この事実の隠蔽を画策。証拠もろともその存在を消し去るため、最高のプロフェッショナルを送りこむ。依頼を受けたゴルゴ13は、パラオ共和国コロール島に姿を見せる。だがそこには、ゴルゴとほぼ同じ足取りで秘密工場への侵入をもくろむもう一人の“プロ”がいたー。直木賞作家・船戸与一が、作家デビュー前、脚本に携わった『ゴルゴ13』作品群から、珠玉の三作を自ら小説に書き上げた。鼓動が早まる第一弾。