出版社 : 小学館
不遇な少女の洗礼までを語る三浦文学の名作 北海道・旭川。浜野清美は母子家庭に育った。いじめにあい、大人への不信も募るなか、友達の事故死を目撃したのを黙っていたことや、母の愛人から弄ばれたことなどから清美は暗く無口な子となってゆく。だが、出生の秘密とともに知った信仰心篤い叔母の自分に対する深い愛情や、一人の少年との出会いにより、いつしか心の中に明るい光がともってゆく。……不遇な少女が、信仰に目覚め、23歳で洗礼を受けるまでの心の軌跡を綴る。
運命が、私と美弥を会わせてくれたんだと思う。そして、あなたとも…。『29歳のクリスマス』で女たちの心情を絶妙に描いた脚本家・鎌田敏夫が、3人の男と女の、果てしなく揺れつづける心を綴った。
1999年7月のある夜ー。女子高校生の静が、ふと流れ星に祈ったとき、突然ボンデージ姿の男が空から降ってきたーそれも女王様スタイルの…。だが、フレイドと名乗るその男こそ、ノストラダムスの予言書に出てくる、世界を破滅へと導く『恐怖の大王』だったのだ!史上初!?すちゃらかギャグが炸裂する、スラプスティック・ホラーノベル。
時は昭和25年、朝鮮動乱でわきたつみなと神戸。戦後の混乱期を抜けだしようやく飛躍成長をとげようとする時代のうねりの中で、主人公・元海軍中尉不動征四郎の行く手にたちはだかった謀略の渦。霧雨けむるみなと神戸に男が帰って来た。
人質として、カフタル帝国の中心、リュシプール城に囚われていたルテニア王国第二王子・ラシカのもとに、突然の悲報が告げられた。家臣の謀反によって、父王ゲオルゲ、長兄ブラントが殺されたというのだ。忠実な僕にして唯一の友・イーレンタールとともに、故国をめざすラシカを待ちうける運命は?そして、十五年ぶりに目覚めの時をむかえる邪悪な地霊とラシカの関係とは。
志と情熱に燃える主人公、マーティン・アロースミスを取り巻いている環境はけっして恵まれたものではなかった。拝金主義と俗物根性にまみれた医療界。そして、マーティン自身も恋愛や結婚などで危ない綱渡りをくりかえしたり、融通のきかない性格のために周りからうとんじられたり、四苦八苦の生活がつづく。のちにペストの療法に情熱を燃やすが、それでも彼の胸は空しい。1930年にノーベル文学賞を受賞したルイスが医学界に足を踏み入れた青年の理想と現実のギャップに、伝染病の流行や恋愛を多彩にからませて描いた風刺小説。ピュリッツァー賞を辞退した幻の傑作。
エルダーは仲間とともに次の戦地へと向かう途中、大陸全土にその名を馳せる天才軍師ミュンヒ・ラウダーと出会った。しかし、傭兵の集団にすぎないエルダーたちに、彼女はなぜ加わろうとするのか?その目的はいったい何か。
青年士官ハリーはなぜ電報を燃やしたのか。不審に思った上官は電報の送り主と内容を探り出す。そしてハリーの元に三枚の白い羽根が送りつけられる。つづいて婚約者からも同じ白い羽根が届く。軍務は解かれ、婚約も破棄-打ちひしがれるハリーは、名誉回復のために戦乱で騒然とするエジプトへ命を賭けて赴く-送りつけられたあの羽根はどうなるのか。イギリスで多くの歴史小説、冒険小説、探偵小説を著したメイスンの、この傑作中の傑作はいまも心躍る古典として生きている。
孤児院を設立し脚光を浴びる男の愛人問題。工場をつくった男の金銭欲。戦闘で活躍した男の名誉欲。グルメ団体会員の美食ぶり。嫉妬のすえに決闘を申し込む男。彼らの行状を見た隠者が魔王に命じた。「魔王よ、人間から七つの罪を消滅させよ」こうして七罪は消えた。工場は閉鎖され、美貌の女はみすぼらしく、金持ちは貧乏に、世界は一変する。すると人々は叫び始めた。「魔王よ魔王、罪を返してくれ」人々はわかったのだ。傲慢でなければ国王はなく、強欲でなければ文化は発達せず、色欲がなければ女は男の気を引いて子を産むことも忘れ-人間にとって、社会にとってこの罪こそがかけがえのない大事な柱であることが。
物語の舞台は、中国は宋の時代。妖術を操る老孤精の聖姑姑とその息子、娘の3匹の狐が則天武后の生まれ変わりという軍人とともに反乱を起こす。そこに妖術や法術を駆使する仏家や道士たち妖人が跳梁跋扈するというのが全体の流れである。この物語のキーワードは秘書『如意冊』である。これは道家百八様の変化の法書で、この秘書をめぐる戦いが縦糸となって展開される。さて、くだんの主人公である3匹の狐たちは、ある山麓に棲んでいた。息子狐は山里の人間界で猟師の妻に横恋慕し、左足を射られてしまう。母狐は人間に化けて評判の名医に薬はもらいに行くが、そこで妖狐であることを見破られ道教を修めることを諭される。まずはこんなはじまりから、波瀾万丈、驚天動地のストーリーは展開する-。
「マンクンク、おまえは破壊者だ!」「「力」と、「力」に敬意を捧げるタムタムをひっくり返す者」と運命づけられ、大河に、氏族の王に、植民地支配の異人に、そして、自分の社会そのものに挑んでいった永遠の革命児マンダラ・マンクンク。コンゴのとあるバナナ畑で孤独な生を受け、長じては偉大な“ンガンガ”(呪術師)となった男が、半世紀に及ぶ試練の旅を乗り越えて、最後に見たものは…。「知」と「力」を巡る現代アフリカの創世神話。人間の根源に迫るアフリカ大河小説。1988年のブラックアフリカ文学大賞を受賞。
「あなたはもうりっぱに一人前の男。だからあちこち女に手を出しちゃいけんと。キクちゃんだけを可愛がって」と円太郎を諭す隣家の人妻アレ。しかし主人公・里見円太郎も14歳。旺盛な性への探求心はあふれんばかりである。幼馴染みのキクとの“相互愛撫”から村で一、二を争う器量よしの間垣ナミに抱かれる快美感と、とどまるところを知らず。村の男たちの交情話にもますます性への想いをつのらせる円太郎であった。傑作大河性愛小説。