出版社 : 幻戯書房
東京から山間へとやって来た中学生男子の成長をノビノビと描く中篇「青の季節」ほか、物語作者としての腕が存分に発揮された恋愛短篇を集成。砂糖菓子のように一人ひっそりと愉しみたい、切ない歓びに満ちた作品集(解説・佐々木敦) 1 青の季節[1956] 2 犬と娘さん[1953] 鸚鵡[1956] 白い少女[1957] 秋のなかにいる娘[1957] 早春[1958] お下げ髪の詩人[1960] 風の便り[1960] 収録作品解題
40年前に消えた母を探し韓国へ来た男の物語は、それを書きつつある作者自身の記憶と次第に混じり合う…出生の秘密をめぐるミステリと私小説的メタフィクションを融合させた、著者晩年の問題作にして最大の実験長篇、遂に書籍化。
婚活体験を描く表題作。谷崎潤一郎と夏目漱石の知られざる関係、図書館員と作家の淡い交流、歴史に埋もれた詩人の肖像…“いまの文学”に飽き足らない、あなたに贈る“ほんとうの文学”がここに!
滅亡した百済から父医師憶仁とともに逃れてきた4歳の憶良は、倭国で自ら学び、42歳で遅咲きの無位の遣唐使少録に抜擢された。帰国後はのちに従五位下まで進み国司になる。伯耆守のあと、67歳で筑前守として筑紫へ下向すると運命的な出会いが待っていた。3年前に観世音寺別当として下っていた沙弥満誓と、翌年下ってきた太宰帥・大伴旅人である。朝廷の骨肉の争い、律令国家への激しい動き、藤原氏の台頭の中で、筑紫では旅人、憶良、満誓の友情がはぐくまれ、後まで残る歌の花が咲いた。世に外れた万葉二大歌人のめぐり逢い、歌がその哀しみを慰めた。大宰府を舞台に、氏家柄を超えた交わりを追う、古代歴史小説。
絶縁状態にあった末弟の急死により、美しい病身の若妻が遺されたことを知った家族。肉親に代わって弟の夢を叶えた女ではあったが、その言動はあまりに不可解だったー書き下ろしリアル・ミステリ。
故郷喪失の悲しみから、上方のソウルフード、うどん、ホルモン、お好き焼、土手焼、イカ焼を拵え、これを食すことで見えた宇宙。革命ではない。維新でもない。もちろん自由や平等でもない。愛などという眠たいものでもないー大坂の魂を取り戻す、ビルドゥングスロマン。
焼け跡を生きる、博物学的精神とエロス。中井英夫・吉行淳之介の盟友であり、稲垣足穂・三島由紀夫・澁澤龍彦らの激賞を受けた幻の天才が、『椿實全作品』以降編んだ未収録の秀作群に、未発表の遺稿他を増補した中短篇作品集。没15年記念出版、初版1000部限定ナンバー入。
師の跡を慕わず、師の求めたるところを求めよー松尾芭蕉第一の門弟にして、洒脱で博覧強記の俳諧師・晋其角…江戸の世に言葉で身を立てた男の生涯を追い、その句を味わう評伝小説。
敵を求め炎上する“民意”の行き着く先は?蘇った“騎士”と、その行方を追う“探偵”。混沌と化す現代の群衆を、ドン・キホーテはどこへ導くのか?新世代SFの鬼才が人類と物語の未来を問う、21世紀型スペキュレイティヴ・フィクション。
モツ焼屋、銭湯、カメラマン、ディベロッパー…ひとりの男が仕事を遍歴し、家族のあり方を見つめるなかで沁み出す、人生の哀歓。高度成長期からバブルを経て今日まで、仕事と家庭の間で揺れ動く人びとを円熟の筆致で描いた連作小説。
ほのぼのとした筆致の中に浮かび上がる人生の哀歓。週刊誌、新聞、大衆向け娯楽雑誌などに発表された短篇を新発掘。ユーモアとペーソスに満ちた未刊行小説集。昭和を代表する私小説家の、意外な一面も垣間見える短篇を多数収録。