出版社 : 廣済堂出版
“博多どんたく”の群衆の中と、翌日の上り特急「あさかぜ」の中で男が次々と刺殺された。「まつお」というダイイングメッセージから同じ車輌に乗っていた共通友人松尾浩史への容疑が深まっていった…。二つの刺殺事件の接点を求めて捜査は二転、三転し、やがて犯人を追いつめるが、捜査人の前に二重密室の完璧なトリックが重くのしかかってくる…。
秀吉が唐入りの大号令を発した年に明国で「西遊記」の初刻本が出版された。「これは余の前世を記した書物じゃ」と秀吉から家康に渡った初刻本は、今も日光山輪王寺に秘蔵されている。東海神州の一角、尾張の吉法師(信長)に転生した三蔵法師を慕った孫悟空は、童のひよしに憑り移り、ここに「悟空太閤記」の雄渾な物語が始まった。
幕府小姓組番頭を失脚し、絵師となった朝霞桔梗之介は、絵修業のため奥の細道を旅していた。だが道程は、景観を画布におさめるどころではなく、群れるように現れる悪党を斬り、色香漂う女とたわむれる有様であった。一寸先も見えぬ旅空の下、桔梗之介が触れた人間の業と存在無用の武士。抜き討つ刀が悪を両断し、また新たな辻へと立ち入る…。
我が親父・冴木涼介は、東京・六本木に事務所を構える私立探偵。だが実際はずぼらで頼りがいゼロ、そのうえ女好きという、まったくの不良中年、アパートの大家さん・圭子ママの特別優遇で健気に生きてる僕・隆が、適度な不良高校生なのは仕方がない。そんな親父が密かに狙っている、僕の家庭教師・麻里さんが奇妙な事件の依頼主を連れてきた…。痛快アクションミステリー。
東京デパートに就職した西沢雄太郎。採用理由は、最も女にもてそうにない醜男で女の職場に害を及ぼさない、というものだった。だが、会社の思惑とは裏腹に女運は彼に味方した。社員の姉妹や母娘、美人秘書たちの数々の名器、珍器をものにしながら、西沢はデパート内に異彩を放ち、着実に出世の階段を昇りはじめる…。官能サクセス・ストーリー
八ヶ岳周辺のゴルフ場にゴルフバッグに詰められた女性のバラバラ死体が分散して送られてきた。長野県諏訪署の道原伝吉刑事は、すべてのバッグの送り主である東京の開業医、赤城貫三郎から捜査を開始する、が、事件は怨恨の線が強く迷宮入りかにみえた。だが、道原の執念は数年前に起きた赤城医師の医療ミスに辿りついて…。長篇山岳ミステリー。
秘密クラブで獣姦ショーを楽しみ、淫らな夜を過ごしたTVディレクターの伊沢亮。だが、クラブ内で同行した友人が射殺され、容疑は伊沢に…。真犯人を追う伊沢だったが、倒錯した性の誘惑と不可解な殺人事件が、解決を闇にとざしたー。やがて、政財界を操るフィクサーを嗅ぎ当て、彼の別荘に乗り込むが…。そして、そこで見る妖しい世界とは。
石山慎太郎の恋人である竹下好美は、寝床をともにした男に対して、予知が働く奇妙な能力を持った女だった。将来を誓い合った二人は、夜毎に慎太郎のマンションで愛の交歓を行なっていたが、ある時、絶頂を迎えた好美は、慎太郎が会社で主任に昇進することを予見した。出世内定を無心に喜ぶ慎太郎の傍らで、好美はなぜか悲しげに涙を流す。その理由は-。また、二重人格が高じてタイプの違う2人の男と付き合いだした女や、毎夜、夢で見る女と現実に出会って戸惑う男など、フツーと少しズレた癖を持ち、体験をする者たちの姿を軽快に描く短篇集。
連城重吾隊長が鬼道組を離脱し、残された上条と麗子は懸命に動揺を抑え、宿敵ダブル・クロスの急所を探る。指揮官・水上の邪悪な野望を挫くべく、ザルツブルグの敵本拠地に急襲をかける上条と麗子。だが、彼らの見たものは、復讐の鬼神と化し殺戮の限りをつくす連城の弧高なまでに猛々しく血に飢えた姿であった。新・野獣舞踏会シリーズ完結篇。
音楽教師・杉山博之が変死した。杉山が勤務する音楽教室の主宰者・高川伸男は、事件の真相追及を探偵・浅見光彦に依頼する。浅見は、杉山の祖母サキが恐山のイタコであり、「博之は北から来る何かによって殺される」と予言していたことを知る。だが、高川もまた不審な死を遂げてしまう。杉山と高川のかつての教え子・藤波紹子の協力を得て、サキの不可思議な言葉を追い、浅見は北へと旅立つが…。本格長篇推理。
紀州の山間にある城の内村の長老格・一ノ瀬大蔵が惨殺された。息子の大地は、ある致命的な宿命を守るため、父・大蔵の首を切り落として持ち帰る。目撃者の証言から犯人は黒衣の山伏姿の集団であることが判明するが、村の長老格の人物が相次いで殺害されてしまう。犯人を追い始めた大地は、事件が1300年に亙る怨念に起因していることを知り、さらに同族組織の内部にも裏切り者が存在することを漠然と掴み取るー。
吉野での大峰入峰を終えたばかりの修行僧、土岐竜海。偶然に新仏のある家を訪れると、そこには妖艶な未亡人、静香の誘惑が…。熟女の魔力に負けた竜海は、その家にとどまり、やがて娘の美季と結婚するが、静香の魅力を忘れきれない竜海は義母との情事を重ねる。これを目撃した美季は逆上して母親を殺し、みずからの命も断った…。戒めを破った僧、竜海の凌辱・邪淫の“女食巡礼”が始まる。長篇官能ミステリー。
横浜の幼稚園を狙い、誘拐を匂わせる恐喝事件が発生した。神奈川県警特捜班が犯人の指定した取引現場に散開するが、そこには身許不明の男の絞殺死体が遺棄されていた。殺されたのは恐喝犯なのか?-進展のないまま、事件は闇に包まれてしまう。そのころ九州・福岡で、私立学園を持つ教育界のドン・武本の愛孫が誘拐されていた。高速道路網を駆使して巧妙に身代金を得ようとする姿なき脅迫者と、一瞬の犯人との接触に全てを賭ける刑事たちの対決の果てに、横浜-博多を結んで錯綜する恐るべき犯罪の全貌が明らかになる。書下ろし長篇サスペンス。
謀略組織「ダブル・クロス」との戦闘で鏑木隊員を失った鬼道組。第三世界の金融市場に敵の資金ルートを見出した野獣たちは、東西情報機関に接触、反撃へと転ずる。だが、隊長連城重吾が、突如盟友たちに別れを告げた。絶望に彩られた己の過去を胸にめ秘め、亡獣は一人復讐の戦場へ向かう。
脱サラ探偵・柏木大介の許に調査依頼が舞い込んだ。依頼主は女子高生で、内容は男子受験生の挙動であった。さらに大学教授から入試に絡む、予備校の調査依頼が来る。しかし、女子高生は高校のプールで水死体となり、教授も暴漢に襲われたのち、病院のベッドで殺害されてしまう。一方、大介も警察に追われ、殺し屋に命を狙われ始める。そんな折、同居人の知佐子がサンフランシスコへ飛び事件を解く鍵を探り出すー。
第八代将軍吉宗の曾孫・赤利豊前守高昌(灯雨近)は、江戸にはびこる悪を裁くため市中を徘徊していた。いくたびか女体に溺れ、策略を期す妖女に惑わされる雨近だが、同時に武士としての誇りを持つ男たちへの助力も発揮していた。また不審な動静を見せる長崎奉行へ密偵を疾らせるなど、公儀でも策動する雨近。己れを取り巻く、業に満ちた者たちを見た時、次第に腐り始めている国の政治を敏感に感じ取った雨近だが…。
宮崎発東京行きの寝台特急「富士」の個室から女性の生首が発見された。そして、死体の一部が静岡の安倍川と東京の隅田川に浮かんだ。丸の内署の下川刑事は被害者と同じ車輌に乗っていたと思われる意外な人物を捜し出すが、死亡推定時列車は岡山ー名古屋間をノンストップ走行中で、下車することは不可能であった。消えた犯人の影を追って下川刑事は一人九州へと旅立つが…。時間のトリックを衝く会心の鉄道ミステリー。
慶安3年、旗本の志良堂兵庫は江戸・湯島で白装束と黒装束が入り乱れての奇怪な斬り合いを見た。その夜、妻の鹿手が攫われ、兵庫は手掛かりを求めて軍学者・由井正雪に出会う。由井から、泰平の世の裏で続く神徒と仏徒の暗闘を示唆された兵庫は、己の身がその過中に置かれたことを悟り、禄を捨て野に下った。深川に巣食う、敵とも味方とも知れぬ浪人数百に紛れ、兵庫は一刀流の剛剣一本を揮って波乱に満ちた修羅道をゆく。
CIA最高機密のオメガ・ファイルが漏洩し、持ち出し容疑者を追う精鋭が未知の部隊に撃破された。標的の捕捉依頼を受けた鬼道組はブリュッセルで謎の組織「ダブル・クロス」と対峙する。激闘のさなかNo.3の鏑木が姿を消し、野獣たちは史上最強の敵を前にかつてない苦境に追い込まれる。