出版社 : 廣済堂出版
景気低迷が続く中、米国銀行から巨額の融資を得る交渉を進めていた業界大手の富国自動車工業。社内では、海外進出に積極的な国際派の常務と、通産省との太いパイプを持つ民族派の専務が、次期社長の座を狙って激しく対立していた。一方、富国自工経営陣への発言力低下を恐れた国内の主力銀行は、同社の個人筆頭株主に接触、対抗策を巡らせるが…。
工場汚水から発生するガスでひとりの子供が中毒死し、母親も後追い自殺を遂げた。直後、工場長が殺され、愛する妻子を失った芭蕉研究家の大学講師三浦八郎が、犯行を告白する遺書を残して死亡した…。三浦の死で事件は終息するかに見えたが、驚くべきことに、彼には鉄壁のアリバイがあった。公害問題と芭蕉忍者説を作中に盛り込んだ著者の代表作。
旧式の双発プロペラ機ダグラスDC-3で運び屋をする退役自衛官・北一馬。カサブランカを根城にする彼に破格の仕事が持ち込まれたー。アフリカ大陸を極秘裡に縦断し、ある人物を内戦に燃えるジンバブエまで運ぶ北は、愛機を駆って大空へ舞い上がる。各国謀報機関と謎の組識の巨大ダイヤモンド争奪戦に巻き込まれた男の、誇り高く、胸熱き死闘。
老中・松平定信の非公式な隠密巡察役として、肥前長崎の地を踏んだ絵師・朝霞桔梗之介。不義密通の仕置きで拷問と女郎務めの日々を送っていた女・ムメを郭から連れ出した桔梗之介は、高名な女流陶物師・咲弥の屋敷に転がり込んだー。雲仙から肥後熊本へ、今生の地獄を見た女を伴い、桔梗之介の憂世の旅は、またしても剣難・女難の連続となる。
いわれなき人殺しの罪を背負わされた京極斑鳩之介は、岐蘇福島の道場の師範代にと請われ、妻の志津を連れて江戸を背にした。しかし鬼同心鬼頭一角らの執拗な追跡は続き、志津は捕えられ、女郎屋へ売りとばされたあげく、自ら命を絶ってしまう…。鬼頭一味の斬殺を心に誓う斑鳩之介の活人剣が怒りの閃光を放つ。書下ろし長篇時代小説。
工員浅辺宏一は病的なまでに嘘をつかずにいられない青年であり、自分の嘘を全うするためには会社を辞めることさえ辞さなかった。ところがそんな彼は、古代社会から脈々と続いた“嘘部”という集団の末裔だった。その才能を買われ、秘密結社「黒虹会」のプロジェクト・チームに編入された彼は嘘の才能を大きく開花させる…心理サスペンスの傑作。
江戸・寛政年間、幕府小姓組番頭の職を辞し、絵師となった朝霞桔梗之介は、艶の盛りの大店の内儀・万喜を道づれに、深山幽谷の木曽路を旅していた。かの地で人の首より樹木一本を大事とする世の不条理に激しい怒りを覚えた桔梗之介は、藩権勢を頼む山役人に凌辱されたいた娘を居合一閃で助ける。だが、礼を受けて訪ねた里で抱いた女は亡霊であった。
傭兵部隊・鬼道組の副官である上条はイタリア・ボローニャで一人の老人に出会う。殺しのプロを擁する謎の組織に家族を惨殺され、旧式ライフルを手に復讐の炎を燃やす老人により、眠っていた野獣の血を呼び醒まされた上条は、戦闘に参加する。圧倒的な戦力を誇示する敵本拠に攻勢をかける二人。命を賭した死闘の果てに全貌を現す驚くべき謀略とは。
建設業界を背後から牛耳っていた元総理と建設土木業界の首領の相次ぐ急死は、政界はもとより、業界に大きな衝撃を与えた。日本高速道公団が発表した常越高速自動車道の建設計画に対し、業界内の調整がまったく白紙の状態だったのである。公共事業を足場に次期総裁選を目指す政治家たちの暗闘と、入札にからむ建設土木業界の裏工作を描く長篇企業小説。
人けのない古寺で密会する老年ながら精気に溢れた二人の男。政権与党内で次期総裁の座を射止めんとする第二、第三派閥の参謀同士が互いの肚の内を探りあっているのだ。総理総裁現職の大嶋雄策が党内の不文律を無視し、三選を目指す動きを見せたため政界は大混乱に陥っていた。裏切り、疑心、中傷の渦巻く修羅場で飽くなき覇権争いを制する者は。
奈良で売薬を業としていた大森通仙一家に思わぬ災難がふりかかってきた。店の前に鹿の死体が置かれていたのだ。鹿殺しの堅い禁制を破り、所払いとなった通仙親子に襲いかかる、数奇な運命から、いつしか江戸吉原の花魁になっていた娘のおたかだったが…。(第1話曲水の盃)。“いろまち”にまつわる物語を艶に絡めて描く浮世草紙。全十一話の傑作集。
島根半島の東端、美保関燈台下で美女が扼殺死体で発見された。数カ月後、殺された女性が同級生だったと知った菊地大作は、死体を遺棄したとみられる夜、燈台近くで恋人法子とともに男の恐喝にあっていたことを思い出し、その時拾った写真引き替え券から男を犯人と断定し行方を追った。だが、男はすでに殺されており、菊地も松江で刺殺されてしまう。一方、法子から菊地殺しの犯人探しを依頼された探偵の甲斐正樹は菊地のダイイングメッセージ“米子”の意味を求めて、策略と殺意の罠が待ちうける出雲路へと飛ぶ-。
卒業か留年かの瀬戸際に立つ高校生の冴木隆と、不良中年私立探偵の父・涼介。キザな二枚目・粕谷の出現によりドタバタ親子の日常はまたしても急変する。父の永遠の宿敵・粕谷を尾行中、隆は銃撃戦に巻き込まれ、どことも知れぬ町に連れ込まれる。会ったこともない母や妹に囲まれて、町に出没する殺人鬼と対決する羽目になった隆の頭は大パニック。
東大出のエリートサラリーマンの夫は給料日になると妻に特別な性の儀式を要求していた。だが、ある日を境にアチラがすっかり役立たずになってしまった。再起を願って夫婦交換を試みた二人だったが、とろけるような味を知った妻は、うずく肉体を抑え切れず、いけないと思いつつもあの歓びを求めて次次と夫以外の男と“火遊び”を続けていく。長篇官能小説。
南郷弁護士の助手・金丸京子のもとに、山で遭難死したはずの親友・宮川秋子から、パーティの招待状が届く。南郷とともに出掛けると、出席者の1人がまるで神隠しにでもあったかのように、突然いなくなってしまう。秋子と一緒に山に登った仲間たちも、その後、次々と消えてしまう。いったい死者が、何のために?幽霊を追う南郷の名推理と意外な真相。
山形県・赤湯温泉のクラブ『夜会』に、派遣コンパニオンで失踪一週間になる小野川利美から「殺される!」という緊迫した電話が入った。警視庁捜査一課の北条千里警部は、東京にいる利美の恋人で生命工学の研究者・松山勇二の身辺を探る。高級な天然香料を人工的に造り出す松山の技術が巨大な利権を生むことから、開発プロジェクト内に暗闘があることを知った千里は、利美がその渦中に巻き込まれたことを直感する。だが、警察を一歩先んずる犯人は、まず秋田にいる利美の両親を惨殺した。犯人の次なる狙いを読んで、女刑事が東北道を疾走する。
CIA不正規作戦部隊ティーム・ストライカー隊長のオリビア・レッドパワーズが、テロリスト“笛吹きイワン”抹殺の秘命を帯びて来日した。首都・東京ではイワンによる残虐な無差別殺人が連続しており、影なき標的を急追したオリビアは、背後に存在する謀略“ダーク・サマー”を暴き出す。だが、その筋書とは別に新生の叫びをあげた若き野獣がいた。
内閣調査室副室長からオチコボレ親子探偵、冴木涼介・隆の事務所へ来日した東南アジアの島国ライールの王女ミオの護衛依頼がきた。だが、政情不安、王位継承で謀略渦巻くお国柄。政府筋に雇われた殺し屋が隆たちを狙った暗躍しはじめる。その間隙をぬって「カマル教団」がミオを本国へ連れ去ってしまう。ミオを追って親子はライールに飛んだが。
鬼同心・鬼頭一角が率いる捕方組に目潰しを喰らい視力を失った剣豪・京極斑鳩之介は、一枚絵にもなる女の許に匿われる。そこで起臥する人々の情と欲望に触れながら、捕方の動静を窺う斑鳩之介は、追手が次第に迫りくる気配を感じ取る。密かに居を変える斑鳩之介だが、執拗に首を狙う鬼頭は斑鳩之介昵懇の女を拉致し、陰惨な罠を張りめぐらせる。