出版社 : 廣済堂出版
セックスがらみの揉めごと解決屋・氷室凍馬のもとに、名門の誉れ高い薔薇百合女子学園理事長・新藤有美が訪ねてきた。その依頼とは、同校の生徒が麻薬欲しさにアルバイトで売春をしているという密告の真偽を確かめることであった。思念によって性感を刺激し、めくるめく快楽の波に乗せて人物を自在に操る淫導術。その奥義を極めている凍馬は、売春を名指しされた十六歳の美少女・松尾香苗を待ち伏せし、彼女の奔放なまでの欲望に超絶性技で応えてやる。だが、香苗は売春組織の実体を知らず、ある衝撃的事実のみを語った。
寛政年間、仕込杖と絵筆を手に肥後・人吉領へ分け入った朝霞桔梗之介は、追い剥ぎに襲われていた人妻・小春と従者・セツを助ける。平家落人の末裔が住む秘境「五家ノ庄」へ戻るという女二人に同道して、桔梗之介は山深きかの地を訪れた。だが、日を経ずして小春の家に伝わる平家三宝刀の一振りが何者かに盗まれ、村は大混乱に陥る。痛快時代小説。
平凡な経理マンとして働いている加藤一郎の夢の中に、いつごろからか、血まみれの手をした男が現われ、彼の名を呼ぶようになった。そしてある朝、通勤の地下鉄の中で加藤は、血まみれの手の男を見つけ、夢の中の男が現実へ侵入してきたことを知る…。平和な生活が破壊されてゆく男の戦慄を描いた表題作ほか、日常に潜む恐怖を扱った四篇を収録。
景気低迷が続く中、米国銀行から巨額の融資を得る交渉を進めていた業界大手の富国自動車工業。社内では、海外進出に積極的な国際派の常務と、通産省との太いパイプを持つ民族派の専務が、次期社長の座を狙って激しく対立していた。一方、富国自工経営陣への発言力低下を恐れた国内の主力銀行は、同社の個人筆頭株主に接触、対抗策を巡らせるが…。
工場汚水から発生するガスでひとりの子供が中毒死し、母親も後追い自殺を遂げた。直後、工場長が殺され、愛する妻子を失った芭蕉研究家の大学講師三浦八郎が、犯行を告白する遺書を残して死亡した…。三浦の死で事件は終息するかに見えたが、驚くべきことに、彼には鉄壁のアリバイがあった。公害問題と芭蕉忍者説を作中に盛り込んだ著者の代表作。
旧式の双発プロペラ機ダグラスDC-3で運び屋をする退役自衛官・北一馬。カサブランカを根城にする彼に破格の仕事が持ち込まれたー。アフリカ大陸を極秘裡に縦断し、ある人物を内戦に燃えるジンバブエまで運ぶ北は、愛機を駆って大空へ舞い上がる。各国謀報機関と謎の組識の巨大ダイヤモンド争奪戦に巻き込まれた男の、誇り高く、胸熱き死闘。
それぞれ別の相手との結婚を間近に控えた男と女がホテルの一室で最後の七日間を過ごす。濃密な情事を重ねる中で、言動に不審を覚えた女は一年前の殺人事件を思い起こす。彼女が助手を努めていた高名な日本画家夫妻が何者かに惨殺され、いまだに犯人の手掛かりは掴めていない。快感の波にもまれながらも、女は男に対する疑惑を深めていく。
老中・松平定信の非公式な隠密巡察役として、肥前長崎の地を踏んだ絵師・朝霞桔梗之介。不義密通の仕置きで拷問と女郎務めの日々を送っていた女・ムメを郭から連れ出した桔梗之介は、高名な女流陶物師・咲弥の屋敷に転がり込んだー。雲仙から肥後熊本へ、今生の地獄を見た女を伴い、桔梗之介の憂世の旅は、またしても剣難・女難の連続となる。
いわれなき人殺しの罪を背負わされた京極斑鳩之介は、岐蘇福島の道場の師範代にと請われ、妻の志津を連れて江戸を背にした。しかし鬼同心鬼頭一角らの執拗な追跡は続き、志津は捕えられ、女郎屋へ売りとばされたあげく、自ら命を絶ってしまう…。鬼頭一味の斬殺を心に誓う斑鳩之介の活人剣が怒りの閃光を放つ。書下ろし長篇時代小説。
工員浅辺宏一は病的なまでに嘘をつかずにいられない青年であり、自分の嘘を全うするためには会社を辞めることさえ辞さなかった。ところがそんな彼は、古代社会から脈々と続いた“嘘部”という集団の末裔だった。その才能を買われ、秘密結社「黒虹会」のプロジェクト・チームに編入された彼は嘘の才能を大きく開花させる…心理サスペンスの傑作。
江戸・寛政年間、幕府小姓組番頭の職を辞し、絵師となった朝霞桔梗之介は、艶の盛りの大店の内儀・万喜を道づれに、深山幽谷の木曽路を旅していた。かの地で人の首より樹木一本を大事とする世の不条理に激しい怒りを覚えた桔梗之介は、藩権勢を頼む山役人に凌辱されたいた娘を居合一閃で助ける。だが、礼を受けて訪ねた里で抱いた女は亡霊であった。
傭兵部隊・鬼道組の副官である上条はイタリア・ボローニャで一人の老人に出会う。殺しのプロを擁する謎の組織に家族を惨殺され、旧式ライフルを手に復讐の炎を燃やす老人により、眠っていた野獣の血を呼び醒まされた上条は、戦闘に参加する。圧倒的な戦力を誇示する敵本拠に攻勢をかける二人。命を賭した死闘の果てに全貌を現す驚くべき謀略とは。
建設業界を背後から牛耳っていた元総理と建設土木業界の首領の相次ぐ急死は、政界はもとより、業界に大きな衝撃を与えた。日本高速道公団が発表した常越高速自動車道の建設計画に対し、業界内の調整がまったく白紙の状態だったのである。公共事業を足場に次期総裁選を目指す政治家たちの暗闘と、入札にからむ建設土木業界の裏工作を描く長篇企業小説。
平凡な結婚生活をしていたはずの虫子粂喜だったが、妻の万利子に逃げられてしまう。執拗に妻の居場所を捜す虫子は金沢で猪野愛児と夫婦同然の暮らしをしていた万利子を見つけ強引に連れ戻すが、また逃げられてしまう。再び虫子から逃げた万利子は、猪野と釧路で密やかな暮らしを始めるが…。女の身勝手と男の執念を鬼才が描く長篇クライムサスペンス。
人けのない古寺で密会する老年ながら精気に溢れた二人の男。政権与党内で次期総裁の座を射止めんとする第二、第三派閥の参謀同士が互いの肚の内を探りあっているのだ。総理総裁現職の大嶋雄策が党内の不文律を無視し、三選を目指す動きを見せたため政界は大混乱に陥っていた。裏切り、疑心、中傷の渦巻く修羅場で飽くなき覇権争いを制する者は。
奈良で売薬を業としていた大森通仙一家に思わぬ災難がふりかかってきた。店の前に鹿の死体が置かれていたのだ。鹿殺しの堅い禁制を破り、所払いとなった通仙親子に襲いかかる、数奇な運命から、いつしか江戸吉原の花魁になっていた娘のおたかだったが…。(第1話曲水の盃)。“いろまち”にまつわる物語を艶に絡めて描く浮世草紙。全十一話の傑作集。
島根半島の東端、美保関燈台下で美女が扼殺死体で発見された。数カ月後、殺された女性が同級生だったと知った菊地大作は、死体を遺棄したとみられる夜、燈台近くで恋人法子とともに男の恐喝にあっていたことを思い出し、その時拾った写真引き替え券から男を犯人と断定し行方を追った。だが、男はすでに殺されており、菊地も松江で刺殺されてしまう。一方、法子から菊地殺しの犯人探しを依頼された探偵の甲斐正樹は菊地のダイイングメッセージ“米子”の意味を求めて、策略と殺意の罠が待ちうける出雲路へと飛ぶ-。
卒業か留年かの瀬戸際に立つ高校生の冴木隆と、不良中年私立探偵の父・涼介。キザな二枚目・粕谷の出現によりドタバタ親子の日常はまたしても急変する。父の永遠の宿敵・粕谷を尾行中、隆は銃撃戦に巻き込まれ、どことも知れぬ町に連れ込まれる。会ったこともない母や妹に囲まれて、町に出没する殺人鬼と対決する羽目になった隆の頭は大パニック。