出版社 : 廣済堂出版
吉野での大峰入峰を終えたばかりの修行僧、土岐竜海。偶然に新仏のある家を訪れると、そこには妖艶な未亡人、静香の誘惑が…。熟女の魔力に負けた竜海は、その家にとどまり、やがて娘の美季と結婚するが、静香の魅力を忘れきれない竜海は義母との情事を重ねる。これを目撃した美季は逆上して母親を殺し、みずからの命も断った…。戒めを破った僧、竜海の凌辱・邪淫の“女食巡礼”が始まる。長篇官能ミステリー。
横浜の幼稚園を狙い、誘拐を匂わせる恐喝事件が発生した。神奈川県警特捜班が犯人の指定した取引現場に散開するが、そこには身許不明の男の絞殺死体が遺棄されていた。殺されたのは恐喝犯なのか?-進展のないまま、事件は闇に包まれてしまう。そのころ九州・福岡で、私立学園を持つ教育界のドン・武本の愛孫が誘拐されていた。高速道路網を駆使して巧妙に身代金を得ようとする姿なき脅迫者と、一瞬の犯人との接触に全てを賭ける刑事たちの対決の果てに、横浜-博多を結んで錯綜する恐るべき犯罪の全貌が明らかになる。書下ろし長篇サスペンス。
謀略組織「ダブル・クロス」との戦闘で鏑木隊員を失った鬼道組。第三世界の金融市場に敵の資金ルートを見出した野獣たちは、東西情報機関に接触、反撃へと転ずる。だが、隊長連城重吾が、突如盟友たちに別れを告げた。絶望に彩られた己の過去を胸にめ秘め、亡獣は一人復讐の戦場へ向かう。
脱サラ探偵・柏木大介の許に調査依頼が舞い込んだ。依頼主は女子高生で、内容は男子受験生の挙動であった。さらに大学教授から入試に絡む、予備校の調査依頼が来る。しかし、女子高生は高校のプールで水死体となり、教授も暴漢に襲われたのち、病院のベッドで殺害されてしまう。一方、大介も警察に追われ、殺し屋に命を狙われ始める。そんな折、同居人の知佐子がサンフランシスコへ飛び事件を解く鍵を探り出すー。
第八代将軍吉宗の曾孫・赤利豊前守高昌(灯雨近)は、江戸にはびこる悪を裁くため市中を徘徊していた。いくたびか女体に溺れ、策略を期す妖女に惑わされる雨近だが、同時に武士としての誇りを持つ男たちへの助力も発揮していた。また不審な動静を見せる長崎奉行へ密偵を疾らせるなど、公儀でも策動する雨近。己れを取り巻く、業に満ちた者たちを見た時、次第に腐り始めている国の政治を敏感に感じ取った雨近だが…。
宮崎発東京行きの寝台特急「富士」の個室から女性の生首が発見された。そして、死体の一部が静岡の安倍川と東京の隅田川に浮かんだ。丸の内署の下川刑事は被害者と同じ車輌に乗っていたと思われる意外な人物を捜し出すが、死亡推定時列車は岡山ー名古屋間をノンストップ走行中で、下車することは不可能であった。消えた犯人の影を追って下川刑事は一人九州へと旅立つが…。時間のトリックを衝く会心の鉄道ミステリー。
慶安3年、旗本の志良堂兵庫は江戸・湯島で白装束と黒装束が入り乱れての奇怪な斬り合いを見た。その夜、妻の鹿手が攫われ、兵庫は手掛かりを求めて軍学者・由井正雪に出会う。由井から、泰平の世の裏で続く神徒と仏徒の暗闘を示唆された兵庫は、己の身がその過中に置かれたことを悟り、禄を捨て野に下った。深川に巣食う、敵とも味方とも知れぬ浪人数百に紛れ、兵庫は一刀流の剛剣一本を揮って波乱に満ちた修羅道をゆく。
ジャパユキとなっていたオリビア・キハノが北海道の山中で焼死体で発見された。フィリピンの裏社会に君臨する神谷昭次はオリビアの確認に旭川へ向かうが、雪山で二発の銃弾の洗礼を受け、また、オリビア捜索の一カ月間に行く先々で地元の暴力団につけ狙われていたのだった。杳として行方の知れぬオリビアの足取りを追って旭川から網走へと向かうが、そこでも神谷は二人の暗殺者に襲われてしまう。九死に一生を得、狙われる理由が分からぬままフィリピンへ戻った神谷だったが、日本の企業戦士が企む恐るべき巨悪と組織の罠が待ち受けていた…。
CIA最高機密のオメガ・ファイルが漏洩し、持ち出し容疑者を追う精鋭が未知の部隊に撃破された。標的の捕捉依頼を受けた鬼道組はブリュッセルで謎の組織「ダブル・クロス」と対峙する。激闘のさなかNo.3の鏑木が姿を消し、野獣たちは史上最強の敵を前にかつてない苦境に追い込まれる。
どんなにカードが揃っていても、エースは1枚しか存在しない。その“頂点”を目指して、因縁の二人と目されるライバルたちのパワフルでスリリングな戦いのドラマが展開される。心優しき男たちの生きざまと、幾多の名勝負、名場面を熱くさめた観察眼によって浮き彫りにする。-本書に収められたヒューマンな作品群には外からは窺い知れない“裸の選手”たちが息づいている。-プロ野球ノンフィクション・ノベル。
動乱の時代を迎えようとしている安政年間、第13代将軍・徳川家定の後継ぎを巡って水戸・一橋党と紀州・南紀党は熾烈な勢力争いを繰り広げていた。南紀党を率いる紀州藩付家老水野忠央は老中首座の阿部正弘を暗殺、一方、一橋党も忠央や井伊直弼の懐刀長野主膳の暗殺を企てるなど、攻防は一進一退を繰り返していた。そんな折、一橋党の首魁水戸斉昭が失脚、直弼の大老就任が突如実現したことで形勢は傾くが…。
幕府小姓番頭という職を失脚し、絵師となった朝霞桔梗之介は、再び拓かれようとしていた武士の道を拒絶して、芭蕉が辿った奥の細道へ絵修業の旅に出る。景観を画布におさめる道すがら、偶然出会う妖しい女との困果で一刻たわむれ、経路を外れることしばしの道中であった。しかも、次々と行く手に現われる悪党に時の政治の腐敗を垣間見る桔梗之介は、自らの掟に従い、眼前に群がる悪を一刀両断に斬り捨てていくー。
新婚旅行中、誘拐された妻を救出に、南アルプスの八紘嶺に向かった医師・武宮章吾は、無事妻を救出。誘拐犯は山中から変死体となって発見された。一方、川崎ではホステスが自宅ベランダから転落死していた。山中での変死体と疑惑の転落死。二つの事件の同一線上に浮かんだ一人の男とその殺意。完全なアリバイに守られた男の才略を打ち砕くため、章吾は不審死を遂げた女が残したメモを頼りに事件を洗い直すが…。
「無縁坂で起きた人妻の自殺を洗い直せ」という密告電話がかかってきた。夫、青山の取材を進める新聞記者の白井浩介は、数年前にも彼の前妻が事故死し、多額の保険金を手にしていることを知る。その矢先、彼の愛人が惨殺死体で発見され、妻殺しと共に青山への容疑を深めた。だが、青山が完全な密室状態で殺害され、事件は振り出しへと…。地道な密室殺人の謎解きから、やがて意外な人物が浮かびあがってくる。長篇本格推理。
アメリカで、ボーイング747撃墜、ソ連大使館参事官補殺害、と重大テロが続発した。CIA長官はこの機に組織内の厄介者ティーム・ストライカーを一掃すべく、鬼道組を投入する。敵の本拠を襲撃し、連城たちは、ついに魔王の兵士ノーマン・J・ストライカーとの決着の時を迎えるが。
ソ連首脳訪日を目前にして、右翼テロリストが動き出した。政府は万全の警備体制を敷くべく、緊急関係閣僚会議を招集する。だが、ソ連は独自の警護に乗り出し、国際紛争工作員、コードネーム“鷹”を上陸させた。この情報を密かにキャッチした防衛庁統合幕僚会議調査二課(J2)は、こともあろうに右翼の巨頭に鷹の抹殺を依頼したー東西両陣営の熾烈を極めるスパイ戦の果てに待つものは…。長篇ハードアクション。
雑誌のルポライター加藤悦子が六本木の自宅マンションで、自殺を装って毒殺された。警視庁捜査一課の北条千里刑事官は、悦子が狙っていた特ダネの内容を探る始める。その頃、別府と姫路で六本木の殺しと同一犯人の仕業と思われる殺人事件が発生した。被害者はいずれも医師で、20年前に行われた体外受精治療に接点があった。北条たち特捜本部は、治療を受けた会社員・瀬川夫婦とその娘朝香に事情を聞き、現代医療の先端を迫って悦子が掴んでいた驚くべき事実に突き当たった。だが、後手に回る警察を嘲笑うかのように、第四の殺人がー。
薄れゆく下町人情、女と男の粋。蘇る昭和の面影に郷愁が馳せる。平成の夜明けを前に、昭和を哀しくも毅然と生きる料亭の女将と、見守り続ける男の姿を描いた本書初収録の表題作『ぐい呑み』ほか、人情の機微が興趣深い珠玉の自選短篇集。