出版社 : 徳間書店
極寒の地シベリアを肥沃な穀倉地帯にする。-これは建国以来のソビエトの夢だ。その実現のためにソ連は「気候改造」を計画している、との情報をキャッチしたCIAは、日本の内閣情報調査室に共同作戦を提案してきた。内調室長稲月修造とCIAのバリンジャーの作戦は、来日中のソ連国家計画委員会議長ミハイルを誘拐して訊問しようというものだ。そして、その場所に選ばれたのが、京都の桂離宮だったが…。
まだ地平線の果ての見えない笑街道。作者ともども、花麿、じてんしゃ、デメンチアの苦闘も続きます。「笑いは生理的には、人の心身を『緩和』『解放』『無防備』状態となさしめるものであるが、『異常』に接したとき、それと彼における『通常』との距離や落差を計り…」なんて哲学的な思索もあったりして。万人を笑わせる“究極の笑い”は見つかったか?読者諸兄姉の賢明なる洞察では?巨篇意欲作完結。
親友エブに新しい恋人ができた。〈私〉も老いへのゆとりが生まれ、そろそろ探偵稼業におさらばをきめこともうと考えていた。が、その〈私〉を襲う謎の男の出現。あろうことか、人里離れた山奥の小屋に独り拉致された!男が残していったのは、13週間分の食糧と足かせ。絶体絶命の大ピンチに〈私〉は必死の脱出を試みるが、足かせは重く、確実に〈私〉を山小屋に縛りつける。“名無しの探偵”シリーズ最大の危機到来。
ベルギーの古城で次々に起こる異様な惨劇には恐るべき秘密が隠されていた。戦慄の心理描写とプロット全体に潜む驚天動地のトリックとは…?鬼才が2人称で綴る書下し・殺人幻想詩篇。
隣室から夜ごと漏れ聞こえてくる女のあえぎ声…亀谷史崇は今夜も聞き入っていた。斎王谷澪子というのが、声の主の名前だった。しかも相手の男はいつも違っている。ある日、史崇は彼女がテレビ局のアナウンサーであることを、偶然にテレビの画面で発見していたのだった。今夜はとくに激しい男女の睦言がいつしか暴力的になり、奇妙な音が部屋を充しはじめた気配が伝わってきた。翌朝、史崇は、彼女が懸命に洗いものをする姿に出くわしたが…。忘れ去られた伝説が都会の一隅に甦る恐怖とサスペンスの書下し。
冬は閉ざされている立山-扇沢ルートが開通した日、登山姿の男女が室堂に降り立った。男は山村秋行、精神科医であり、女は患者の沢村淑美だった。未だ白銀の剣岳を目指す2人は、別山平で1泊、源治郎I峰下部岩壁でザイルを結び合った。まっ黒な岩壁が眼前に立ちはだかり、ハングと垂直の連続する壮絶な佗立は圧倒的である。数カ月前まで、淑美は夫殺しの容疑者だった。保険金目当ての殺人放火という嫌疑は精神鑑定の結果、過度の飲酒による病的酩酊とされ、無罪を勝ちえたのだが…真相はザイルに賭けられた。
20世紀初頭、帝政打倒を叫ぶ革名党の動きが激化するロシア。首都ペテルブルクに駐在する海軍少佐・広瀬武夫は、日露開戦に備え軍事情報の蒐集にあたっていた。しかし公式身分のため表立った行動がとれず、政府は配下に民間人の北沢を起用する。北沢は過去を隠す謎の人物だったが、諜報活動は着実に成果を上げた。ある日広瀬は北沢と共に一人の革命家を訪ねるが、思いがけない殺人が起きる。長篇ミステリー。
埃っぽくて薄暗い、カルカッタの大真珠ホテル。この最下級の木賃宿には、インドを陸路で渡る旅人が集まる。作家の加田、噂好きの小田黒教授、若冠二十歳の幸丸くん、肝炎に臥せるプロちゃん、傲岸不遜の狂犬病氏、精霊と話すエスメラルダ…。一握りの金持の裏側の貧困。不可触民がたむろし、様々な病のはびこる混沌の国に、日本とは異なる時の流れや活力を見出した人々の生き様を鮮やかに描く傑作長篇。
一刀流の達人番匠谷吉三郎、昔は千石取、天下直参の若殿だったが、今は浪人。大望を秘めて、巾着切だの、夜鷹宿のおやじだのを子分にして、江戸は本所ぐらし。悪事はしても非道はせず、弱い者には大の味方、悪党どもには、坊っちゃん吉三、お坊吉三、と恐れられた。その吉三郎を頼って来たのが、売り出し中の女役者小染、実は仇を討ちたいのだとの訴え、有無なく承知したのも理由があった。痛快時代長篇。
ソ連のリガからイギリスに運ばれるはずのプルトニウム239がコンテナごと盗まれた。兵器コングロマリット〈ストラトス〉の仕業だ。ヨーロッパの核兵器廃棄構想、すなわちゼロ・ゼロオプションの陰でアルバニアに核を売ろうとしているトラトス基地を破壊するため、英米ソの諜報員が決死の潜入を試みるー。不世出の冒険小説作家アリステア・マクリーン原案。陰謀と闘う男たちの姿をスリリングに描く傑作。
内閣情報室特務課・石板晃。彼は手段を選ばぬ非情な一匹狼だ。彼の行く所には女と血の香りが充満する…。文化大革命でC国を追放され日本へ逃れた南小路公麿は、密かに極秘フィルムを持ちだしていた。そのフィルムにはC国の世界征服計画に関する秘密が収められていた。野望の露見を恐れたC国国家保安部は公麿の愛娘を誘拐し、脅迫する。救出を命ぜられた石板は、相俸ベレッタを手に敢然と敵に立ち向かう。が、事件には意外な黒幕が…。息をもつかせぬ展開と、凄絶なガンファィト!会心のアクションノベル。
樹霊の生命の叫びを聴け!偉大なる知性を秘めた全能の〈父母の樹〉は滅びの時を悟って永い眠りから覚め、異能の少年・広久に使命を与えた。植物の逆襲がいま、はじまる…。警鐘のハードロマン巨篇。