出版社 : 徳間書店
犯罪発生件数が一番多い火曜日に事件は起った。東京着、6時57分の寝台特急“出雲”4号のA寝台個室1号室と2号室で、男と女の死体を発見。女は関西のストリッパー三条ひとみ、男は大学教授の西川太郎と判明。死亡推定時刻は男が死後4、5時間、女が死後10時間と微妙に食い違っている。鉄警隊の清村公三郎部長刑事は丸の内署の秋山刑事と組み独自の捜査に乗り出す。好評、鉄警隊シリーズ第2弾。書下し長篇。
航空検察官・伊吹竜のもとへ奇妙な遺書が届いた。文面は“虎は必ず放たれる”。かつて北朝鮮への亡命にハイジャックを企て失敗、死刑を執行された男のものであった。同じ頃、北朝鮮工作員とみられる男の惨殺体が発見され、所持していた暗号から「竜」の文字が浮かんだ。折しも全斗煥大統領の来日を控え、国際的謀略を嗅ぎとった伊吹竜は、「虎」と「竜」を追って大阪の街に潜行した。長篇航空アドベンチャー。
外交官であった能垂伯爵を父に、フランス人を母にもったヒネモス・のたり氏は、パリの下町に40年も住む売れない画家だ。ある日突然、パスポートを盗まれ宿無しになった日本人娘・野田ひとみがころがり込む。彼女はモデルとなり、ヒネモス氏の副業である探偵の助手も務め、ついでに処女も捧げる。“女の都市”パリにくり拡げられる難事件に体当りするヒネモス氏とひとみの活躍を描く連作ユーモア・ミステリ。
薬師丸春麿は、28歳でシングル族である。東大を卒業して、平和物産企画部に所属していたが、仕事では全く信用されていない。しかし天下の東大卒。外見はインテリ風で目鼻立ちがよく、色は浅黒く精悍。女にモテて、女に強い。特に、幼くして亡くした母の面影に似ている女となると、猪突猛進、失敗したことがない。この春麿の「長所」を見込んで、平和物産のオーナー会長が特別秘書に抜擢した。会長直々の部下になった春麿は、次々と現われる女を篭絡し、会長のスキャンダル揉み消しに手腕を発揮するが…。
「北京の銀座」などと日本人が勝手に名付けたりしている王府井大街。日本製の時計・カメラ・テレビ・洗濯機はじめヨーロッパ製・アメリカ製・香湾製のありとあらゆる商品であふれるこの大商店街。そこには中国人のたくましい熱気が渦巻いているのだが…。
新橋に事務所を持つ弁護士・樋口丸男の許に、彼のかつての同級生・西村陽子の紹介という若松美知子が訪ねてきた。美知子の兄・邦雄は、会社で3億円近い偽造手形を切り、失踪、自殺を遂げた。無実を信じる美知子は樋口に事件の調査を依頼。手形は切ったが、その金を使った形跡がないことがわかる。そんな矢先、美知子が突然依頼をとりさげにきた。不審に思った樋口は調査を続行する。長篇サスペンス・ロマン。
天野川を下った町のはずれに、邦子の嫁いだ小さな造り酒屋がある。子供に恵まれず、夫と舅夫婦との平穏な毎日を送る邦子だったが、東京から移り住んできた日本舞踊の月形流家元・月形霧玄に淡い憧れを抱き始めていた。思いかけず、京都月形会館の竣工パーティに招かれた邦子は、ためらいながらも一人旅立ち、誘われるまま瑳峨野で一夜をともにしてしまう…。人妻のはかない純愛を描く長篇恋愛小説。
酒のうえのケンカでヤクザを殺し、4年の服役のうち仮釈放で出所した相崎哲は、恩人伊勢田政治の死を知らされ、墓参りのため島根県松江へ向かった。そこで、自分が殺人の罪をきせられ、指名手配をされていることをニュースで知る。相崎は海辺に身を隠していたが、4人組のヤクザに襲われ気を失った。相崎を救ったのは、テキヤ上りで今は出雲神農族の一員となっているユキだった…。長篇伝奇サスペンス。
牛に揺られ、宗匠頭巾を戴いて悠然と瞑目して村道をやって来た五十がらみの人物が何者なのか、高柳又四郎は知らなかった。往き過ぎざまに、又四郎はしたたかに瓢箪で肩を打たれた。居斬りに斬って捨てようとしたが、身動きも出来ない。死ぬ気で抜き打ったが、相手の体は空を躍って、畦にたたずんでいたー。この人物こそ、又四郎が目ざす剣術者藤木道満であった(音無しの構え)。珠玉の名篇を収めた剣豪小説。
玉里は松葉屋の折檻部屋で、三日目の朝をむかえた。天井下の梁からおろされた綱で玉里は吊るされている。半裸の肌身に縄目が食いこんでいた。後ろ手にされた手首と腕の痛さも、今は感じなくなっていた。足ぬきをはかった遊女が、どんな仕置きを受けるものか、玉里も話には聞いていた。しかし、こんな酷いものとは。玉里はひたすら耐えていた(廓祝言)。表題作他、悲恋を描く時代小説七篇を収録。
流人の子、罪の子よと囁かれ、うしろ指をさされて成人した伊藤弥五郎は、新天地を求め、父の形見の木刀を背に、大島から伊豆半島へと泳ぎ渡った。背丈高く、筋肉は隆々とし、15歳とは見えぬ弥五郎だが、飢えと疲労のあまり倒れてしまった。だが、三島神社宮司の矢田部伊織に救われ、その庇護のもと、剣の修行にすごす弥五郎の前に、異形の剣士李八官が立ちはだかった。雄渾な筆致で描く書下し剣豪小説。
中国の著名な将軍を父に、桂林で生まれた白先勇は、戦火を逃れ重慶、上海、南京と移り住み、戦後は香港から台湾へ、さらに米国へと居を移した漂泊の作家だ。収録した4篇も、桂林、台北、ニューヨークと舞台を異にし、愛に傷つき、異郷で孤独な死を迎える悲劇の人生を耽美的に描く。本書は、中国映画の大ヒット作『芙蓉鎮』の謝普監督が再び世に贈る感動作『最後の貴族』の原作である。
半世紀にわたる、全国武士団の骨肉あい食む抗争ー南・北両朝の内乱の口火を切ったのは、後醍醐天皇の隠岐脱出だった。髻に討幕の綸旨を秘めた密使が国々を疾った。赤坂城、千早城の合戦に敗れた楠木正成は、再起を期していた。この時、丹波篠村八幡宮に願文をささげた、清和源氏足利流の棟梁高氏は、六波羅探題を亡ぼした。新田義貞、また鎌倉を陥し、ここに建武新政は成ったとかみえたが…。歴史大作。
鎌倉幕府は亡んだものの、建武新政の相次ぐ失政に、世は乱れ、全国武士団の不満が爆発した。討幕の勲功第一とされ、後醍醐天皇の諱尊治の名の一字を与えられた尊氏は、新田義貞を討つため大軍をめをもって入洛した。後醍醐天皇は比叡山に逃れた。合戦の巷と化した京で、尊氏は楠木正成、新田義貞、北畠顕家を相手に戦ったが、遠く九州に敗走した…。室町幕府を興した英雄の生涯を描く時代大作、ここに完結。
八橋進介は司法研修所を出たての新米弁護士。正義感に燃える進介は検事一家に育ちながら、検事正である父の反対をおしきり、人権派の代表的存在、舟本守道弁護士事務所に居候することになった。学生時代の憧れの先輩で守道の娘・美波子と、彼女のライバル・晶という二人の美人弁護士に囲まれて、毎日が緊張の連続。そんな彼が初めて担当したのが殺人事件の弁護だった。被告は中学校の女教師。教え子の父親との不倫がバレて、口論のすえ夫を殺害したとされている。公判初日。誰もが情状酌量のセンで争うものと思っていたが、進介は突如「被告人は無実ッ!」と主張する。騒然とする廷内。果たして進介に勝算はあるのか。TBS金曜ドラマの小説化。