出版社 : 徳間書店
夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることにー。恋愛小説に風穴を空ける作品との評を得、満票にて第22回島清恋愛文学賞を受賞した怪作が待望の文庫化!
記憶を抽出して、画像化を行い、他人の脳内で再生するシステムー0号。これを用いて犯罪被害者の記憶ー殺された際の恐怖を加害者に経験させる…。もともとは、死刑に代わる新たな刑罰として、法務省から依頼されたプロジェクトであったが、実際は失敗に終わる。0号そのものに瑕疵はなかったが、被験者たちの精神が脆く、その負荷に耐えられなかったのだ…。開発者の佐田洋介教授は、それでも不法に実験を強行し、逮捕されてしまう。助手の江波はるかは、さるグローバルIT企業のバックアップのもと、ひそかに研究を続けるが…。0号を施した者、0号を施された者たちの物語は、今、人類の“贖罪”のために捧げられるー。
水野藤十郎勝成は三河刈谷城主惣兵衛忠重の嫡男。勇猛果敢に戦場を疾駆する若武者だ。一騎駆け、一番鑓が生き甲斐で、短気で荒々しい気性を心配する父とはしばしば対立するのだった。織田信長に伺候するために京に滞在していた藤十郎は、本能寺の変に際し、父と自らの命も瀬戸際に立たされた。援軍手配のために刈谷へ向かう藤十郎の命運やいかに!風雲急の戦国冒険譚がここに始まる。
表沙汰にできない依頼を違法すれすれの方法で解決する裏ビジネスのプロ集団シルバー・オクトパシー。メンバーのユリアが、昔の知り合いで入院中の広域暴力団元若頭を見舞う。男は死期が迫り、ユリアは遺言のように頼まれる。十六年の刑期を終え近く出所する二次団体の元幹部に、五千万円余の現金と経を渡してほしい、と。これがとんでもない事件の発端だった!
深津小平太は、旗本の三男坊だが、火盗改の父親との折り合いが悪く家を飛び出した。幼馴染みの版元に言いくるめられて、番付屋を始める。江戸で大流行りの番付表。浮き世の陰に隠された人情の機微を織り込んだ小平太の番付は、相手に覚られないように潜り込んで内情をつかんだものだった。今日も小平太は、辛口の江戸っ子を唸らせるため花魁や火消しの番付調べに余念がない。
熱海と湯河原でクラブを経営していた美人ママを絞殺し、六年の刑期を終えて出所した小早川が熱海に帰ってきた。小早川の出現により、平穏な温泉町に得体の知れない緊張が走る。そして二週間後、湯河原に住む公認会計士が、熱海のホテルで何者かに射殺された。そうした中、十津川警部が、一ヶ月前に東京の成城で起きた幼女誘拐事件の容疑者として小早川に接近するが、あらたな殺人が!?
辞令がなければ、函館に戻るつもりなどなかった。刑事田原稔は、函館西署着任の前日、殺人事件発生の報を受ける。被害者は、かつて愛情をかわした女、水野恵美だった。反故にされた約束。忘れたことはない。忘れられるはずがない。この事件に関わることは、二十年前に彼が故郷を捨てざるを得なかった、ある事情を追うのと同じこと。田原は黙々と捜査を続けていく。警察小説の傑作!
元讃岐藩士の平賀源内は、研究や発明をするため、家督を妹婿に譲り、江戸・神田で暮らしている。ある日、同じ長屋に住むお梅に頼まれ、閑古鳥がないている和菓子屋の建て直しを頼まれた。かつて夏に売れ行きの悪い鰻を売る相談を受けて、成功したのを知ってのことだ。しぶしぶ引き受けるが、己の知識と人脈で、意外な菓子を作り出す。万事が順調と思えた矢先、和菓子屋の主人が殺された。
「おまえのバットはEDじゃ〜」厳しい野次の中、二千本安打を目指すベテラン四番打者の覚悟(「塀際の魔術師」)。万年ビリ球団の経営を任される二世オーナーの決意(「永遠のジュニア」)。微妙な判定をめぐりコラムニストと対決する堅物アンパイアの信念(「人生退場劇場」)。人生笑って前に進んだもんが勝ち!球界を舞台に、苦境に立たされた七人の胸のすく逆転劇を描く痛快連作短篇集。
とにかくなおしたい。無差別に徹底的に。「修繕衝動」に襲われた「なおし屋」と呼ばれる男たちは、「第二次世界修繕」以来の戦いを開始した。そんな彼らに怪しい影が忍び寄る。「オオモノ」が組織した十人の女たちだ。ものを「つくる」彼女たちにとって、男たちの修繕行動は大量殺戮に等しい。ものが売れなくなり仕事を失うからだ。女たちは驚きの策で対抗する。未曾有の戦争の行方は!?
『国史』(『大日本史』)が未完に終われば、水戸徳川家は天下の笑いもの。遅々として進まぬ編修(編集)に業を煮やした光圀公は、遅筆揃いの不届きな執筆者どもから直々に原稿を取り立てんものと、書物問屋の御隠居に身をやつし、御自ら原稿催促の旅に出た。お供を申しつけられたのは、水戸彰考館で国史の編纂に携わる、おなじみ覚さん介さん(実在)をはじめ、机(デスク)のお吟など名うての編修者。最初に訪れた下田では、目当ての学者の身辺で、なにやら不可解な陰謀が。爆笑必至、痛快時代エンターテインメント開幕!
将軍家と縁続きである“葵の若”こと勝田慎之助は、直心影流小太刀の遣い手ながら、父の死により寺の住職となっていた。が、突然、「上様をお守りせよ」との予期せぬ命を拝する事態にー。諸藩をも巻き込み、将軍の座を狙う御三卿の田安宗武と一橋宗尹。“公人朝夕人”の後見人となった慎之助は御側御用取次の大岡忠光、九代家重を陰で警固する葛西衆らとともに天下の大乱を防げるのか!?
名同心の父をもつ植草平助は、もらい泣きをするほど人が良いが、立身出世に興味なく、とにかく厄介事は御免蒙りたい、一風変わった定町廻りの見習い同心。なんとしても手柄を立てさせ、ゆるい主人を小馬鹿にする同僚どもを見返したいと機をうかがう小者の佐吉におだてられつつ、今日も市中見廻りならぬ、寄席廻りに精を出す。そんなふたりに、ある日とうとう不思議な殺しが降りかかり…。
「と、鞆の浦へ行きな…」妙な電話を受けた「軽井沢のセンセ」こと作家の内田。それはホテルで知り合った、広島出身の間宮という老人の声に似ていた。ところが間宮が翌朝から行方不明に!知り合いの浅見光彦に助けを求め、駆けつけてもらう。しかし間宮は戻ってきたのだ。内田の知らない別人の姿で!四日後、殺人事件が鞆の浦で起こり、浅見は現場へ向かう。著者登場の旅情ミステリ。
音無黙兵衛は初美を護るために中山道を往く。しかし敵に囲まれてしまい、僧兵と共に籠城戦を決意した。復讐の火を灯す横山佐十郎、伊賀者の忍ら難敵が次々と黙兵衛に襲いかかる!謎に包まれた初美の過去が明らかとなる中、それでも黙兵衛は初美を護りきることができるのか。因縁の相手・横山佐十郎との対決の刻、迫るー。大人気「無言殺剣」シリーズ第五弾!
上杉景勝の大軍の前に佐々成政は苦吟していた。堅城として名高い富山城に籠もって上杉家の家老・直江兼続の攻城に対抗するも、わずか四日を以て落ちる。一方、諏訪の真田砦を足がかりとした幸村のもとには、当代一流の武芸者たちが続々集結していた。周囲の徳川領を切り取り勢力を伸ばした真田の去就が、天下の情勢に少なからぬ影響をもつようになった。幸村は甲府に向かって進発した。
北陸新幹線・上越妙高駅の完成記念式典に出席した十津川警部。新幹線開業の功労者である吉岡浩一郎の捜査が目的だった。吉岡は戦時中、航空機の開発に携わり、戦後は国鉄に勤務していたが、十年前東京・青梅の山中で殺されたのだ!故郷の柏崎では、吉岡を悪くいう者は皆無。そんな折り、吉岡の孫娘が、遺品の中から見つけた一枚の写真を持ってきたことから事件は予想外の展開を…。
「ギフト」と書かれた段ボール箱が発見された。中には体液のついた毛布。そして子供の小さな赤いスカートが入っているー。ASV特務班。通称「α特務班」はDVや虐待等の犯罪に特化し、所轄を渡り歩きながらそのスキルを伝える特任捜査チームである。夏目凛子を要として、スレンダー女刑事、元マル暴のベテラン刑事ら個性的な面々が姦悪な犯人を追う!
新蔵は越後岩船藩の江戸中屋敷に向かった。姫を国許に連れ戻す手はずであった。街道筋には見張りがいる。巡礼の親子に扮し、旅が始まった。手に汗握る逃走劇の背後には、江戸表と国許の確執、弱小藩生き残りをかけた幕府用人へのあがきがあった。そして、天領だった元銀山の村の秘密、父子二代に亘る任務のゆくえも絡み一筋縄ではいかないシミタツの魅力満載!山火事が迫る中、強敵と対決する!姫を伴った新蔵の旅は成就するのか?