出版社 : 徳間書店
かつて「日没のない国」と謳われた神聖ローマ帝国だが、度重なる戦争で領土を失い、衰退しつつあった。オーストリアと名を変えた帝国を治めるハプスブルグ家の第三皇子に嫁いできた美しく聡明な王女ゾフィー。思い描く帝国の復興とは裏腹に、伝統と格式が重く彼女にのしかかる。しかし、ナポレオンの息子フランツとの出会いが…。変革の波が押し寄せる十九世紀の欧州を舞台に描く史劇。
因縁の敵手、久世家剣術指南役・横山佐十郎から音無黙兵衛に届いた果たし状。修行を経て他を寄せ付けぬ強さを身につけた男との闘いを前にして、伊之助は黙兵衛の身を案じる。そんな伊之助に黙兵衛は己の出自、なぜ今まで「無言」だったのかを旧知の人間を介して知らせるが…。己の生きる意味を切先に託した者同士の一戦。紙一重の攻防が始まる!大人気「無言殺剣」シリーズ第六弾。
なんで俺、死んじまったんだ!?突然現れた小娘と黒猫に雷を落とされた、公安刑事の江神一輝。統子とクロスケと名乗るコンビは天からの“お迎え係”で、雷を操ることができるという。しかし一輝に落とした雷は手違いで、うっかり強めで殺してしまったらしい…。そんな折、頼まれ屋をやっている一輝の弟からヘルプが。一輝を死なせちゃったおわびに、ちびっこたちは事件解決に乗り出す。
江戸・神田の変人長屋に住む学者先生の平賀源内。元は讃岐藩士だが、家督を妹婿に譲り、自由気儘に暮らしをしている。ある日、彼の名を騙った悪質な商品が出回り、苦情が殺到した。憤慨した源内は、同じ長屋に住むものたちの協力を得て、真相を解明するため、奔走する。
夫の浮気を知った妻は身体が巨大化していった。絶望感と罪悪感に苛まれながら、夫は異形のものと化していく妻を世間の目から隠して懸命に介護する。しかし、大量の食料を必要とし、大量の排泄を続ける妻の存在はいつしか隠しきれなくなり、夫はひとつの決断を迫られることに??。恋愛小説に風穴を空ける作品との評を得、満票にて第22回島清恋愛文学賞を受賞した怪作が待望の文庫化!--解説小池真理子
罪を犯した者に、被害者が体験した記憶を追体験させることができる機械、「0号」。死刑に代わるシステムとして開発されるが、被験者たち自身の精神状態が影響して、なかなか成果が上がらない。その最中、開発者、佐田博士が私的な目的で使ったために研究所から放逐される事態に。研究は、部下の江波はるかが密かに引き継ぐことになったが……。人の心の機微を描くことに定評のある著者が、近未来を舞台に描く、渾身のヒューマン・ドラマ。
町中で突然起こった辻斬り。殺された者たちに繋がりはなく、犯人捜しは難航する。北町奉行所の定町廻り同心・鏑木十左。正義感ゆえの融通の効かない性格が災いして、上司と同僚から疎まれていたが、老中の松平定信の目に留まり、隠密同心となり、その活躍を認められ、火附盗賊改方の同心になった変わり者。 江戸で起きる兇悪な事件に立ち向かう同心を主人公に描く痛快時代小説。
水野藤十郎勝成は三河刈谷城主惣兵衛忠重の嫡男。勇猛果敢に戦場を疾駆する若武者だ。一騎駆け、一番鑓が生き甲斐で、短気で荒々しい気性を心配する父とはしばしば対立するのだった。織田信長に伺候するために京に滞在していた藤十郎は、本能寺の変に際し、父と自らの命も瀬戸際に立たされた。援軍手配のために刈谷へ向かう藤十郎の命運やいかに!風雲急の戦国冒険譚がここに始まる。
表沙汰にできない依頼を違法すれすれの方法で解決する裏ビジネスのプロ集団シルバー・オクトパシー。メンバーのユリアが、昔の知り合いで入院中の広域暴力団元若頭を見舞う。男は死期が迫り、ユリアは遺言のように頼まれる。十六年の刑期を終え近く出所する二次団体の元組幹部に、五千万円余の現金と経を渡してほしい、と。これがとんでもない事件の発端だった! 書下し長篇ピカレスク。
深津小平太は、由緒正しい旗本の三男坊だが、父親との折り合いが悪く家を飛び出した。幼馴染みの版元に言いくるめられて、番付屋を始める。江戸で大流行りの番付表。浮き世の陰に隠された人情の機微を織り込んだ小平太の番付表は、相手に悟られないように業界に潜り込んで内情をつかんだものだった。今日も小平太は、辛口の江戸っ子を唸らせるため番付調べに余念がない。
熱海と湯河原でクラブを経営していた美人ママを絞殺し、六年の刑期を終えて出所した小早川が熱海に帰ってきた。小早川の出現により、平穏な温泉町に得体の知れない緊張が走る。そして二週間後、湯河原に住む公認会計士が、熱海のホテルで何者かに射殺された。そうした中、十津川警部が、一ヶ月前に東京の成城で起きた幼女誘拐事件の容疑者として小早川に接近するが、あらたな殺人が!?
辞令がなければ、函館に戻るつもりなどなかった。刑事田原稔は、正式な着任の前日、殺人事件発生の報を受ける。被害者は、かつて若い愛情をかわした女、水野恵美だった。田原の胸に「あの時」のことが蘇る……。この捜査に関わることは、二十年前に彼が故郷函館を捨てざるを得なかった、ある事情を追うことと同じこと。田原は黙々と捜査を続けていく……。北海道の港町を舞台に、かつて若かった者たちの激情が交錯する。馳星周が描く、傑作警察小説!
元讃岐藩士の平賀源内は、研究や発明をするため、家督を妹婿に譲り、江戸・神田で暮らしている。ある日、同じ長屋に住むお梅に頼まれ、閑古鳥がないている和菓子屋の建て直しを頼まれた。かつて夏に売れ行きの悪い鰻を売る相談を受けて、成功したのを知ってのことだ。しぶしぶ引き受けるが、己の知識と人脈で、意外な菓子を作り出す。万事が順調と思えた矢先、和菓子屋の主人が殺された。
「おまえのバットはEDじゃ〜」厳しい野次の中、二千本安打を目指すベテラン四番打者の覚悟(「塀際の魔術師」)。万年ビリ球団の経営を任される二世オーナーの決意(「永遠のジュニア」)。微妙な判定をめぐりコラムニストと対決する堅物アンパイアの信念(「人生退場劇場」)。人生笑って前に進んだもんが勝ち! 球界を舞台に、苦境に立たされた七人の胸のすく逆転劇を描く痛快連作短編集。
とにかくなおしたい。無差別に徹底的に。「修繕衝動」に襲われた「なおし屋」と呼ばれる男たちは、「第二次世界修繕」以来の戦いを開始した。そんな彼らに怪しい影が忍び寄る。「オオモノ」が組織した十人の女たちだ。ものを「つくる」彼女たちにとって、男たちの修繕行動は大量殺戮に等しい。ものが売れなくなり仕事を失うからだ。女たちは驚きの策で対抗する。未曾有の戦争の行方は!?
『国史』(『大日本史』)が未完に終われば、水戸徳川家は天下の笑いもの。遅々として進まぬ編修(編集)に業を煮やした光圀公は、遅筆揃いの不届きな執筆者どもから直々に原稿を取り立てんものと、書物問屋の御隠居に身をやつし、御自ら原稿催促の旅に出た。お供を申しつけられたのは、水戸彰考館で国史の編纂に携わる、おなじみ覚さん介さん(実在)をはじめ、机(デスク)のお吟など名うての編修者。最初に訪れた下田では、目当ての学者の身辺で、なにやら不可解な陰謀が。爆笑必至、痛快時代エンターテインメント開幕!
将軍家と縁続きである“葵の若”こと勝田慎之助は、直心影流小太刀の遣い手ながら、父の死により寺の住職となっていた。が、突然、「上様をお守りせよ」との予期せぬ命を拝する事態にー。諸藩をも巻き込み、将軍の座を狙う御三卿の田安宗武と一橋宗尹。“公人朝夕人”の後見人となった慎之助は御側御用取次の大岡忠光、九代家重を陰で警固する葛西衆らとともに天下の大乱を防げるのか!?
名同心の父をもつ植草平助は、もらい泣きをするほど人が良いが、立身出世に興味なく、とにかく厄介事は御免蒙りたい、一風変わった定町廻りの見習い同心。なんとしても手柄を立てさせ、ゆるい主人を小馬鹿にする同僚どもを見返したいと機をうかがう小者の佐吉におだてられつつ、今日も市中見廻りならぬ、寄席廻りに精を出す。そんなふたりに、ある日とうとう不思議な殺しが降りかかり…。
将軍家綱は家光十三回忌のため日光に向かう。次期将軍をめぐる暗闘が激化する最中、危険な道中になるのは必至。老中阿部忠秋は大勢の警固に加え、剣術指南役の小野忠常とその息子織江緋之介に供奉を命じた。死を賭して凶刃を向ける死兵たちとの死闘のゆくえは。そして御免色里・吉原と徳川将軍家の驚愕の因縁が明らかになったとき、緋之介もまた数奇な運命をたどる。シリーズ堂々完結!