出版社 : 徳間書店
京のほとんどを焼きつくした天明の大火。この火事で宗徳の止住する地蔵寺も焼け失せた。そんななか、路傍の石地蔵に手を合わせる老人と幼い少女。彼らは何を祈ったのだろう。紀州犬の豪にそのことを知らされた奉行所同心・蓮根左仲は羅宇屋の与惣次に石地蔵を見張らせ、女絵師・お琳、宗徳と共に二人の周辺を探る…(「土中の顔」)。お馴染み、闇の仕事師たちが悪に挑む時代連作集。大好評シリーズ第三弾。
七雄が群雄割拠した戦国時代も秦が一頭地を抜き、その勢力支配図を塗り替えようとしていた。強国秦の脅威にさらされる趙の都・邯鄲にひとりの若者が現れた。その名は藺相如。秘宝「和氏の璧」を所望する秦王と渡り合い、無事璧を持ち帰ったことで、にわかに声望が高まった。面白くない宿将廉頗は彼を仇敵視するが、藺相如は廉頗との争いを避け国家の急を優先させる。彼の真意を知った廉頗は自らを恥じ謝罪、以後ふたりは「刎頚の交わり」を結ぶ。趙の国難を救ったふたりの知将を軸に権謀術数渦巻く乱世を描く。
土門岳人は警視庁捜査四課の暴力団係刑事だ。職階は警部補だが、四谷署刑事課勤務時代に誤認逮捕の責任を負わされてからというもの、傍若無人に生き抜いているため、未だに主任にもなっていない。しかし、凶暴な性格で、まるで協調性のない土門が警察に籍を置けるのは、有資格者たちの不正やスキャンダルの証拠を押さえているからだ。その、職場でも裏社会でも“狂犬刑事”と恐れられている土門の情報提供者のひとり、関東仁友会の首藤正邦理事が射殺されたという。半年以上も前から揉めていた奥州連合会の仕業なのか…。
この世でいちばんの謎、それは妻の心!?何かに駆り立てられるように家を飛び出した妻が、大学時代の5人の同級生に配信した、5つのショート・ミステリー。ささやかな日常に潜む小さな軋みが、人生の落とし穴に変わるとき。そこに浮かび上がるのは、見知らぬ妻の素顔…。松本清張賞の俊英が描く異色のラブ・ミステリー。
妻子ある歯科開業医の合田祥一は、学生時代から偽の職業と名前をかたって女性を口説き、その場限りの情交を結んできた。しかも保身のため「三度は会わない」「どんなにいい女でも情を通わせない」を自分の約束事にしていた。由利とも当然、その場限りの関係と思っていた合田だったが、偶然再会してしまい、甘美な肉体を味わううち、合田の心にスリルを楽しむ気持が芽生えてくる。だが、由利が客を装って歯科医院に現れたり、昼食時に待ち伏せされたり、車の中にわざとピアスを忘れられたりするうち、合田の心は…。
愛していながら、自分の愛を隠さねばならない者の切なさのために。愛していながら、いま、愛を交わすことができない者の悲しさのために。愛する者を逝かせなければならない者の痛さのために。愛する者がこの世で息をし、生きてさえいれば、と願うその痛切な想いのために。そのすべてのために…やがて、真実の愛のために。「秋の童話」BS日テレで放映中。
フリーライターの広瀬隆二は、有名代議士の自叙伝執筆の取材で、15年前に失踪した代議士の娘・香奈の行方を追う。転々とする彼女の足跡を辿ると、そこには行く先々で女の魔性の虜になった男たちの姿があった。広瀬はいつしか、会ったこともない香奈に惹かれている自分に気づく…。何から女は逃げるのか?何を女は探るのか?男を虜にしながら…。俊英作家、渾身の書下し長篇ハードボイルド。
耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。はたして時子は、自殺か、他殺かー?気鋭が贈る、長篇心理ミステリー。
岡っ引きにして、一角流十手術に伝わる特殊な小武器“まろほし”の遣い手・銀次は今、咲きほこる紅梅と見紛う痣が花叢のように肌に浮く娘の死骸を目の前にしていたー。先頃から追っている別の事件と同じ筋と直感した銀次は、急ぎ下手人を挙げようと奔走するが、ほとんど手掛かりが得られぬまま、料理屋へ通いで勤めている器量良しの十七、八の町娘たちが次々と失踪してしまう…。書下し時代長篇。
細胞の老化は防げるのか?世界各地に驚異的に長命の人々が点在するという。生命をつかさどるものは何か?テロメア、テロメラーゼ、ES細胞、クローン…古今東西人々が求めつづけた不老不死とは-天才日系科学者を主人公にドイツ、アメリカ、アマゾン、ヴァチカンと壮大なスケールで描くダイナミックなノンストップ冒険小説。
江戸城の奥にあるという、もう一つの秘密の御金蔵破り。一介の素浪人が、綿密な計画を立ててこれを実行する。黒船騒ぎの時代を背景に、坂本竜馬、桂小五郎といった若い幕末の志士が主人公を応援。時代小説の面白さを超えた痛快書下し。