出版社 : 徳間書店
神戸を拠点とし、日本全国に傘下の組をもつ巨大広域暴力団・浜内組。兵庫県警の部長刑事志田司郎は、浜内組潰滅を図る県警本部長の特命を受けていた。折りしも義父で海運会社の重役を務める来水信介と浜内組とのトラブルを機に、組幹部を追跡するが、同僚の刑事を誤射してしまったのだ!職を辞し、妻子とも別れて孤狼と化した志田は、巨大組織を執拗に追いつめてゆく…。直木賞を受賞した不朽の名作。
奥州街道沿い、旧伊達領の北の外れにある、小さな城下町岩井。ここに鉄道が敷かれるという見通しを得た上村屋旅館の若旦那菊乃は、停車場の建設予定地と予測した吸川の埋め立て工事を請け負うよう、父の万治を説得した…。明治初期から大正末年にかけて描かれる、菊乃を中心とした岩井の町の人間模様。人々の絆が町を発展させ、町が人を育んでいく。しみじみと心に響く、傑作長篇小説。
宮沢登は四十四歳、京都に本社のあるN栄を辞めて、いまや宮沢商事という金融会社をかまえる。金融業が扱う商品は「お金」、銀行などは信用が一番大切などというが、売るものを理解していないから信用を売買するなどと馬鹿なことを言うというのが持論。近年、猛烈な勢いで東日本に勢力を広げ始めた宮沢商事は個人小口融資部門に真野清香という女性を迎え、まさに破竹の勢いだが…。
和光銀行の業績はこの二年間、次第に低下していた。ワンマン体制を敷いていた加藤五十八が引退し、矢野原史郎が新頭取に就任してからのことだった。さらにこの業績不振は矢野原の生ぬるい経営方針にあると、マスコミにも中傷記事が掲載されてしまう。これは銀行が世間に初めて見せたアキレス腱でもあったー。業績不振にあえぐ銀行の内部紛争と、そこに巻き込まれた一調査役の苦悩を描いた傑作経済小説。
ロンドンで発生した猟奇殺人事件。被害者はいずれも、レイプ容疑を持つ男性。現場には必ず、一輪の黒い蘭の花が残され、犯行の前日には、聖書の引用とともに被害者の死亡届が新聞に送られていた。敏腕ジャーナリストのベス・ギャンブルは自ら事件捜査のおとりとなるが、いつしか、レイプ犯殺害の容疑をかけられてしまう。無実を証明するため、そして真犯人を挙げるため、ベスの孤独な闘いが始まる。
満洲・大連で探偵事務所「大連新生公司」を開く草壁新生。若い中国人女性が彼のもとを訪ねてきた。名前は周莉。ダンスホールの美人ダンサーだ。奉天に行くと言って出かけたきり行方不明になった恋人の李雄の捜索を依頼に来たのだ。『満洲日報』記者の五十嵐の話によると、先日起きた張作霖爆殺事件の謀略に雇われた中国人のひとりが逃走中らしい。果たして李雄なのか?草壁は、周莉の勤めるダンスホールを張り込むが、支配人の惨殺死体を発見。そこへ李雄が姿を現した!歴史小説の気鋭、トクマ・ノベルズ初登場。書下し長篇歴史ミステリー。
二十年に一度の祭りの生神役として南の孤島を訪れた律子を待ち受けていた奇怪な呪文。何とも不思議な儀式と風習の中、神罰を受けたという謎の死体-成子様に逆らい呪殺されたという…。律子からの連絡を受け、朱雀と後木も島へ向かう。その名も『鬼界ガ島』。新たなる異界に挑む朱雀十五。シリーズ絶好調!孤島を血花に染める連続殺人の謎。朱雀十五が秘められた異界の扉を開く!書下し長篇新本格探偵小説。
週末に毛利家に宿泊した八人の男女。下宿人の新人小説賞受賞を祝ってささやかなパーティーが催されたのだ。翌朝、客のひとりが撲殺死体で発見された。凶器は中庭の傘立てに立て掛けてあった金属バット。容疑者として被害者の大学時代の友人が逮捕された。だが、八人にはそれぞれ一口では言えない心のぶつかり合いがあった。真犯人はこの中にいる!書下し表題作他五篇の傑作推理連作集。
姫子は十三歳。登校拒否の中学二年生。首吊り自殺のために入った山奥で偶然出会った男・阪本が殺人容疑者と知ったことから、事件に巻き込まれる。というより、彼に惚れてしまったのだ。ライバルは多い。公園に全裸死体で放置された女デザイナー、六十歳で元結婚詐欺師の探偵・ウネ子、とくにお婆は好敵手。恋も事件もねじれ、もつれ、姫子にも魔手が…。絶品の語り口調。ミステリーの枠を超えた傑作。
まばゆい光彩を放ち、明治撃剣史を駆け抜けた剣客たちがいた。名人上手と謳われた松崎浪四郎、異形の二刀流を操った奥村左近太、警視庁撃剣世話掛三十六人を倒した高山峰三郎、春風館立ち切り誓願を成就した香川善治郎、そして大日本武徳会本部主任教授を務めた内藤高治など。命を懸けて修行に励み、名を懸けて試合に挑んだ剣士たちを描き、男不在の時代に敢えて男の峻烈な生き方を問う迫真ドキュメント小説。
その部屋には第三者がいたのか、いなかったのか。朝比奈耕作の前に新たな密室の難問が立ちはだかった。強風吹き荒れる夜、マンションの五階から『天井桟敷の貴婦人』と呼ばれる美女が転落死。直後に、どこからともなくドライフラワーの花束が降ってきた。五階の部屋は無人の密室。だが、誰かがいた可能性が消せない。現実離れした服装で観劇に現れ、客席で奇妙な独り言をつぶやく美しき奇人の悲劇を調査する朝比奈は、巧妙な死の罠を解く。しかし、その直後に思いもよらぬ戦慄の結末が…。「軽くてヘビーな」推理小説。
銀行支店長を辞し、北新地に酒場を開業した相沢。歯科医夫人と適当な情事を楽しみつつ、店の方も順調だった。ある夜、息子がつれてきたCGデザイナーサツキに、彼はいつしか心を奪われていく。息子の恋人に惹かれるなんて…しかし彼女の姿は相沢の脳裡を去らなかった。中年男性の狂おしいまでの情念を直木賞作家が濃淡鮮やかに描ききる、長篇情事小説。
曲独楽師・お駒は名人といわれた四代目源水の娘で修業中の身。ある日、風体の怪しい二人連れに尾行された。彼等の狙いは母の形見らしい。仕返しに母親譲りの手口で掏った巾着には、黒い陰謀を暗示する書き付けが入っていた。お駒は途方もない事件の渦中に巻き込まれる。そして、背後には意外な大物が!?平成の“戯作家”登場!時代小説ロマン。
早期退職優遇制度で会社を辞めたが、再就職先の話が宙に浮いてしまった、大手電機メーカー課長の平田。上司にセクハラを受け、やむなく退職した春名さち子。高校中退、転職歴無数、ようやく落ち着いた印刷会社は社長が夜逃げ、バッグ一つで大阪から上京してきた長吉。そんな三人が出会って考えた。自分たちで会社を作り、いろいろなアイデアを売り込もう。しかし…。抱腹絶倒、長篇ユーモア小説。書下し。