出版社 : 徳間書店
「はじめてお手紙さしあげます。個人的なことで、お話ししたいことがございます。広場にレストランがございます。わたくしの名前や顔はおわかりにならないでしょうから、テーブルに、黄色いくじらをのせておきます。毎週土曜日の午後六時ごろ、そのレストランでお待ちしております」亡父に宛てた差出人不明の手紙が始まりだった。廃材から生命を創りだす二人の男の、魂の再生を描く長篇力作。
凄惨な殺戮を繰り返し、全米を震撼させた男、マックス・ソルターが刑務所から脱走し、血に飢えた牙を剥き出した。各地では、生け贄となった市民のボロ布の様な死体が発見されている。犠牲者の中に、ブルー・ヤザキの息子もいた。復讐に燃える、〈賞金稼ぎ〉ブルーは「組織」の高級娼婦をしているマックスの恋人を誘拐することに成功。しかし、「組織」の容赦ない報復と、マックスの不気味な影が執拗に襲いかかる…。SEX、ドラッグ、バイオレンスの過巻くアメリカで、熾烈な殺人ゲームが始まった。
山頂から滑走してきたソリの上に、人間の首が!開校初日のスノーバード・スキー・スクールは大混乱に陥った。が、それは精巧にできたロウ人形だった…。悪質なイタズラに胸騒ぎを覚えた副校長・平田均の予感は的中する。突然の吹雪、インストラクター・秋山の発狂、首と胴が離れた幽霊の出現…。〈このスクールは呪われている〉不気味な噂が囁かれた時、首を切断された生徒の死体が発見された。雪に閉じ込められた山荘を恐怖が覆い、やがて第2、第3の殺人が…。気鋭が仕掛けた大型トリックの妙。
俺は“キツネ”。元ヤクザだ。幼馴染みの玲子と飲み屋を経営している。そんな俺のもとへ古巣の福岡組の徳光が厄介な話を持ってきた。金の入った大型アタッシュ・ケースを預かってほしいと言うのだ。つい引き受けてしまったのが運の尽きだった。福岡組から狙われ出したばかりか、元相撲取りの蒼の海というおかしな野郎の面倒まで見る羽目になり…。元ヤクザと元相撲取りの最強コンビが暴力団を相手に凄絶な闘いを繰り広げる-。ハードボイルドの枠を超えた大型新鋭渾身の究極のエンターテインメント。
巡視船「おおすみ」は、台湾の密輸船を追って尖閣諸島の領海へ入り込んだ。が、そこには中国海軍の駆逐艦「長征」が待ち受けていた。なぜ、中国の軍艦が?ブリッジの緊張が最高潮に達した時、突如、超高速機動艇が出現した-。海上自衛隊が極秘に導入した最新鋭の軍艦「シーデビル」だ。電撃的速攻で「長征」の行く手を阻み、密輸船を撃破。しかし、捲土重来を期す中国海軍は、新たに東海の大艦隊を南下させ始めていた…。不可侵の海域をめぐって、日・中が遂に激突、アジアの秩序は崩壊するのか。
祖母の親戚の結婚式に招待された工藤秋生は、香港に到着したとたん、パスポート泥棒に遭い、迎えに来た朱明に救われた。翌日、今度は警察を騙る数人と黒ずくめの太陽眼鏡の不気味な男に絡まれた。美麗華酒店の祝宴で、秋生は広東人が交わす話題に興味をひかれた。中国が広東省深〓(しんせん)市の大亜湾に建設した原子力発電所の試験運転がはじまろうとしている時、反対運動が再燃。香港からわずか五十キロの距離にあるここは、風水師によれば、龍脈に当たる危険な場所というのだ。超弩級の活劇が全篇を埋め尽す、大型新鋭の傑作。
また一人、奇妙な傷を負った死体が発見された。槍穂高連峰涸沢岳の岩稜ルート、通称「飛騨泣き」で、腹部に横一文字の切り傷を刻んだ転落死体が、4件続いた。どの死体にも傷口に生体反応がなく、明らかに死後のもので、傷の幅は約3ミリ。被害者らに繋がりはなく、長野県警豊科署の道原刑事は、怨恨による無差別殺人と断定したが…。長篇山岳サスペンス。
倉庫から焼跡から撲殺された男の焼死体が発見された。色めき立つ捜査陣。だが、残されていた手がかりは“寺村久作”という男の名前だけだった。男の身元は?戸籍すらない男“寺村”の影を求めて必死の捜査は続く。そこへ女の声で電話があった。身元不明の男が近所に住んでいた“寺山”ではないかというのだ。二人が同一人であるという可能性は高いのだが…(「死者の証明」)。他五篇。
大蔵省事務次官・冬村国治は、財政再建に不可欠として、大型間接税の導入に意欲を燃やし、大蔵の決意を示すため、次の事務次官に異例の人事を用意した。が、冬村の構想に、前首相の梅里が反対の意向を表明した。人事権は官僚の牙城であった。全局長の辞表を携えて直談判におよんだ冬村に、梅里は意外な条件を出してきた(「大蔵省次官室」)。第一線で苦闘する管理職達を描いた異色作品集。
人類が辿り着いた最後の街・世紀末都市。だがそこは文明の廃棄場だった。鳴りしきるサイレン、崩れた裏通りを彷徨う男達、殺し屋、刑事、バーテン、タクシー・ドライバー…。悪魔の薬P2で幻覚を起こした患者が、凶悪犯罪を重ねた。刑事達は街の闇を縫って、P2密売の大物らを追跡したが、目指す相手は次々に死体となって転がっていく。黒幕は?P2蔓延の狙いは?著者初の本格ハードボイルド。
湯島・妻恋坂の親分は、勘もはたらきゃ、渋川流柔術の達人で腕力も滅方強い。下手人を取り逃がしたことがないという凄腕の十手持ちだ。ところが冷酷で非情なお調べが嫌われて、いつしかついた名前が「疫病神」。疫病神呑太大江戸補物控。
長安城内の歓楽街・平康坊に入り浸る顕聖二郎真君。天上世界を統べる玉皇大帝陛下の甥御さま、金闕雲宮を守護する禁軍の総帥たる御身さまが…と相変らず東方朔が心にもない説教をくりかえすある日、魏徴は衛国公・李靖と秘書省の李淳風を訪れた。星辰の図を示した李淳風は「命を革むる。天が、他者をもって李氏を易えようとしております」と告げた。驚天動地、太宗・李世民の世が何者かに覆えされようとしている。現王朝滅亡の不吉な予言であった。シリーズ第3弾を2篇に分けて贈る、井上祐美子が雄渾に描く巨篇。
慶長3年、豊臣秀吉は伏見城で死の床についた。枕許に、五大老・五奉行を呼び寄せ、秀頼への忠誠を誓わせたが、家康はそれを公然と破り、派閥工作を開始した。危機を感じた石田三成は翌年4月、秀頼と淀殿を大坂城に移し、伏見城に残った家康との間に一触即発の緊張が高まった。そんな折り、薩摩の漢方医・入来玄蔵は師・林了敬を訪ねて上京するが、謎の集団に襲われる。奴らは了敬が開発した“麻沸湯”の秘密を手中にしたかったのだ。この薬が「関ヶ原」決戦での、恐るべき兵団創設の鍵になるとは…。
三枝恭子は、城南大学の3年生である。春休みを利用して、射撃部の合宿中だったが、訃報が入った。養父の吉蔵が死んだ、というのだ。故郷・秋田県阿仁に戻った恭子は、吉蔵の死に疑念を抱く。警察は熊による食害死と断定したが、名人マタギの吉蔵が熊に食われるはずがない。調べていくうちに“事故死”当時、入山していた4人のグループに不審な点が出てきた。東京に戻り、彼らの身辺調査をして、吉蔵の死は彼らの手によるものと分かる。恭子は抜群の美貌と九条流の小太刀の技を武器に、復讐の雪豹と化し、敵に迫る。