出版社 : 徳間書店
満50歳の誕生日の当日、石井清が愛用のライフル猟銃で謎の死をとげた直後に警視庁嘱託の尾高一幸は盛岡の彼の自宅を訪れた。尾高は遺産相続の件で和歌山を訪れたとき盗難に遭い、その急場を画家仲間と旅行中だった石井たち一行に救われた返礼にやって来たのだった。証言からも自殺の動機が考えられないことから、不審な死に疑問を抱きながら、尾高は秋田の小松茂男宅に向かったが、そこでも異常な事故死の報が待ちうけていた…人間の善意が一瞬にして悪意に暗転、殺意の矢が放たれる恐怖を練達の筆致で描く書下し。
この世には2種類の人間がいる。死んでいることに気づいている者と、そうでない人間の、2種類。自分の死に気づいている者は、当然ながら死んでいる。死んでいることがわかっていない人間は、生を信じるがゆえに、やがて死を受け入れざるを得ない。ようするにこの世は死者でいっぱいだ。
亮が自分の心に住む狼の存在に気付いたのは、中学に入ってからのことだ。ある時、腕力が自慢の上級生に喧嘩を売られた。いきなり殴られ,頭に血が上った亮は向かっていった。そして叩きのめした。同級生たちが止めなければ、亮はその上級生が気を失なうまで殴り続けたに違いない。心に狼の牙を宿した男たちの劇的運命。名手が情の香り豊かに放つ書下し長篇。
警視庁捜査1課の大谷努警部と部下兼恋人の香月弓江刑事は、指名手配中の小山泰の愛人宅を車の中で見張っていた。そこへ突然現われたのが大谷を溺愛する母親である。追い払われた弓江は、近くの神社で倒れている少女を発見した。少女の掌には「建介」と「呪」の文字が書かれていた。しかも意識朦朧の中、少女の口からは「許して…。建介さん…」と謎の言葉が-。同じ頃、人気歌手の田崎建介が六本木のディスコで急死し、事件は意外な方向へ…。大人気のトリオが難事件に挑むユーモア・ハードボイルド第4弾。
虚の中に、その人影はあった。長い黒髪に白磁に似たほそい肩、さやさやと絹ずれの音を放つ美貌の漢こそ、恐るべき炎帝の復活の姿であった。「長安に火を放つ」彼は冷やかに命を下した。西方の拝火教の寺院・〓(よう)祠にはじまって、太極宮内を紅蓮に染める。そして地上の霊気を一身にあつめて天界へ昇り、玉帝を倒すことが、真の狙いであった。顕聖二郎真君は多くの天兵を傷つけ、万里の馬をうばって下界へと出奔し、玉帝の怒りに触れたことを彼は承知していた。向かう所に敵なし!天界と地上は炎帝の掌中に落ちるのか-。
「金だ。金だぜ!」むささび小僧が駆け寄って見る。甲胃も、槍も、刀もみんな黄金であった-。風魔小太郎率いる5人衆は越前北ノ庄城に潜入した。結城家の財宝と新式連発銃の破壊が目的だ。越前藩主松平忠直は、父祖伝来の財宝を軍資金に新式銃を密造し、天下を伺おうとしていたのだ。関ケ原から20余年、将軍家、御三家、名だたる外様大名を巻き込んで時代は再び風雲急を告げようとしていた。風魔、柳生、白山忍者…、武闘集団が繰り広げるデス・バトル。鋭刃閃く本格時代アクション登場。
石神探偵事務所の野上英太郎の所に、突然、少女が現われて“両親を殺した人を捕えて”と強談判。数日後のこと、江戸時代から続く名門遠島寺家の当主で、今は屋敷を改造して旅館の主となっている重義が、野上を訪ねてきた。日く。“人殺しの汚名をすすいでほしい”と。実は先の少女は、重義の兄夫婦の娘で、養女としてひきとっているのだが、その兄夫婦は不慮の死を遂げていて、彼にその疑いがかかっていたのだ。助手の俊介少年とともに、調査にのりだした野上は、竜が棲むという屋敷の庭園で、不可解な怪事件に遭遇する。書下し長編本格ミステリー。
長野県松代観測所が、南米チリ沖の微動地震をキャッチした。津波研究の第一人者である気象庁地震課の紺野久光は、過去の大惨事、三陸津波を彷彿して戦慄を覚えた。紺野は、美しく聡明なTVキャスター瀬田美里の助力を得て、深夜番組で警告のテロップを流したが、その頃、ハワイ、グァム、東京ディズニーランド、芝浦、横浜などで何も知らずに過ごす人々の許に、危機は着々と迫っていた。書下しパニック小説。
札幌女子大学旅行研究会はJR北海の〈レジャーエクスプレス〉を利用した弘前りんご狩りツアーを計画。女子大生87名を乗せ札幌を出発した列車は函館を経て、廃止が決まった青函連絡船で青森へ向かう予定だった。ところが、JR北海とJR東部日本にこの一行を列車ごと誘拐したとの脅迫状が届いた。八戸へ上陸させ、他の列車のダイヤ変更を要求する犯人の目的は一体何か?長篇本格トラベル・ミステリー。