出版社 : 徳間書店
「4つの村から神が来る花咲、鳥啼、風吹、月影『四神』たちの崇りなり我、秘密を知り過ぎたり」。10年前の夏、謎の首吊り自殺を遂げた父、耕之介が残したメッセージが、朝比奈耕作を不可解な事件へと導いた。郷土史家の耕之介が30年前に訪れていた鳥取県の山深き寒村、花咲村。舞い散る桜の花に覆いつくされた神秘的な山里で、身も凍る伝説が現実となってゆく…。錯綜する情念のはざまで朝比奈は、自らのルーツと父の影を追い求める。謎が謎を呼ぶ「惨劇の村」5部作第1弾。著者渾身の大河連作ミステリ。
総トン数一万二千トン、五ツ星の外洋豪華客船、洋華号はフィリピン内海をめぐるトロピカル・アイランド・クルーズに向った。ところがマニラ出航の翌日、ヌーディスト島に上陸した船客のうち、女子大生の松山美江子が全裸死体で発見された。ツアー・ディレクターの丸浜公一は、通訳の山本悠子の話から歓迎ディナーの深夜に美江子が売春ツアーに関った疑いを持つ。その後も奇怪な事件が…。長篇ミステリー。
源氏物語の完成に向けて苦慮し、藤原道長の強引な求愛に懊悩する紫式部。一方、式部の娘賢子は母の厳しい教育を受け、侍女らにかしずかれて成人するが、友人も少なく孤独の身であった。後見もいない賢子の将来を思いやり、母娘ともども皇太后彰子の許へ出仕するようになる。やがて、和泉式部、赤染衛門らとの交際が始まり、さらに、貴紳顕官の子弟たちの誘惑が待っていた…。長篇歴史小説。
百万に一つの失敗もないという“百万分の一のネコ”。畏敬と嫌悪のいり混じった通り名が、D種特務捜査官である彼女の勲章だ。存在自体が極秘扱いにされるD種犯罪者を狩り出す任務のため、ネコはグラビアという見棄てられた鉱業惑星に。獲物は二年前の惑星プレノリアで起きたテロ事件の首謀者“大鎌”。ネコと相棒ノイズに突如襲いかかる姿なき死の竜巻…。大鎌のサイ能力が炸裂する。サイキック長篇。
羽田空港の老入国管理官・的場の目前で、台湾人の入ったトイレが白煙を上げて吹っ飛んだ。一方、調布飛行場を飛び立った小型機の撮影した高精度の航空写真には死体らしき白い影が写っていた。連絡を受けた航空検察官の伊吹卓は、多摩丘陵に走り、身元不明の東南アジア人の死体を発見。マスコミを通じて的場から報告を受けた伊吹は同時に台湾から入国した四十代の東南アジア人を追う。航空サスペンス書下し。
武辺に生きる奥義を「五輪書」に託し、巷説、幾多の決闘譚を生んだ剣豪・二天宮本武蔵。真筆の襖絵は今日も墨痕鮮やかだが、その生涯に謎は多い。足利将軍家指南・吉岡憲法を蓮台野に屠り、洛東一乗寺村下り松で吉岡一門の挑戦を一蹴した“武蔵”像に、二つの若き影が重なる。播州浪人・岡本武蔵、作州浪人・平田武蔵。二人の剣客の交錯するところ、“武蔵”の足跡が記されていった。五味剣豪小説の代表的名作。
滝口康彦「春暗けれど」、山岡荘八「念志ヶ原の妻」、多岐川恭「異端の三河武士」、永井路子「関ヶ原別記」、戸部新十郎「放れ駒」、中山義秀「落日」、山田風太郎「羅妖の秀康」、菊池寛「忠直卿行状記」、新宮正春「介殿異心あり」、戸川昌子「千姫狂い髪」等十人の作家によって、戦国乱世の最後の勝利者であり、徳川三百年の幕藩体制の基礎を確立した武将、徳川家康と彼の周囲を彩った人間群像を描いた傑作アンソロジー。
両親を亡くし、伯父の家に引取られた北野晶夫は、細っそりした強靭な肉体と女が息をとめるほどの美貌の持ち主だった。そんな彼が熱中しているのは、モーター・サイクル・レースだった。浅間の第1回日本モーター・サイクルのレース出場を皮切りに、いくつかのレースで頭角を表わし始めた彼の夢は、二輪車で世界を制覇することだった。スピード、暴力、セックス、激しく孤独な青春を描いた力作巨篇。
端整な鼻梁に銀縁眼鏡の青年は、ロールスロイス・シルバースピリット2を亜熱帯の自然が繁る〓@4FAF旗山の上り坂をなめらかに滑らせていた。斜面に突きささるように聳える高級マンションと香港島北岸の市街を見下す山頂にかかったとき、彼の意識に不快な感覚が走った。殺気。目前に60階を越えるビルの最上階がロールスと同じ高さにあった。バックファイアに似た音が響いた瞬間、ターコイズブルーの車体が横転した。運転者は、ビンセント・青-青龍だった。連続する富王狙撃、特務機関が入り乱れる霹靂の書下し第2弾。
ドサッ。結城凱大尉の車のナビゲーターシートに何かが落下した。純白のドレス、長いヴェール、手にしたブーケ、花嫁だった。「ほら、青」体を起こした花嫁は信号を指差し、凱は思わずアクセルを踏んでいた。バックミラーには血相を変えて追ってくる新郎と参列者たち。その直後、どこからか消音銃が追跡者の肩を裂き、後方へ吹っ飛ばした。「あーあ、貸し衣装なのに」プロの業を見せつけた彼女は「高速機動特殊執行部隊のランドルフ大佐」と名乗った。彼女こそ高機が誇る(豹の瞳)だった。新鋭の書下しコンバット活劇。
柳下二匹先生は、女子大の講師である。ホラ吹きでのんびり屋だが、なかなかの博識で、なにより自然が大好きである。釣りや山歩きを通して鍛えられた観察眼や洞察力は、時に刑事も真青の鋭どさを発揮する-。埋められていたはずの死体が消えた。柳下達が熊野古道で出くわした事件は、始めから不可思議だった。さらに、美人陶芸家が殺され、滝につるされた状態で発見された。地元の警察は、捨身行という荒業を行い、山を駆け巡るという修験者に疑いを抱いたのだが…。
八ケ岳の岩場から、絞殺された若い女が投げ込まれた。彼害者は東京のOL西岡万沙子。事件を追う諏訪署の道原刑事は、同じころ万沙子の親友の塩谷涼子が、木曽川で水死体で発見されたことを突き止めた。しかもその前年、涼子の弟勝史までが木曽御岳で遭難死していたのだ。3つの事件に関連はないのか。だが3人につながる人物には、鉄壁のアリバイがあった。長篇山岳ミステリー。
ケン・コズマはウォドロン軍の戦闘兵30人を指揮する4級戦闘士だ。ジャハラでのザルカンダ軍との戦闘で勲功をたて、生れ故郷テルミナに帰還したケンは、突然憲兵局に逮捕される。ウォドロン人には絶対許されない、戦いへの懐疑を抱いたためだ。軍事法延が開かれ、懲罰兵士として、最悪の地獄の戦線ザンタナに送りこまれたケンを待ちうけていたものは…。銀河を舞台に描く壮大なロマン。書下し長篇。
ティモシー・コーンーくずれたロフトに猫と住み、雑巾のようなスーツを身にまとう。ウォール街の企業情報会社で働く彼は、地下鉄で轢死した同僚の仕事を引き継ぐ。大手不動産会社の内情調査だ。やがて、近親相姦と麻薬に溺れる経営陣の、銀行に対する不審な動きが浮かび上がる。表題作のほか人工受精クリニックで起きた連続殺人を追う「精子銀行の謎」を収録。病める現代を鋭く抉る傑作ハードボイルド。
ごつう儲けるを合言葉に21歳の女社長の肉体に忠誠誓う「ごきぶり商事」の面々。3人の常務にドヤされながらも金儲けのアイデア絞り出す第4常務のぼくは窮地に立たされてしまった。社長はんと恋人の登志子はんが同時に妊娠したのだ。ところが西成暑の瀬目田印刑事に乗せられて、新郎1人に新婦が2人という史上初のステレオ結婚式を挙げることになってしまって…。連作ユーモア・ピカレスク。
尾崎士郎「墨股一夜城」、南条範夫「初対面」、中山義秀「四季の小車」、山岡荘八「売ろうもの関白」、杉本苑子「耳塚のすみれ」、田辺聖子「淀君と北政所」、長部日出雄「利休の眼」、吉川英治「大谷刑部」、井上靖「真田影武者」、五味康祐「切腹」-。草履取りから豊太閤太政大臣にまで成り上った天下人秀吉を中心に、彼を取巻くさまざまな人間群像を10人の大家、実力派が華麗に描いた傑作アンソロジー。
花の女流シナリオ・ライターを目指す小林まり子は、零細テレビ製作会社の一年契約社員。超人気キャスター宇奈月冴子のイブニング・ニュース・ショウのスクリプターをやらされている。その冴子が本番前に局のトイレで全裸の首切り死体で発見された。そして冴子と噂のあった後藤プロデューサーも。視聴率アップを狙う局プロデューサー中谷は番組に霊能者の大空幽子を出演させ犯人を推理させる。書下し長篇。