出版社 : 徳間書店
硫黄島沖で、アメリカ原子力空母「カール・ヴィンソン」に、急浮上をかけたソ連原潜「V・K・ブリュッヘル」が激突した。原潜は沈没、空母はメルトダウンの危機を孕んで横須賀ドックへと向かった。日本政府は海上自衛隊の最新鋭潜水艦「わかつき」に、空母の寄港阻止命令を下す。好機に乗じ空母撃沈を狙うソ連艦隊と米艦隊の攻防の陰、「わかつき」は静かに空母に近づきつつあった。海洋戦略サスペンス。
十七世紀、明朝末の中国。すでに朝は政事に節なく、異民族・満撻子の侵入はほしいまま。野には土匪あふれて、うちつづく凶作に貧窮した民心は、朱家明朝を離れた。反官蜂起した義軍十三家。なかに軍律厳しく、民衆救済を至高の軍紀とした魁雄一人、名を李自成・闖王。だが朝廷軍の各個撃破策に、闖王、孤塁を守るも、ついに潼関南原に壊滅的敗北を喫した。三国志に並ぶ壮大なスケールで描く中国歴史巨篇完訳。
官軍の重囲を、万死に一生を得て突破した闖王軍は、天険の地・商洛山中に兵馬を休めた。かつて十万を誇った軍勢もすでに数百騎。だが民心はすでに朝廷を離れたと信じる李自成は、食糧の欠乏と闘いながら練兵を重ねた。朝廷に投降した義軍に再蜂起の檄を飛ばした李闖王は、合従連衡の秘策を胸に、約束の再挙の日を待った…。中国近世史に燦然と輝く英雄を活写する歴史巨篇完結篇。
俺は、関東テレビの揉めごと解決屋・宇賀神邦彦、通称トラブルバスターだ。メキシコ・ロケの途上、国境の南グァテマラまで足をのばしたカメラマンが帰国後、取材したビデオテープとともに行方不明に。事件を追って、宇賀神邦彦が行動を開始した。パートナーは、なんと16歳の女子高生。
白川美穂、28歳。サッシメーカーの社長秘書で、昨年入社した宗方時彦と愛人関係にあり「非婚」時代を楽しんでいた。ところが、社長がガンで入院してから、美穂の身辺はあわただしくなった。入院中の社長に、美穂は肉体を提供し、また社長代行とも親密になって社内の中枢に迫る。他方、社長代行に敵対する専務派工作には時彦を使い、30代での女重役を夢見る。しかし美穂は、やはり女。スゴ腕の男の技に虜になったり、純情男にほだされたりで、危険な立場に陥るが、自慢の肉体勝負で斬り抜け、目標に近づくが…。
宇部慎吾42歳。帯広の陸上自衛隊第5師団対戦車ヘリコプタ隊の二佐である。勤続20年のベテラン・パイロットの宇部にその日、「日々新報」という全国紙の女記者・安達聡美が取材にきた。濡れた眸をもつ美しい女の誘いに宇部の心は熱く震えた。翌日、札幌丘珠の北部方面航空隊長から呼び出しがかかり、彼の中隊と鹿追の戦車大隊第1中隊に香港視察の命が下った。しかしヘリコプタ隊75名、戦車隊100名を乗せたLST『おじか』が釧路港を出港すると2隻の護衛艦の他に『はるな』『あきづき』等5艦も加わった。この物々しさは何故か。書下し長篇戦争シミュレーション。
大手鉄鋼メーカーの部長代理・堂本三郎は50歳。会社の高齢者対策で窓際に追われた中間管理職である。その彼に韓国企業から、土日の週2日、ソウルで技術ノウハウを講義する人材を、との依頼があった。講演料は1日数十万円。堂本の紹介で後輩の藤木がこの「ウィークエンド・トリップ」に出かけるようになって1カ月、会社は突然、社員のパスポート提出を求めた。会社の“卒業”するための企業問題小説。
桜子と小梅は和泉坂病院を訪れた。性格的には対照的な二人だが、社会の縮図ともいえる病院で、自分自身を試してみたかった。素直な心で人のために尽くしてみたい。親身になって患者の相談にのる一方で、青年医師との恋に悩む二人。友情の危機。院内での葛藤。それでも天使のような心は失いたくなかった…。医療ソーシャルワーカーをめざす、若い女性の友情と恋愛。生命とは何か、自らの悩みを克服しながら成長する鮮やかな青春。
警視庁捜査一課の美人刑事・今野真弓は殺人事件発生の報らせを受けて、部下の道田刑事と原人の骨を展示中のM博物館に急行した。現場には作業服姿の若い女が倒れており、首筋に小さなとげのようなものが刺さっていた-。猛毒を塗った吹矢による毒物死らしい。しかも死体のそばには原人の骨が人間の形に組み合わせて置かれ、手にあたる部分に吹矢の管が…。犯人は原人の骨?真弓の夫で泥棒の淳一はさっそく真相究明に動きはじめた直後、セーラー服の謎の少女が運転する車にあやうく轢き殺されそうになり…。ユーモア・ピカレスク。
男たちは地下駐車場に潜んでいた。赤いフェラーリのドアを開けた瞬間、殺気がきた。助手席の側に若い男が立っている。手には飛び出しナイフ。「人違いだ」と言って、車に乗り込もうとした時、背後から衝撃がきた。首筋に激痛が走り、思わずコンクリートのフロアに両膝をついていた。内ポケットから札入れが抜きとられ、めった打ちにされたらしい。記憶がとぎれ、目覚めた時には、襲ってきた2人組の男が血まみれで倒れていた…。東京都水上区-東京湾埋め立てで出来た人工都市を疾駆する本田慈英にまつわる秘密とは。書下し長篇ハード・アクション。
勇壮な木落としで知られる日本三大奇祭のひとつ、信州諏訪大社の御柱祭。祭のハイライトの木落としで、巨大な御柱が暴走した!折しもその日、東京大田区の諏訪神社境内で男の変死体が発見される。境内の御神木には御柱祭の儀式に使用される鳥のかたちをした薙鎌が打ちつけてあり、男の髪には赤い風車が2本差してあった…。警視庁捜査一課の志垣警部は、和久井刑事と共に事件の洗い直しを開始する。被害者の靴から採取された土を手掛かりに2人は信州へと旅立った。次第にその姿を現わす驚愕の事実。大好評第3弾。
めくるめく閃光が、霧の向こう側に巨艦のシルエットを浮かび上がらせた。「あいつを見るのは10年ぶりだが…」護衛艦「はるな」の艦長は呟いた。ロシア太平洋艦隊の戦艦「ヴァツーチン」の巨影だった。全長400メートル、最大幅50メートル、主砲は58口径25インチ砲9門。『鋼鉄のレヴァイアサン』-。西側の軍事評論家は、畏怖と讃嘆を込めてこう呼称した。199X年1月10日何故、日本海竹島北東海域に出現したのか?日米露が威信を賭けて激突する、これが超絶の地獄戦開始の口火だったとは。傑作書下しシミュレーション戦記。
豊前船島、すなわち巌流島で佐々木小次郎を打ち倒して1年半が経つ。宮本武蔵は、高野山を目指し紀ノ川沿いの道を登っていた。山には「御前」と呼ぶ良覚上人がいて、武蔵は心の空虚さについて問答をしにきたのだ。そして剣2刀を上人に預けて丸腰になった武蔵は、柔の始祖といわれる竹内道場の門を叩く。そこで武蔵は高野山の武装僧侶団に襲われる。武蔵が良覚上人を殺し、山の「宝」を盗んだという理由であった。風雲急を告げ、大坂冬の陣がまさに始まろうとしている折、武蔵の身辺も慌ただしくなって、決断を迫られる。書下し長篇時代アクション。
河上の花都・開封。春3月の空に客を引く大道芸一座の声が響いていた。「さあさ、都で今、評判の、舞剣の花娘の双剣だ。こんな見物は、めったに見られぬ。ご用とお急ぎでない方はとくとごろうじろ…」。緑の毛氈の中央に立つのは、ひとりの少女だった。風を切り、左右交差する真剣の刃。固唾をのんで見守る観衆のなかから紋身の酔漢が襲ってきた。そのとき、正体不明の白面郎と白載星と名乗る若者が、彼女を救った。数奇な運命の糸が回わりはじめる、これが第一歩であった。新星・井上祐美子が放つ新シリーズ巨篇。