出版社 : 徳間書店
野上英太郎と同居することになった俊介とジャンヌは、中学の担任松永麗子先生の訪問をうけた。兄の死の真相を調べてほしい、ときりだした彼女の話は-。20年前の夏、兄・宏が帰宅途上に行方を絶ち、脅迫電話がかかった。身代金を工面し受渡場所へ父親が向ったが、犯人は現われず、警察への通報を詰る電話を最後に連絡は絶えた。宏の左薬指が発見されたが、指には生活反応がない。1年後、街の北端、夜叉沼での幽霊騒ぎから、宏と思われる白骨死体が出た。-俊介たちは20年前の殺人犯捜しに乗り出す。
元宵すなわち正月15日の夜は、「都鄙を通じて家ごとに意匠を凝らし巧緻を極めた燈篭を無数に懸け連ね、月明と光を争ふその火影を追うて今日を晴れと着飾った子女老若が夜もすがら歌ひ且つ踊って暁に及ぶ」(石田幹之助)という。羅綺街に満ち塵土香わしいなかを二郎真君もまたひとりの佳人を連れて観燈を楽しんでいた。鴛鴦の好一対。そこへ小珊という平康坊の妓女が声をかけてきた。束の間の立ち話の後、二郎が追うと佳人の姿はなかった。翠心が消えた。意中の女を追って冥界へ旅立つ二郎の前に何が?会心の第5弾。
「大正6年8月28日に本艦の工事を開始して以来、今や艦隊の完成を見るに至った。ここに、本艦を『長門』と命名するものである」大正8年11月9日広島県呉軍港で“鋼鉄の浮かべる城”は誕生した。日本海海戦以来、僅か13年、国防の基本を海として強力な戦艦部隊でこれを守るという構想-戦艦8隻、巡洋艦8隻を基幹とする88艦隊計画が樹てられたのである。『長門』に続く15隻、海軍の夢は着実に実現しつつあったが…激動の世界史に抗う東洋の島国にとって、これは苛酷な試練の序曲だった。大型新人の渾身の大作。
柔術の達人で、文人でもある空中楼夢裡庵先生は、れっきとした八丁堀定町廻り同心。正月早々、絵師が殺された。盆の窪に突き立った矢が致命傷だが、状況が一風変わっていた。壁に立てられた絵馬の人物が、今まさに矢を放った姿なのだ。手の込んだまねを、と渋い顔の先生だったが、ある書物に、「絵の人形に矢を射はなさす術」という文章を見つけたのだ。まさか…。直木賞作家の、洒落た連作七篇。
平成の太平の世の中、人びとの欲望を満たすあらゆる商売があふれています。ところが、宣伝もしないし、電話帳にも載っていない、かといってマル暴関係でもないという「隠れ商売」がひっそりと、繁盛しているのです。あなたや、あなたの隣人の、人に言えない悩みや、ささやかな願いをかなえてくれるそんな商売ー元祖再生屋、元祖アリバイ屋、親切屋本舗、貸し婆屋…。さあ、あなたも本書の扉を開いて下さい。
19世紀末、フランス統治下のベトナム。政府は民族独立を掲げる神出鬼没のゲリラ〈九頭の龍〉に手を焼いていた。彼ら一味を殲滅せんとする仏大佐メニュリーは作戦「オペラシオンU」を計画、伝説的な工作員モンギランを起用する。“U”とは一体何を意味するのか?一方、日本帝国海軍は新鋭巡洋艦「畝傍」を仏造船所に発注、軍備増強を目論む。それを阻止せんとする清国工作員…。長篇海洋冒険小説。
シナリオライターの卵で、自己の霊能力に目覚めた小林まり子。ブルートレイン『北斗星4号』の中で、霊交信を受け、スーツケースに入れられて沼に沈められた寺田正和の死体を発見する。寺田の友人、ロックシンガーの長崎祐介から寺田殺しの犯人を霊視で見つけて欲しいと依頼されるが…。鏡の中に現れる浮遊霊の工藤チャンや、捜査一課の美男警視・一条秀也とともに、霊感探偵が始まった。書下しシリーズ。
愛車スカイラインGTRを優秀なメカニック・新村芳実の力を得てN1仕様に改造し、六時間耐久レースに出場した瀬木治男・北路滋チームは、好成績をあげてレースの余韻に浸っていた。その興奮冷めやらぬうちに、瀬木はニスモの高田肇の誘いで日本のトップ・ドライバーを相手にするインターTECレースに参加することを決意した。グループA仕様に改造するにはかなりの費用が必要だったが、スポンサーが現れ、金銭面もクリアに。アマチュアの夢を乗せ、富士スピードウェイを、再び瀬木・北路チームが疾駆する。
若い女性がUFOに殺された。数々の伝説に彩られた那智とはいえ、石倉峠で起こった事件は、実に不可思議な殺人だった。被害者はAGSのコネクティで、UFOと交信するために峠で夜を過ごしたという。窒息死だったが、暴力を加えられた跡もない。AGSの指導者は“宇宙的な強い力に打たれたのだ”と主張したが…。大雲取越えの予定を変更して捜査に乗り出した柳下二匹だったが、新興宗教めいたグループに、持前の洞察力も鈍りがち。苦悩する柳下を尻目に、那智の浜でさらに悲惨な殺人が。好評シリーズ第2弾。
島岡辰治は腕利きの胴師だ。それも手本引きの、本物の腕利きなのだ。胴師は、賭場の主宰役。その腕次第で、親分の儲けは天地の差だ。謙蔵親分の二号とデキた辰治は、静岡から東京へと流れた。先々で、縄張り目当ての出入りと、オンナがらみのもめ事。一宿の恩もあれば、渡世のしがらみも重い。頼れるのは、自分の腕っきり。やっと堅気の女子大生と所帯は持ったが…。若き博徒の半生を描く長篇問題作。
戦国末期の近江国。浅井長政に仕える藤党虎高の次男・与吉は、十三歳で上意討ちを果たし、高虎を名乗る。元亀元年、初陣に破れた高虎は近江を出、浪々の末、織田信澄、次いで羽柴長秀の下へ。播磨攻めなどで手柄を立てるも、戦後の処遇を嫌い再び都を去る。織田、豊臣、徳川と、次々と主君を変え、終には伊勢・伊賀三十二万石の大名となった戦国武将を描く傑作時代長篇。
北一馬は米大陸を根城に、愛機DC3を駆る運び屋だが、なぜか事件がついて回る。今回もアマゾンの奥地で、トラブルだ。受け取った運賃と愛機が盗まれ、おまけに日系の少女の父親捜しまで背負い込んでしまった。すべての元凶は、インディオが隠したという黄金都市にあった。その財宝を狙って、諜報組織やシンジケート、それに革命ゲリラや山師までがからんで、局面は予想外な展開に…。長篇冒険シリーズ。
富豪の実業家がハイテク武器によって惨殺され、強大な破壊力をもつプラスチック爆弾が盗まれる。時を同じくして海洋では、ミサイル28基を搭載した原子力潜水艦がハイジャックされた。合衆国の元特殊工作員キンバリンが捜査にのりだした。2つの地点で起きた事件が結ばれるときー、それはヨハネ黙示録さながら人類滅亡を告げるラッパが高らかに鳴るときだった。壮大な規模で展開するアドベンチャー・スリラー。
陳友諒、そして私塩密売人出身で平江(蘇州)の富を手中におさめた張士誠-である。元朝がすでに形骸化し、その権威が地に堕ちたいま、長江を制した者が中華の覇者となることは、誰の目にも明らかであった。朱軍幕下には同郷・淮西出身の猛者がひしめいていたが、智謀の将と呼べるのは、わずかに李善長と憑国用のみであった。その憑国用の強い懲慂により、朱元璋は三顧の礼を尽して劉基を帷幕に迎えいれる。漢の張良、蜀の諸葛孔明にも比される天才軍師・劉基を得た朱元璋は、彼の言に従い、西の宿敵・陳友諒を討つべく、戦いに臨む。
遠山謙一は、神戸を本拠地に直系団体110組、構成員約1万2千人という膨大な組織を誇る2代目福原組の直系組長で、3代目を背負って立つと見られていた。彼は経済力の強い組織こそが抗争に生きぬくと信じ、多くの企業舎弟を持つ悪だ。遠山の右腕の企業舎弟小原勇治のシノギは巧妙で、企業倒産整理、政治家の利権がらみの事件物件から企業合併、一流商社への食い込みなどで、巨額の黒いアングラマネーを手中にする。その資金力をバックに、遠山は関東への進出を企てるが、背後に反対勢力の巻き返しが迫り…。
春4月、桜花咲き乱れる魔性の季節が再び廻りきた。「花咲村」の事件からちょうど1年を数えるその日、多くの観光客で賑わう京都天竜寺の境内で白髪の老紳士が刺殺された。「こう…朝比奈君に伝えてくれ…決して…信じては…いけない…と」-。推理作家・朝比奈耕作のよき相談役であった尾車泰之教授の最期の言葉だった…。4つの「惨劇」をつなぐ糸は断たれてしまったのか。朝比奈をうちのめす、事件の真相とは?著者渾身の5ケ月連続書下し「惨劇の村」シリーズ。有終の美を飾る堂々の完結篇。