出版社 : 徳間書店
巨艦の群れは、よろばうように入港して来た。3隻の空母を除き、排水量1万トン以上の艦で、無傷のものは1隻もない。爆炎になでられ艦上構造物は完膚なきまでに破壊されている。マーシャル沖海戦で壮絶な戦死を遂げたキンメルに代わって米太平洋艦隊司令長官に就任したチェスター・ニミッツは、この無惨な帰還を復仇の炎に燃える眼で眺めていた。「黄色いならず者め!」日本の勝利は条約違反して18インチ砲戦艦を投入した卑劣な行為によるものだ。太平洋に敵影なし-日本は大勝の熱狂に酔っていたが…。傑作第2弾。
第4次十字軍による大略奪を受けたビザンツ帝国の都・コンスタンティノープルがギリシア人の掌に戻ったのは1261年。だが、黒海交易の覇者ヴェネチアとジェノアの敵対に宮廷内の権力闘争を加え、外にはトルコ帝国の脅威に晒されて帝国千年の都は朽ちゆく巨大な老木の運命を辿っていた…。ギリシアの貴族アレクシオスは背後に尾行者の影を感じながらも、帝国復興の野望に燃えるゲオルギウスから皇帝の補佐と政略結婚の密談をもちかけられた。戦乱と黒い謀略が渦巻く荒廃の帝国に巣喰う魔手が。
特別麻薬捜査官・八坂剛は、暴力団の大金を奪った非情な殺人者・中山を新宿高層ビルに追いつめながら、相棒を殺され逃亡を許してしまった。中山は米国の麻薬王ルーファスと接触し、独自のルートを築く腹だ。殺人者を追って米国へ飛んだ八坂は、シカゴ市警のタフガイ刑事、ジムとマイケルとともに型破りで凄絶な捜査を展開した。美貌のダンサー・奈々が市警に助けを求めてきた。ルーファスの秘密を握るマイクロフィルムを入手したため、命を狙われているという。バイオレンスの気鋭が日米刑事の破天荒な追跡を描く。
夫の出張中、クラス会で再会した同級生とベッドを共にした律子。土曜の昼下り、テレクラで知り合った男とホテルへ行くさとみ。かつての上司と、かつてのオフィスで激しく燃えた恵子。かまってくれない夫の代りに、後輩社員を誘惑する朝子。映画館で隣り合った男と、その日のうちに一夜を過した典子…。うちの女房にかぎって、と安心している貴方に贈る人妻不倫スナップ集。
初代清衡は波瀾の人であった。藤原秀郷(俵藤太)の血を引く父・経清は、蝦夷の娘を娶り、清衡を生した。だが前九年ノ役に義兄・安倍貞任と結んだ父は敗死、母は敵方の清原氏に再嫁した。清衡は父の仇を養父としたことになる。続く後三年ノ役。清原氏に仇を報いた清衡は、藤原氏に復帰し、父、養父双方の遺領をその支配下に置いた。奥州藤原王朝の草創であった。巨匠独創の史観で描く歴史巨篇。
藤原王朝の礎を据えた波瀾の人・清衡に対して、2代基衡は重厚の人であった。父の遺業継ぐ30余年の治政は、王朝隆盛と重なる磐石を誇った。荒む京を逃れ、陸奥に下向した貴顕を迎えて、政体は整い、軍備は拡充された。蝦夷に胚胎する内乱の兆しも間髪をおかず潰された。一丸の奥州王朝に、もはや朝廷からの容喙の余地はなかった。仏国土建設の父の遺志を体現すべく、基衡は仏閣建立に邁進した。歴史巨篇。
元治元年夏、京・祇園の料亭に集った勤皇浪士の中に、小柄で色白、剃髪頭の物静かな男がいた。河上彦斎ー近藤勇、中村半次郎と並び恐れられた剣客だ。この夜の会合で、“佐久間象山を暗殺すべし”が多数を占め、ならば自分が、と彦斎は自ら決していた。宴がひけての帰途、彦斎は若い芸妓に声をかけられ、妓の自宅に誘われる。そこで彦斎は奇妙な依頼をうける…。巨匠の時代長篇。
福島県郡山の山林で女性の他殺死体が発見された。三日後、福井県九頭竜湖“夢の架け橋”爆破事件での損傷著しい死体。ともにルポライター森口麻衣子だと断定された。報告を受けた鉄道警察の高杉春雄警視が捜査を始めると、今度は徳島県小鳴門橋爆破の知らせが入る。JR新四国本社には犯行声明と瀬戸大橋爆破予告の脅迫状が届いていた。先の事件との繋りに気付いた高杉は犯人割出しを急ぐ。
首筋に黒い索条痕を残した死体が日本橋浜町公園の灯りの下でころがっていた。34、5歳で背広姿の男性。現場から二つの人影が逃げ去るのを目撃し110番したのは、警視庁嘱託の尾高一幸だった。被害者は東都大学講師で、長崎県対馬出身の独身と判明した。否応なくこの事件に協力することになった尾高は、彼のマンションを調べると、奇妙な赤い米粒が散らばっているのを発見する。そして広島在住の親族に報せると、3日前に兄が転落事故死、父親が首と胴を日本刀で切り離されて殺害されていた…。鬼才の書下し長篇。
照和21年3月3日、後世は雛祭り。大高首相は高野五十六とともに、無事帰還した前原一征と再会し、ついにパナマ第二運河を完成して再び危険な存在となったアメリカへの対処の仕方を検討していた。そこへ突然、マダガスカル島が陥落したとの朗報が入った。-時局の変化に大高首相の決断は早かった。米大陸西部沿岸に進出する龍宮作戦を発令し、前原を千島列島の宇志知島秘密基地へ派遣した…。日本の誇る驚異の海中移動要塞鳴門とはいったい何か?ますますパワーアップした超人気の〈紺碧〉シリーズ第8弾。