出版社 : 文藝春秋
失踪した後輩が通っていたお店は、毎回訪れるたびに場所がかわり、違った女性が相伴してくれる、いっぷう変わったレストラン。都会の片隅で心地よい孤独に浸りながら、そこで出会った“少し変わった子”に私は惹かれていくのだが…。人気ミステリィ作家・森博嗣がおくる甘美な幻想。著者の新境地をひらいた一冊。
膳所駅で轢死した老人は事故死だったのか、それとも愛しい孫娘のための覚悟の自殺だったのか。ベテラン保険調査員・村越の執念の調査行が、二転三転の末にたどり着いた真実とは?保険業界の裏側、臓器移植など、現代社会の問題点を見事に描き切った滋味溢れる長篇ミステリー。第13回松本清張賞受賞作。
「殿は、いつまでもあの『覇王』の手先であってはなりませぬ」。死を目前にした軍師・竹中半兵衛は、病床で秀吉に四つの忠言と秘策を授けた。天正七年(一五七九)六月、蜂須賀小六、前野小右衛門ら播州から駆けつけた異能集団“山の民”を伴い、秀吉は密かに天下取りに動き出す。大ベストセラー『信長の棺』に続く本能寺三部作、第二弾。
「例の本能寺に通じる抜け穴を、本能寺の古井戸から至近距離で封鎖するのだ」。光秀の謀反を察知した秀吉は、前野将右衛門に命じた。その光秀を天王山に破り、秀吉は後継者争いのトップに躍り出る。やがて信長の遺児や嫡流を葬り去ると、信長の姪、茶々に触手を伸ばす。独裁者となった秀吉の心に広がる、消えることのない闇とは。
「わしは天子様から、跡継ぎのお子を頂戴する」。九州を制圧し、仇敵・家康を関八州に追いやり、さらには明遠征にまで乗り出す秀吉。豊臣家安泰のために、子作りと朝廷工作に励む秀吉を、絶望の底に陥れた“淀君の陰謀”とは一体何なのか。壮絶な後半生をあますことなく描いた、加藤版・秀吉一代記ついに完結。
日本から人がいなくなる!元日の午前零時、全国の初詣客が大量に消失し、同時に警視庁や県警本部が謎の集団に占拠された。それが日本絶滅計画の幕開けだった。計画を実行するのはそれぞれが特殊な能力を持った7人組“セブンス”。リーダー・タクトの指揮の下、彼らは日本中の人という人を次々と、大量に消していく。一体どうやって、そして何の目的で?2009年、全く新しいパニック・サスペンスの傑作がここに誕生。
広告代理店で働くシングルマザーの種本千晶は、社内でも将来を有望視されているディレクターだった。彼女には喘息で苦しむ保育園児がいたが、大切な会議に出席するため子供を家に置いて出社し、死なせてしまう。子供に傷などもあり、検察は千晶を「保護責任者遺棄致死罪」で起訴。有罪になれば、三年以上二十年以下の懲役刑となる。市民から選ばれた裁判員たちは、彼女をどのように裁くのか?そして読者の貴方は、有罪無罪どちらに手を挙げるか?法曹関係者もうならせたリーガルサスペンス。
材木問屋の若旦那、栄次郎は、絵草紙の作者になりたいと死ぬほど願うあまり、自ら勘当や手鎖の刑を受け、果ては作りごとの心中を企むが…。ばかばかしいことに命を賭け、茶番によって真実に迫ろうとする、戯作者の業を描いて、ユーモラスな中に凄みの漂う直木賞受賞作。表題作のほか「江戸の夕立ち」を収録。
生誕100年を迎え、再び注目を集める無頼派作家、太宰治。その退廃的な作品群の中から、1947年に刊行され、何度も映像化された大ヒット作「斜陽」と、終戦の年から河北新報に連載された佳作「パンドラの匣」を収録した愛蔵版。破滅的とも称される作風で多くのファンを獲得する太宰文学の頂点の文庫化。
世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのかー。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。
自らの特殊能力ー男をひと目で見抜くーを生かし、東京で女ひとり闇のコンサルタントとして、裏社会を生き抜く女性・水原。その能力は、「地獄島」での彼女の壮絶な経験から得たものだった。だが、清算したはずの悪夢「地獄島」の過去が、再び、水原に襲い掛かる。水原の「生きる」ための戦いが始まった。
その音楽は神のものか、悪魔のものかーカレーの海辺でひとりの熱狂的なモーツァルティアンと出会った伽椰は、情事の果ての長い逃亡生活に終止符を打ち、日本へと舞い戻った。そこで待っていたのは、ケッヘル番号を会員番号とする会員制旅行代理店の奇妙なツアーであり、依頼人の失踪に始まる恐るべき復讐劇の幕開きだった。
ウィーンからプラハ、マンハイム、ベルリンへと、モーツァルトゆかりの土地へアマデウス旅行社のツアーは続き、復讐は重ねられる。モーツァルトしか弾かない美貌のピアニストとの恋が伽椰を更なる悲劇のうねりに巻きこんでいくのだがー過去と現在、複雑に入り乱れた愛と憎しみが生み出した絶望に差しこんだ一筋の光とは。
戦時中の大阪で小さな町工場を興した八谷泰造。財界重鎮の永野重雄を口説いたり、旧満鉄技術者をスカウトするなど、持ち前の大胆さと粘り腰の八谷は、難題を乗り越え、会社を発展させ、ついには世界的な石油化学工業会社「日本触媒」を築きあげたー伝説の経営者を描く経済小説の第一人者、高杉良の名作が文春文庫に初登場。
売れっ子官能小説家の「わたし」は、締切をかいくぐりながら女性たちとの逢瀬を重ねるが、心は2年前に別れた妻への思いにとらわれている。そして、女性たちもまた…。男と女の間に「永遠に好き」という感情は成立しうるのか。滑らかな文体で恋愛の機微と繊細な官能を紡ぎ出した、神崎京介の真骨頂。
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見えるという青年…。じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。