出版社 : 文藝春秋
“犯罪被害者家族の集い”を舞台にした殺人事件の捜査は、暗礁に乗り上げた。被害者の一人、目取真南美の夫・渉の挙動に不審を抱いた大河内刑事には、公安から圧力がかかる。事件の裏には沖縄の悲劇、そして警察内部の腐敗が黒々と横たわっていた。猟奇的殺人者、狙撃者、孤独な刑事の三つ巴の闘いの結末はー。
毎朝新聞政治部記者、弓成亮太。政治家・官僚に食い込む力量は天下一品、自他共に認める特ダネ記者だ。昭和46年春、大詰めを迎えた沖縄返還交渉の取材の中で、弓成はある密約が結ばれようとしていることに気づいた。熾烈なスクープ合戦の中、確証を求める弓成に蠱惑的な女性の影がー。
中学1年生の海月が幼馴染の樹絵里に誘われて入部したのは「飛行クラブ」。メンバーは2年生の変人部長・神、通称カミサマをはじめとするワケあり部員たち。果たして、空に舞い上がれるか!?私たちは空が飛べる。きっと飛べる。かならず飛べる。空とぶ青春小説。
巻き込まれるように友人の仇討ちをすることになった侍の心を描く『花映る』、不埒を働き悪名を馳せる武士と、茶屋の女中として働く武家の娘ー客と女中として茶屋で再会した幼馴染二人の人生が交差する『悪名』、桜田門外の変を佐倉藩の隠密の目から描いた意欲作『面影』など全六篇の傑作短篇を収録。
上ゲ屋、保チ屋、目付…吉原を陰でささえる異能の男たち。妓を遊女に仕立て上げ、年季半ばで磨き直し、合間にあって妓の心を見張り、間夫の芽を絶つ。裏稼業を通して色と欲、恋と情けの吉原を描き切った鮮烈なデビュー作。
夫が単身赴任中の専業主婦。ブサイクな出張ホストと密会を繰り返す彼女の本当の望みとは…(『六日間』)。会社社長と長年、愛人関係を続けている育美。社長の妻を見舞う毎日で見つけたのは…(『愛のくらし』)。48歳の画家・鮎子。今は年下の彼とは別の男との情事に夢中。ただ、すぐ飽きてしまうのが常だった…(『猫をつれて』)。犬の散歩で偶然出会った若い男。怪我をした由未子の生活に入り込むが…(『バッドボーイ』)。定年退職間近の布沙子。愛人関係に区切りをつけ、苦手な後輩とも対決。そして、もう一つ「完璧な退職」のために計画してきたことが…(『パーフェクト・リタイヤ』)。オーバー40の女性たちの心情を鮮やかに描いた傑作短篇集。
一国の国家予算を超える盗みを働き、地球上に足跡の及ばざるところは皆無。明智小五郎やジェームズ・ボンドさえも翻弄する正体不明の大怪盗、ジバコ。彼の超人的かつ「1万ドルを盗むのに10万ドルをかける」少々フシギな活躍を描いた、北杜夫のユーモア小説における代表作。
生涯、二万に及ぶ発句。稀代の俳諧師、小林一茶。その素朴な作風とは裏腹に、貧しさの中をしたたかに生き抜いた男。遺産横領人の汚名を残し、晩年に娶った若妻と荒淫ともいえる夜を過ごした老人でもあった。俳聖か、風狂か、俗事にたけた世間師か。底辺を生きた俳人の複雑な貌を描き出す傑作伝記小説。
清の八十翁・松齢の庭に突如咲いた一茎の黒い花。不吉の前兆を断たんとしたその時に現われたのは(黒色の牡丹)。人間稼業から脱し、仙人として生きる修行を続ける小角がついに到達した夢幻の世界とは(睡蓮)。作家「司馬遼太郎」となる前の新聞記者時代に書かれた、妖しくて物悲しい、花にまつわる十篇の幻想小説。
博多・香椎海岸で発見された、某省の課長補佐と料亭の女の死体。一見して疑いようのない心中事件と思われたが、その裏には汚職をめぐる恐るべきワナが隠されていた。時刻表を駆使した精緻なトリックと息をのむアリバイ崩し。著者の記念碑的作品となったトラベル・ミステリーが、風間完画伯の挿画入りであざやかによみがえる。
地方都市にある高校で、ウリをやっているという噂のために絡まれていた琉璃を、偶然助けた上級生の周子。彼女もまた特殊な能力を持っているという噂により、周囲から浮いた存在だった。親、姉妹、異性…気高くもあり、脆くもあり、不器用でまっすぐに生きる十代の出会いと別れを瑞々しく描いた傑作青春小説。
才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。
「あのね、この子猫達、化けるんですって」お気楽跡取り息子・麻之助に託された三匹の子猫。巷に流れる化け猫の噂は、じつは怪しい江戸の錬金術へとつながっていた!?町名主名代ぶりも板につき、絶妙の玄関捌きがいっそう冴えながらも、淡い想いの行方は皆目見当つきかねる麻之助。両国の危ないおニイさんたちも活躍するまんまことワールド第二弾。
唯一の堅気者、新人キュレーター・エディ、魅力的な赤毛の美女“ダンシング”メイベル、100キロの巨漢“ベビーベッド”ブッチ、ベビーフェイスの伊達男“キッド”バーンスタイン、滅多にしゃべらない寡黙な“セイント”モース、そして、物に触れるだけで未来の悲劇を読み取ってしまう不思議な少女フェイ。悲劇を阻止すべく、BAMの面々は事件解決に乗り出す。
日露戦争直後、前人未踏といわれ、また、決して登ってはいけない山と恐れられた北アルプス・劔岳。測量官・柴崎芳太郎は、山頂への三角点埋設の至上命令を受け、地元の案内人・長次郎とともに、器材の運搬、悪天候、地元の反感など、さまざまな困難と闘いながら、その頂に挑戦する。そして、設立間もない日本山岳会隊の影がー。我が国最高の撮影監督といわれる木村大作が自らメガホンをとった、畢生の映画化作品の原作にして、新田次郎山岳小説の白眉を、読みやすくした新版。
法を犯した精神障害者を収容・治療する医療観察施設。何重もの鋼鉄の扉で囲まれた重監護病棟で患者が女医を惨殺し、逃走した。残されたのは磔にされた全裸の遺体、そして胸にピアスで突き刺したタロットカード。「運命の輪」「吊るされた男」「愚者」…。逆位置のタロットカードが次なる殺人を呼ぶ。天涯孤独な女性捜査官・麻生利津とAI(人工知能)・キシモトのコンビが難事件に挑む。現役精神科医による迫真の医療サスペンス。
土佐・津呂浦の鯨組がアメリカの蒸気船をいち早く発見。伝え聞いた幕閣から黒船対策のため召し出しの声がかかるが、その前に、鯨組には仲間を屠った巨大マッコウクジラ“黒船”との死闘が待っていた。江戸時代の勇壮な鯨漁師たちの心意気を今に伝える傑作時代小説。