出版社 : 文藝春秋
師匠の遺した剣の秘伝書を、三人の弟子が追う「秘伝」。自分より強い男の妻になりたいと望む女武芸者のもだえが切ない「妙音記」。清廉潔白で慎み深いあまり、変わり者と呼ばれる「弓の源八」。武芸にかけては神技の持ち主でありながら、世に出ることなく生涯を送った武芸者八人の姿をユーモラスに描く円熟の短篇集。
父の遺言により、美濃屋の跡を継ぐことになった信太郎。世話になった長屋の仲間と別れの宴をしていたとき、河原崎座が火事になった。恩人を助けるため、燃え盛る河原崎座に駆け込んだ信太郎だが、そのせいで目が見えなくなってしまう。大店の主人となる信太郎の手助けをするため、おぬいは一大決心をした。
高校時代に仲間と書いた「殺人ノート」のトリックを使って、当時の“殺人倶楽部”のメンバーが次々に殺されてゆく!まさか犯人は仲間のひとり?-自分も同クラブの一員だった熱血刑事ジェイミーは、婚約者のロッド警部補とともに事件を追うが…。小さな町の人間模様の中に意外な犯人を隠す、サスペンスフルなミステリー。
時は唐代、太宗の御代のこと。一人の高僧が、取経のために天竺へと旅立った。その名は玄奘三蔵。親世音菩薩は、三歳が無事に天竺へ着けるよう、ゆえあって天界を追われたものたちにいずれ来る三蔵と共に天竺へ参るよう言い渡す。師弟の愛、仲間との絆、旅を通じて成長していく姿を余すところなく描く、いままでで一番美しい「西遊記」。
町営の診療所しかない都下の離れ小島に赴任することになった、トンデモ精神科医の伊良部。そこは住民の勢力を二分する町長選挙の真っ最中で、なんとか伊良部を自陣営に取り込もうとする住民たちの攻勢に、さすがの伊良部も圧倒されて……なんと引きこもりに!? 泣く子も黙る伊良部の暴走が止まらない、絶好調シリーズ第3弾!
銀座の花師・佐月恭壱のもう一つの顔は絵画修復師。大正末期に活躍した画家の孫娘から、いわくつきの傑作の修復を依頼された佐月は、描かれたパリの街並みの下に別の絵が隠れていることに気づく…表題作ほか、欧州帰りの若き佐月を描いた文庫書下ろし「凍月」等全三篇。裏の裏をかく北森ワールドに酔う一冊。
都立K高校3年・天童玲美は、姉の死の真相を探るため、最難関私大・馳田学院入学を決意する。今の学力では合格が覚束ない玲美は、クラスで成績トップの優等生・愛香と陸上インターハイ選手の杜夫、機械オタクの隼人の協力を得て、カンニングによる入試突破を目指す。スリル満点の胸キュン青春コンゲーム小説。
グローバリズム出づる処、インド、バンガロール。ひとりの起業家が、書を民主主義が没する処の天子温家宝に致す。「拝啓中国首相殿、あなたに真の起業家精神を教えましょう。主人を殺して成功した、このわたしの物語を」IT産業の中心地から送った中国首相への手紙は殺人の告白であったー。ブッカー賞受賞作。
没落した東北の旧家の嫁のもとに届いた宅配便は51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。差出人は、中学卒業後、集団就職で町を出てその翌年に火事に遭って死んだはずの同級生。いったい誰が、何のためにー。隠されていた過去が、昭和の記憶とともに今、明らかになる。人生の光と影を余すところなく描いた力作長篇。
鎬を削るライバル企業の越後実業と甲州商事。上杉謙信と武田信玄を信奉し、「越後の龍」「甲州の虎」と呼ばれている両社の社長は、互いに後継者問題を抱えていた。そんな折、両社のキーマンの怪死事件が起きる。なんと一人は直江兼続の鎧の中で殺されていた。互いにライバル会社による凶行だと訴えるが…。十津川警部は事件解決の鍵を探るべく戦国時代の歴史を紐解き、そこに思わぬ因縁を見つける。
長州藩の下層の出ではあったが、天堂晋助の剣の天稟は尋常なものではなかった。ふとしたことから彼を知った藩の過激派の首魁高杉晋作は、晋助を恐るべき刺客に仕立てあげる。京で大坂でそして江戸で忽然と現われ、影のように消え去る幻の殺人者のあとには、常におびただしい血が残された…剣の光芒が錯綜する幕末の狂宴。
幕末の情勢は大きな曲がり角にさしかかった。中央から締め出され、藩領に閉じ込められた長州藩では、勤王党の高杉晋作がクーデターに成功。そして慶応二年、ひそかに薩摩藩と手をにぎり、藩を挙げて幕府との決戦に肚を固める。その緊迫した状況の下で、刺客晋助の剣は獲物を狙って冷酷にふるわれ続けたー。
天下を統一した秀吉の許に、それぞれ胸に野望を抱いた者たちが群れ集まってきた。摂津の主となり、信長の部将として活躍した荒木村重の晩年の姿を描く「うずくまる」や、琉球征服を夢み、秀吉から琉球守の名を賜わった亀井茲矩の見果てぬ夢を綴った「おらんだ櫓」など、十四人の男たちを活写した歴史短篇集。
「有田焼や、瀬戸焼より、いや九谷焼よりも、もっともっと、きれいで質のいい石物を、この絹屋で作りたいんや」。幕末の近江で古着を商う半兵衛は、妻留津とともに染付磁器に挑む。初窯の失敗、共同出資者の撤退、窯場での事故…数々の失敗を乗り越えながら、半兵衛は「湖東焼」の名を、その美しさを全国に広めたいと奔走する。
「殿はいま絹屋の窯にことのほかご執心じゃ」-。近江きっての花形産業となった「湖東焼」は、藩に召し上げられてしまう。部屋住み時代に半兵衛と知り合った井伊直弼は、染付磁器の美しさと、「湖東焼」のために尽力する半兵衛の生き方に強く惹かれていた。時代の波に翻弄される彦根藩と半兵衛の運命は。
都心でネット財閥「アクトグループ」を標的とした連続爆弾テロ事件が発生した。公安の並河警部補は、防衛庁から出向した丹原三曹と調査に乗り出すが…。『亡国のイージス』『終戦のローレライ』など、読者を圧倒し続ける壮大な作品で知られる著者が、現代の東京を舞台に史上最大級のスケールで描く力作長篇。
並河警部補は、捜査を進めるうちに丹原三曹とテロの実行犯、「ローズダスト」のリーダー入江一功との間にある深い因縁を知る。並河とのふれあいに戸惑いながらも、過去の贖罪のために入江との戦いに没入してゆく丹原。だが日本に変革を促そうとする真の敵は、二人の想像を絶するところで動き出していた。今、日本が戦場と化す。