出版社 : 文藝春秋
じいさんが死んだ夏のある日、孫の良嗣は、初めて家族のルーツに興味を持った。出入り自由の寄り合い所帯、親戚もいなければ、墓の在り処もわからない。一体うちってなんなんだ?この際、祖父母が出会ったという満州へ行ってみようかー。かくして、ばあさんとひきこもりの叔父さんを連れた珍道中が始まる。伊藤整文学賞受賞作品。
昭和四十年代、宮城県。捕鯨船の漁師たちは捕獲禁止の流れに不安を覚え、稲作農家は減反政策で前途多難な状況を迎える。庶民生活には自家用車が登場し、団地が建ち始めるが…。消えゆくものと始まるものが混在する時代に、希望と不安を抱えてたくましく生きる人々と、暮らしの真の豊かさを描き出す作品集。
大禍時ー薄暗くなって禍が起こりやすい夕暮時に、娘が消えるという噂が立った。弥平次の調べで、高家一色家に奉公にあがっていた菓子屋の娘が半年前に行方知れずになった事実を掴むが、店の者たちの態度がおかしい。また一色家にもよからぬ噂があった。事件の真相は何なのか、“剃刀”久蔵の裁きが冴える、人気シリーズ17弾。
東京・佃島に400年住み着いている多和田家の娘・笑子は、大学入学をきっかけに一人暮らしを計画。大学近くの洋館「メゾン・ポテ」でルームシェアをすることに。ところがこのお屋敷、改築と増築で中は迷宮状態な上、住んでいる住人たちもなにやら奇妙奇天烈で…。一方、小説家の新城カズマ氏は家出少女たちの相互扶助組織「家出少女連盟」なる組織の噂を聞き込み、その正体を探るべく取材を進めるのだったー。SF・ライトノベルのカリスマが贈る、都市をさすらう非定住者たちのサーガ。
“直木賞受賞作”『花まんま』や、“涙腺崩壊”のキャッチフレーズ『かたみ歌』で、読者の涙を誘った短編の名手・朱川湊人が、家族と写真にまつわるちょっぴり不思議で哀しいお話をお贈りします。二〇一二年秋に、三十九年の長期連載が幕を閉じたミステリ界の巨人・佐野洋氏の連載「推理日記」で、設定の妙を大絶賛された、UFOをでっち上げた同級生の美人の女の子の身の上話「飛行物体ルルー」、とある事故をきっかけにして、優しかった近所のおねえさんの意外な一面を見てしまった少年の淡い慕情の顚末「コスモス書簡」、ぶっきらぼうで、口より手が先に出る不器用な父と、その父に寄り添うように暮らす聡い男の子、そして同じボロアパートに、とある事情で身を隠すように暮らすことになった“私”との心の交流を描いた「スズメ鈴松」、ほのかな想いを寄せながら亡くなった同級生の想いが、不思議なカメラに乗り移ってもたらされた写真にまつわる奇妙な出来事「黄昏アルバム」、小学生の男子四人でつくった秘密基地にまつわる哀しい過去を巡る表題作「サクラ秘密基地」など、夕焼けを見るような郷愁と、乾いた心に切ない涙を誘う、短編を六本を収録。
著者・山下澄人は北海道などを拠点に活動を続けてきた劇作家、演出家、兼俳優。その劇を観に通っていた編集者のすすめで書いた小説『緑のさる』(平凡社)で昨年末に野間文芸新人賞を受賞した注目の書き手です。今回の作品集の表題作「ギッちょん」は第147回芥川賞候補作にもなりました。「ギッちょん」は、ある男の一生が、時系列をシャッフルして語られます。腕白な少年時代、荒れた十代、放浪の青春時代、ホームレスになった四十代、清掃業に就き静かに死を待つ晩年の情景が次々にたちあがってきて、次第に胸がしめつけられるような心持になります。「水の音しかしない」は、サラリーマンの不条理劇のようにはじまりながら、やがて読者は大震災後の混沌とした世界に連れて行かれていることに気付きます。「トゥンブクトゥ」では、街の雑踏で交差していた老若男女さまざまな人々の思惑が、やがて暴力的なものに変容し、決着をつけるかのように、皆が海辺へと向かいます。読むたびに変貌をとげるこの作品群は、小説の新たな地平を切り拓くことになるでしょう。
時代小説の名手が描く、江戸の女の恋愛模様 江戸の占い本が女たちの吉凶をズバリ! 月ごとの風物を織り込みながら江戸の女を生き生きと描く、切なくも愛らしい傑作時代小説。
グループホームで働く千鶴は結納前日も夜勤が入り、入居者たちはそれぞれの方法で千鶴を祝い…(「Aデール」)。四十年以上前に失踪した初恋の女性・葉子に会うため、窪木は孫娘の園を連れて、葉子の入院する病室を訪ねる(「布袋葵」)。四雁川の流域に暮らす者たちを通し、生死や悲喜に臨む姿を静かに描く七篇。
NY、東京、パリ。彼らは、再びスタートラインに立った 社長の娘を監視するためにNYマラソンを走ることになった広和だったが。人気作家がアスリートのその後を描く三つの都市を走る物語
8月ロードショー、ブラッド・ピット主演映画原作 中国奥地に発した謎の疫病を契機とした人類と生ける死者との全面戦争。全世界を舞台とした衝撃のパニック・スリラー大作の原作小説。
死者の大軍を前にアメリカ軍は大敗北を喫し、インド=パキスタン国境は炎上、日本は狭い国土からの脱出を決めた。兵士、政治家、主婦、オタク、潜水艦乗り、スパイ…戦場と化した陸で、海で、人々はそれぞれに勇気を振り絞り、この危機に立ち向かう。「世界Z大戦」と呼ばれる人類史上最大の戦い。本書はその記録である。
絶好調「文庫書き下ろし」シリーズ、待望の第3弾 青山と同期たちは異動で所轄の課長に。そこで直面したのは、凶悪化した「半グレ」元暴走族集団と中国マフィアが絡む裏社会だった。
自殺する場所を求め寒村の温泉宿を訪れた大学生の種田静馬は、村の伝説の地で起こった少女の首切り事件に遭遇する。被害者は古から村を支配するスガル様の後継者で、九年後に起こると予言される大難事に備えるべく修行をしていた。犯人の罠により殺人犯と疑われた静馬を見事な推理で救った水干姿の十八歳の隻眼の少女の名は御陵みかげ。名探偵であった亡き母、御陵みかげの遺児で、母の名を継ぐべく、元刑事の父の手ほどきで各地で探偵としての修養を積んでいた最中だった。静馬は助手見習いとして、みかげと共に被害者の琴折屋敷へ向かうが、そこでは第二第三の殺人が待ち受けていた。三つ児の三姉妹、そして父を失いながらも難事件を解決したみかげ。だが、18年後に同じ現場で18年前を再現するような悪夢が……。絶品の超絶本格ミステリー。第64回日本推理作家協会賞、第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。
『人のセックスを笑うな』『論理と感性は相反しない』など、時代の空気感を掬い取るビビットな文体とセンスで人気の山崎ナオコーラの中短編集。年配の男性の顔や指の写真を集め、ブログに載せることは罪であろうか? おじさんを研究する二十五歳の女性の視点から、異性を個人ではなく集合体として捉える切なさを描いた「手」。NHKラジオ文芸館で紹介され異例の話題となった、血のつながらない娘と暮らす44歳のサラリーマンが主人公の、『お父さん大好き』など4作を収録。おじさんたちが可愛く思えてくる、ウィットと切なさに満ちたナオコーラ・ワールドが堪能できます(2009年刊の単行本『手』を改題)