出版社 : 文藝春秋
越中との戦いで討死した為景に代わり守護代となった長兄・晴景だが、凡庸な器量のためか、国内に争乱が続く。宇佐美定行の許で武将としての修業を続ける景虎は、幾多の合戦で勝利し武名を挙げ、次第に兄弟の仲は悪化する。兄との戦いに勝利した景虎は、天文十八年(1549)弱冠二十歳で長尾家当主となり、越後統一を実現する。
領土拡張に積極的な武田晴信と北信・川中島で闘った景虎は初めて敗れた。雪辱に燃える景虎の許へ房州の里見氏から北条氏康の横暴の訴えが届く。小田原城を包囲した景虎は関東管領に就任し、上杉の家督も譲られ上杉政虎と名を改めた。そして永禄四年(1561)に、上杉・武田両軍は雌雄を決すべく川中島で一大血戦を企てることに。
江戸の大川端にある小さな旅篭「かわせみ」。そこに投宿する様々な人たちをめぐっておこる事件の数々。その渦の中に巻きこまれながら、宿の若い女主人るいと恋人神林東吾の二人は、互いに愛を確かめ合い、次第に強く結ばれていく…江戸の下町情緒あふれる筆致で描かれた人情捕物帳。人気シリーズ「御宿かわせみ」新装版第一弾。
小さな宿の女主人るいと、次男坊ながら親代々八丁堀与力の家に生まれた東吾。尋常にいえば縁組の成立するわけがなかったー。二人の“忍ぶ恋”を縦糸に、江戸下町の四季の風物を織り交ぜながら描かれる、人情味あふれる捕物帳。今日も「かわせみ」には様々な人が泊り、様々な事件がおこる。人気シリーズの新装版第二弾。
処女作「墓地で」、芥川賞受賞作品「プレオー8の夜明け」から晩年の名品「真吾の恋人」まで、戦争の記憶をつむぐ全短編二十三。三十年にわたるこの作家の貴重ないとなみを一巻集成。戦後はすでに半世紀をこえ、戦下の記憶は風化するにまかされる。名もなく声なき兵士たちは、何を考え死んでゆき、生き残った者たちは何を問うのか。
真打ちを目前に盲となった噺家の円木、金魚池にはまって死んだ、はずが…。あたりまえの夜昼をひょいとめくると、摩訶不思議な世界が立ち上がる。粋人のパトロン、昔の女と今の女、わけありの脇役たちも加わって、うつつと幻、おかしみと残酷さとが交差する、軽妙で、冷やりと怖い人情噺が十篇。谷崎潤一郎賞受賞の傑作短篇集。
「水雷屯」とは占いでいう多事多難の相。子持ちの後家と恋仲になって実家の呉服太物店から勘当中の信太郎は、ある時義兄・庄二郎から相談を持ちかけられた。なんと妾宅で手形を奪われ、妾も行方不明だという。頼った占いでも「水雷屯」の相が出てー信太郎は義兄を窮地から救えるのか?好評シリーズ第2弾。
偶然再会した少年の頃のヒーローは、その後、負けつづけの人生を歩んでいた。もう一度、口笛の吹き方を教えてくれたあの頃のように胸を張って笑って欲しいー。家庭に職場に重荷を抱え、もう若くない日々を必死に生きる人々を描く五篇を収録。さり気ない日常の中に人生の苦さをにじませる著者会心の作品集。
ゴールデンウィーク間近の京都の旅館で、ギャンブル好きの中年女性が殺された!殺害現場のふすまには墨字で大きく「陰陽」の文字が書かれていた。さらに彼女の博打仲間の三人のうちの一人が東京の自宅で同じ凶器らしきもので殺され、寝室の壁にはまたもや「陰陽」の文字がー。十津川はその寝室にあった写真パネルに注目する。そこにはラスベガスで笑う博打仲間四人が写っていた。犯人はこの四人に恨みを抱いている、と推理した十津川は、捜査を進めるうちに、鎌倉・流鏑馬神事と四人の関連に気づく。やがて浮かびあがる容疑者。しかし彼には鉄壁のアリバイがあった!全国の祭りを舞台にして十津川が大活躍する「十津川警部・祭りシリーズ」待望の第4弾。
孤独な日々を送る老武士はふとした縁で知り合った孤児の美少女の絵を描くことに生きる縁を得る。絵は江戸で評判となるが、ある晩、少女は無惨な屍体となって見つかった。市中を荒しまわる若者集団、辻小僧に輪姦されたのだ。薄幸な娘の敵をとるため、余生をかけて老骨の武士は立ち上がる(敗者の武士道)。他八篇収録の完結篇。
明治43年、政府は明治天皇の暗殺を企てたとして大量の社会主義者を検挙、翌年1月には幸徳秋水を含む12名の処刑を断行した。反政府活動とそれに対する国家の徹底した弾圧という、近代日本の暗部を象徴した「大逆事件」。新資料を駆使、小説の形式で事件の全貌と関わった人間たちの真の姿に肉薄しようとした労作。
生まれ故郷にみずから墓を作り、苦しまずに死ぬことを願う末期癌患者。家族との妥協を拒み、患者本人との契約によって、初めて尊厳死に臨もうとする医者。その葛藤を克明に描いた表題作と、難民医療団に加わって過酷な日々を送る人々の、束の間の休日に起こった出来事を、安吾の『堕落論』に仮託して描いた中篇とを収める。
身を潜めていた修道院を抜け出し、長崎・五島列島に向かった朧とアスピラントの教子。島に残る隠れキリシタンの痕跡を巡る旅の中、朧は“殺人者の横貌”を垣間見せる。そして教子は自分が心身ともに朧に囚われてゆくことを確信した。『ゲルマニウムの夜』に始まる『王国記』シリーズ第三弾は、『汀にて』と『月の光』の二編を収録。
みなもとのよしつねーその名はつねに悲劇的な響きで語られる。源氏の棟梁の子に生まれながら、鞍馬山に預けられ、その後、関東奥羽を転々とした暗い少年時代…幾多の輝かしい武功をたて、突如英雄の座に駆け昇りはしたものの兄の頼朝に逐われて非業の最期を迎えてしまう。数奇なその生涯を生々と描き出した傑作長篇小説。
義経は華やかに歴史に登場する。木曽義仲を京から駆逐し、続いて平家を相手に転戦し、一ノ谷で、屋島で、壇ノ浦で潰滅させる…その得意の絶頂期に、既に破滅が忍びよっていた。彼は軍事的には天才であったが、あわれなほど政治感覚がないため、鎌倉幕府の運営に苦慮する頼朝にとって毒物以外の何物でもなくなっていた。