出版社 : 新潮社
建築史家の若手教授、彼に弟子入りする小説家志望の青年、教授が片思いの愛を捧げる少女、少女を残酷に支配する婚約者の美青年。現代の都市の話題の建築を舞台に、交わされる、永遠、生と死、愛、芸術を巡る会話。男と女、男と男、意表をつく展開を遂げる恋愛関係。人間が生きるための空間、建築、その新たな可能性を探し、現代の絶望に立ち向かう、若き新鋭の画期的長編。
ビール会社の若手宣伝部員のオレに突然下った転勤辞令。左遷先は売上最低、上司も無能な地方支店。田舎のドブ板営業を舐めきっていたオレだが、毎日酒屋へ足を運ぶうちに、やがてビール営業の面白さに目覚め始める。売らされているうちは半人前、自分で考えて売っていくのが営業の醍醐味だ!全国約3000万人(推定)の営業マン&ウーマンに贈る青春爽快物語。
血風吹きやまぬ、戦国乱世。徳川家康の懐刀・石川数正が、突如、日の出の勢いの秀吉のもとに奔った!家康と苦楽をともにした知将の変節に、三河武士たちは憎しみの炎を燃やす。だが、漢は自らの天命を見据え、恐るべき計略を胸に動いたのであった。息子たちをも巻き込む数正の鬼謀が、天下人の座を狙う群雄の運命をかえてゆくー。謀将シリーズ、最高傑作をもって、堂々完結。
物語の始まりは、1940年、日本統治下の朝鮮の小さな町。好奇心いっぱいで家族思いの10歳の妹スンヒィと、工作と飛行機が大好きで正義感の強い13歳の兄テヨルは、アボジ(父)とオモニ(母)と叔父さんの5人で仲よく暮らしている。家の外では朝鮮語で話すことを許されず、食事も粗末で、日本名まで名乗らなくてはならなくて、窮屈な毎日だけど、ふたりは元気だ。そして戦争が進んだある日、家族を思う一心から、スンヒィはある大失敗をし、テヨルは大きな決意をする-創氏改名令の頃から終戦・解放までの5年間、ふたりが胸を痛め、ありったけの知恵と勇気で立ち向かった日々を、兄妹交互の語りで描いた感動の物語。
お父さんが初めてビートルズを聴いたのは、今のおまえと同じ歳ー十四歳、中学二年生の時だった。いつも爪を噛み、顔はにきびだらけで、わかったふりをするおとなが許せなかった。どうしてそれを忘れていたのだろう。お父さんがやるべきこと、やってはならないことの答えは、こんなに身近にあったのに…心を閉ざした息子に語りかける表題作ほか、「家族」と「父親」を問う全六篇。
失恋の痛みと、都会の疲れをいやすべく、ふるさとに舞い戻ったほたる。大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを、彼女は取り戻せるだろうか…。赤いダウンジャケットの青年との出会い。冷えた手をあたためた小さな手袋。人と人との不思議な縁にみちびかれ、次第によみがえる記憶ー。ほっこりと、ふわりと言葉にくるまれる魔法のような物語。
日露戦争前夜、女医の診察室に忍ぶ流れ者の男。いけない事と分かっていても、年下の男との甘美な情事に溺れてしまう…。老舗呉服屋の養女は美しく我侭な娘に育つ。やがて若い歌舞伎役者に惚れこんで、ふしだらな逢瀬を重ねてゆく。その奔放な火遊びの結末は…。
友人の作家・有栖川有栖と休養に出かけた臨床犯罪学者の火村英生は、手違いから目的地とは違う島に連れて来られてしまう。通称・烏島と呼ばれるそこは、その名の通り、数多の烏が乱舞する絶海の孤島だった。俗世との接触を絶って隠遁する作家。謎のIT長者をはじめ、次々と集まり来る人々。奇怪な殺人事件。精緻なロジックの導き出す、エレガントかつアクロバティックな結末。ミステリの醍醐味と喜びを詰め込んだ、最新長編。
岡山で生れた女には、東京も、韓国も、ベトナムも、みな異国だった。そんな異国の男との情事のさなか、快感に震える女の肌の裏側で、岡山の地霊は冥く疼きはじめる。官能が高まるほどに、死の匂いを纏わりつかせた、懐かしくも恐ろしい土俗の記憶が溢れてくるのは、なぜー。自ら惜しみなくエロスを生きる著者だけが探り当てたエロスの最奥。痺れる甘さと蕩ける毒に満たち13篇。
昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らないー。ある夜、死体の傍らに落ちていた拳銃。それを偶然手にした私は、次第にその“死と直結した機械”に魅せられていく。救いのない孤独と緊張。膨らみを続ける残酷な妄想。そしてその先には、驚愕の結末が待っていた…。非日常の闇へと嵌まり込んだ青年の心の軌跡を、確かな筆力で描く。若き芥川賞作家、堂々のデビュー作。
あなたと私、二人きりですべてをわかちあった秘密の時間ー。数奇な生い立ちをもつ渚と玲奈。幼くして知り、別離を経てめぐり合い、もう離れられないと悟った二人は、手を取り合って許されざる官能に身を投げ出す。無垢すぎる魂が引き寄せる悲劇。狂おしくも甘やかな死の予感言葉と写真の奇跡的な融合が小説を超える世界を生み出す。一篇の映画にも似たコラボレーション・ブック。
苛烈な第一次世界大戦。イタリア軍に身を投じたアメリカ人青年フレドリックは、砲撃で重傷を負う。病院で彼と再会したのは、婚約者を失ったイギリス人看護師キャサリン。芽生えた恋は急速に熱を帯びる。だが、戦況は悪化の一途を辿り、フレドリックは脱走。ミラノで首尾よくキャサリンを見つけ出し、新天地スイスで幸福を掴もうとするが…。現実に翻弄される男女の運命を描く名編。
イタリア系移民の父が興した造園業を息子にゆずり、軽飛行機三昧の日々を送る主人公。幼い二人の子を遺し、韓国系の妻が自殺めいた死に方をしてから四半世紀。地上半マイルから見下ろすと、すべての憂さが消えてしまうようだ。-だが、母を喪った子どもたちを育ててくれた長年の恋人は去り、老いて施設に暮らす父はいよいよ衰え、結婚を控えた娘は、重い病に襲われる。愛する者を半ば遠ざけるようにして生きてきた男に、決断のときが迫ってくる。全米期待のコリアン・アメリカン作家による、三代に亘るカンバセイション・ピース。
決して美人じゃない、大学も二つ目、トシでいえば三浪も同然のオンナ・大瀬崎亜紀。いつだって一生懸命で、妥協がないのはいいけれど、ちょっぴりおバカで自信もない。そんな彼女が恋をした。バイト先の編集プロダクションでシャチョーに見込まれちゃったのだ。必要とされたい一心で、ひたすら仕事に励む大瀬崎亜紀。でも、その先は?人一倍純情で不器用な女子学生の仕事と恋の奮闘記。
才能に溺れて落ちていく男に、女は一途な想いを寄せ、慕い続ける…稀代の才人・平賀源内と野乃との人知れぬ恋。本草学者、戯作者で発明家としても一世を風靡しながら、取るに足らぬ男を殺めて入牢した源内は、獄中で回想と妄想に身悶えしながら、野乃との狂おしい交情を憑かれたように綴るーしくじり続きの男をひたすらに愛した女の情愛を描き尽くす時代長篇。
食料の生産と流通を寡占し、世界的大産業に成長した「アグリビジネス」。彼らの次の狙いは新種のGMO(遺伝子組み換え作物)を駆使し、食料のみならず地球のあらゆる生態系を支配することだー。アグリビジネスの陰謀を暴く原稿の一部を遺して消息を絶った、天才科学ジャーナリスト、レックス・ウォルシュ。翻訳家の蓮尾一生は、彼の足跡を追って南米ボリヴィアへ飛ぶ。
密林の奥に開発されたワイナリー。コカインの原料作物「コカノキ」に蔓延する病害。行方不明となった何人ものサイエンティスト。ボリヴィアの奥地で進行する極秘プロジェクトに迫る蓮尾一生は、ついに驚愕の真実に直面する。人間が神に逆らって創造したGMO(遺伝子組み換え作物)がもたらす大いなる厄災を予見し、地球の未来に警鐘を鳴らす、超弩級国際サスペンス。