出版社 : 新潮社
逃げた先の街でローズが見つけた不思議な絵は、異世界への入口となった。描かれているのは神殿の廃墟を見下ろす女性の姿。彼女のまとう衣服は、ローズ・マダー(赤紫色)。ローズは絵の力を借りて、妄執にとり憑かれたノーマンと対決しようとするが…。何がリアルで、何が非現実なのか?ホラーとサスペンスとファンタジーを巧みに融合させてあなたを未知の世界へと誘い込む。
誰もこの世界的テロリスト逮捕の経緯を知らなかった。逮捕した警官は、話すことを禁じられていたのだ。経緯を話すことができるのは目の前にいる男だけだった。そして彼が口を開いた。“知っていたかね、エセキエルがバレエ教室の二階で捕まったのを”-1992年、3万人を死に至らしめたとも言われる反政府ゲリラの指導者逮捕劇の裏には、熱く切ない恋物語が秘められていた。
弁護士ミッチ・ダットンは、民主党の候補指名を受け、テキサス州選挙区から下院議員選に打って出る。対立候補である共和党ベテラン議院の急死によって、楽勝は確実と思われた。しかし、共和党が立ててきた謎の新人候補が、選挙を血みどろの壮絶な戦いへと変貌させてゆく。このシェイクスピア・マッカンなる人物は、勝つためには人殺しさえもいとわぬ、とんでもない男だったのだ。
マッカンのダーティな戦術は次第にエスカレート。ミッチ陣営は、立てた作戦がことごとく裏目に出、次第に追いつめられてゆく。ミッチと妻コニーとの間にもすれ違いが起こっていたが、そんなある日、コニーがマッカンにレイプされるという事件が発生してしまった!ミッチは心の動揺を必死で抑えつつ、テレビ討論に臨むのだが…。狂気の選挙戦は、驚愕の結末に向けて二転三転。
ひとりの魅惑的な女性が死んだ。選ばれた男たちとの遍歴を重ねた途上で。元恋人の三人が葬儀に参列する。イギリスを代表する作曲家、辣腕の新聞編集長、強面の外務大臣。そして、生前の彼女が交際の最中に戯れに撮った一枚の写真が露見する。写真はやがて火種となり、彼らを奇妙な三角関係に追い込んでゆく。才能と出世と女に恵まれた者は、やがて身を滅ぼす、のか。98年度ブッカー賞受賞作品。
笑いと恐怖と思想、三重仕掛けで描かれた迷宮へ…。隠された秘密を巡って同時進行する「幻想世界」と「冒険活劇」の物語。村上春樹、80年代の記念碑的長編。
古い祖母の家。草々の生い茂る庭。染め織りに心惹かれる四人の娘と不思議な人形にからまる縁。蛇の夢。竜女の面。クルドの地。呪いと祈り、憎悪と慈愛。リバーシブルの布-私たちの世界。何かを探すためでなく、ただ日常を生き抜くために…。
膨張した変死体は、皮膚が透け、鮮血の中に白骨が見え、どろどろの脳が眼窩から溶けだしていた。高熱を発し、おびただしい出血とともに死を招く魔の奇病とは何か?これは人為か偶然か?アメリカ帰りの若き研究者、高部涼子は真相に迫っていく。連続する変死と最新遺伝子学の闇に隠れた悪とは?新潮ミステリー倶楽部賞・島田荘司特別賞を受賞した現役医師作家による最先端書下ろし推理作品。
ニューヨークのシチリア移民、フランク・バタリア。若き日にボクサーへの夢を断たれた彼は、タフガイを装おうと、マフィアの階段を駆け上がってゆく。長男バディがその浅薄な教育方針の犠牲となった後、華奢で気弱な次男ニッキーが期待を一身に集める。だが彼は、父と兄の恐ろしい秘密を知らずにいた…。“ほんものの男”にこだわる父と子の葛藤と悲劇に全米が唸った処女長編。
酷寒のシベリアの町ノヴィ・ウレンゴイは、外国企業が支配しマフィアが暗躍する無法地帯だ。すさみきったこの町で、アメリカ国籍の会社重役が射殺された。くすぶり続ける正義感を持てあます中年刑事ヴォロンツィエフ、愛娘を麻薬に奪われたゴロフ捜査官らは、はるかヴェトナム戦争に遡る大規模な陰謀を掘り起すことになった。記録的な雪嵐の中、凄絶なサバイバル・ゲームが始まった。
孤高の作家は「死」と対面する。それはいつ、どのようにやってくるのか?人生の折々に待ち伏せしていた三つの死の影-他人の死、親の死、そしておのれの死。著者の故郷アメリカ南部の村タイドウォーターを舞台に、亡き母の記憶を描いた表題作ほか、99歳の元奴隷の老人と10歳の少年だった著者の奇妙な交流や、鮮烈な戦時体験を甦らせた自伝的連作小説。
17歳でオスカー・ワイルドの姪に知と性の興奮を教えられ、女優ディートリッヒとも浮き名を流した男装のレズビアン、“ジョー”・カーステアズ。彼女は、国際モーターボートレース英国代表であり、一世を風靡した「世界最速の女王」でもあった。後半生、莫大な遺産をもとに英領西インド諸島の小島を買い取り、“ジョー”と呼ばれて島に君臨し、人形を偏愛し、華麗な交友を繰り広げた。その波瀾に満ちた94年の生涯を描く-。
東西の壁が崩壊したベルリンで、日本の剣道の防具が発見された。「贈ヒトラー閣下」と日本語で書かれ、日本からナチスドイツに贈られたものだという。この意外な贈り物は、国家と戦争に翻弄されたひとりの男の数奇な人生を物語っていたー。1938年、ベルリン駐在武官補佐官となった日独混血の青年、香田光彦がドイツで見たものとは、いったい何だったのか。
人類滅亡まで、あと20593日!21世紀、世界の国々は互いに争い、あるいは自滅の道を歩んでいた。地球環境は破壊しつくされ、行き過ぎた科学技術やコンピュータ文明は人間から人間らしさを奪っていた。このままでは、世界は破滅する-立ち上がった40人の男たちは、人類再生の戦いを挑むが…。人類の未来を鮮やかに予見した、混迷の世紀末の必読書。
神経衰弱の気鬱を逃れ、森の深奥を彷徨う真拆は、僧に蛇毒から救われ、山寺に逗留する。俗世から隔絶された奇妙な時空の中、真拆は現実と夢幻の境をいつしか踏み越え、一人の女と出逢った。その運命の奇跡、そして悲劇を古典的風格さえ漂う端麗な筆致で描く。待望のデビュー第二作。
舞台は第二次大戦下のイタリアの僧院。北アフリカの砂漠に不時着したパイロットが収容され、手当を受けている。「イギリス人の患者」としか身元を明かさない彼は、全身に火傷を負い、容貌も不明、記憶も喪失している。だが、瀕死の患者が若い看護婦に語り紡ぐ言葉は、この上なく深くミステリアスな愛の世界だ。美しい文章と濃密なストーリーで大きな話題を呼んだブッカー賞受賞作。
出版エージェントのアランは、ヨーロッパから帰国した父ニルスと数年ぶりに会った。ニルスは、アランと稀覯書愛好の友人に、パリのアメリカ人夫妻を描いた短編を読ませた。文体から著者を推定した二人は興奮した。入手経路は明かさずに「1922年パリのヘミングウェイ原稿盗難事件」を匂わせたニルスは、短編は全部で20編あると言う。ヘミングウェイ学者も巻きこむスリリングな長編。