出版社 : 新潮社
父が託した二つの遺物、それが全ての始まりだった。偽史と小説、大国・伍州で生まれ、その奇抜を極めた内容から遠古より虚構とされてきた二書には、伝説の国、壙と〓南(じなん)の王を巡る、ある“悲劇”が記されていた。数奇なる運命のもと、時代、国境を越え読み解かれていった、物語の結末とは。そして、書に導かれるかのごとく約束の地を訪れた「私」が目撃した光景とはー。二つの虚構が交わる時、世界の果てに絢爛たる真実が顕れる。5000と70年の時を繋ぐ、空前絶後のボーイ・ミーツ・ガール。「日本ファンタジーノベル大賞2019」受賞者による破格のデビュー作。
国民投票でEU離脱が決まったことも知らず、101歳のダニエルは、イギリスのとある村の療養施設で眠りつづけている。足しげく彼を見舞い、語りかけ、本を読んできかせるエリサベスは32歳の非常勤講師。少女時代を過ごした家の隣人がダニエルだった。当時すでに老人だった彼は、エリサベスに詩や小説、舞台や音楽、絵画の魅力を折りにふれ伝え、いつもこう訊ねた。「何を読んでいるのかな?」-エリサベスと母との確執、60年代に早世した女性ポップアーティストとダニエルのかなわなかった恋、ナチの手にわたったらしい彼の妹…。かつてない分断にさらされるイギリスと、時代の変転を越えてつづいてゆく人々の人生を描いたブッカー賞最終候補作。
この女優に付いていってはいけないー。小説家は、母の声に導かれ彷徨い続ける。『限りなく透明に近いブルー』からひと筋に続く創造の軌跡!5年ぶり、待望の長編小説!
『最後の秘境 東京藝大』著者、次なる探検先は「学生競技ダンス」だ!キレキレに踊れる小説家が、大学時代を捧げきった異世界にご案内。
京都での学生時代、駆け出し記者だった頃の結婚、十年後の離婚、新たな家庭と四十を過ぎてはじめてもうけた一人息子。東日本大震災の激務を経ながら癌を患い、現役記者を続けて六年。最後の日々が、目前に近づいてくるー。五十を前にして病を得た記者に流れた三十年の歳月。大佛次郎賞受賞作家が、ままならない人生のほのかな輝きを描く最新長篇小説。
彼は28歳で、自ら知る限り何の野心もない。大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれの苦悩を抱えた男女4人は、見捨てられたこの小さな家から、不確かな未来へと歩み出す。不安の時代をシェアする若者たちのリアルを描く愛と葛藤と再生の物語。
ナポレオンの猛威も去った1818年ベルリン。プロイセン陸軍クラウゼヴィッツ少将は、士官学校校長に任ぜられたのを機に「戦争の正体」を明らかにする論文の構想を練っていた。貴族出身の聡明な妻マリーに戦争の実体験と教訓を語るうち、彼の目に見えてきたものとは?名著誕生の裏側を描く全く新しい歴史小説。ナポレオン戦争6つの戦場から『戦争論』への思考を辿る大型戦記。
大学を卒業したばかりの僕の新居は、一見普通のアパート・カスミ荘。でも、住人は揃って個性豊かだし、怪現象も続くし…。この土地はキツネに祟られているという噂まであるらしい。一体ここはどうなってるの!?ようこそ、カスミ荘へ。楽しい隣人とたっぷりの不思議があなたを待っています。新潮ミステリー大賞優秀賞受賞作品。
真冬のニューヨーク。かつての恩師であり、誰よりも心を許せる男友だちが自殺したことで、深い喪失感にとらわれている女性作家。そこに、男が飼っていた巨大な老犬が現れるー。ペット禁止の狭いアパートで、心ならずもこの犬と同居することになった彼女は、主を失った犬の哀しみを抱きとめ、世話をするうち、やがて慰めを得るようになる。次第に衰弱する犬との残された時間。愛や友情のかたち、老いること、記憶や書くことの意味…。深い思索が丹念に綴られた、2018年全米図書賞受賞作。
神奈川県警刑事部長に着任した異色の警察官僚・竜崎伸也。着任早々、県境で死体遺棄事件が発生、馴染みの警視庁の面々と再会するが、どこかやりにくさを感じる。さらに被害者は中国人と判明、公安と中国という巨大な壁が立ちはだかることに。一方、妻の冴子が交通事故を起こしたという一報が…。益々スケールアップの第八弾!
勤めていた出版社の上司、同僚、小説家の父、担当編集者。これまで誰にも明かすことのなかった彼らとの日々を反芻すればするほど、私は自問する。私は、書くために彼らと過ごしていたのか。そして、最愛の女性・ことり。妻と正式に離婚することができていない私は今、ことりと生活している。しかし、ことりの母親の病気がきっかけで、私たちは別居生活を余儀なくされる。そしてある日を境に、私はことりへの猜疑の念に囚われてしまったー。神に魅入られた作家が辿り着いた、究極の高み。
福岡から大牟田へと走る西鉄特急の車内で、九十一歳の元社長が殺された。かつて三連覇に熱狂した西武ライオンズゆかりの地を巡り、鹿児島へ向かう旅の途中だった。被害者の「最後の旅」の目的地を辿り、ライオンズ黄金時代から遡って、十津川警部の捜査は意外な方向へ!
あなたって、どこでも傍観者なのね。家を出た妻にそう告げられ、47歳の会社員・青柳誠一は呆然と佇む。そして災厄は会社でもー。窓際部署に異動か、社が後援するバレエ団への出向、どちらかを選べと迫られた青柳は「白鳥の湖」公演の成功を目指すことに。スポーツトレーナーの瀬川由衣や天才バレエダンサー・高野悠らと共に突き進むが、次々と困難が…!読めば力湧く崖っぷちお仕事小説。宝塚舞台化記念座談会(2018)アンコール収録。
万葉歌人は、じつは恋愛下手でしたー。若い大伴家持から恋歌を贈られた年上女性の、理性と情熱の揺らぎを描く「年下の男」。夫に愛想を尽かした妻が出した結論「しゑやさらさら」。恋の歌が苦手な女の前に現れた庭を愛する男との、不意の出来事が胸を焦がす「恋の奴」。その他、下級役人の滑稽な同棲「紅はかくこそ」など全七編。歌人たちのおおらかで不器用な恋の一瞬を、みずみずしく描く傑作。
豆のスープをかき混ぜてもの思いに遊ぶ黒い“奇異茶店”。サングラスの表面が湖の碧さで世界を映す眼鏡屋。看板文字の「白薔薇」が導くレジスタンス劇。カント、マルクス、マヤコフスキー。ベルリンを幾筋も走る、偉人の名をもつ通りを、あの人に会うため異邦人のわたしは歩く。多言語の不思議な響きと、歴史の暗がりから届く声に耳を澄ましながら。うつろう景色に夢想を重ね、街を漂う物語。
ピカソやゴッホ、マティスにモネ、そしてセザンヌ。市美術館の珠玉のコレクションに、売却の危機が訪れた。市の財政破綻のためだった。守るべきは市民の生活か、それとも市民の誇りか。全米で論争が過熱する中、一人の老人の情熱と一歩が大きなうねりを生み、世界の色を変えてゆくー。大切な友人や恋人、家族を想うように、アートを愛するすべての人へ贈る、実話を基に描かれた感動の物語。