出版社 : 新潮社
スター女優のキャット・ディレーニーは、心臓移植手術を受け、成功。だが彼女は華やかな世界には戻らず、地方局で恵まれない子供に養子縁組の道を開く番組を始めた。恋人もできて、順風満帆に見えた新生活だったが、彼女と同じ日に移植手術を受けた者たちは次々に不慮の事故で死亡していった…。全米ベストセラー作家が『私でない私』に次いで世に問う、濃密なラブ・サスペンス。
長い五寸のくわえ楊枝に三度笠も懐かしい、上州無宿の渡世人・木枯し紋次郎が帰って来た。時は嘉永三年、股旅生活にさらに十年の歳月を加え三十九歳になった紋次郎が、十年前の浮世の義理に身を阻まれて、珍しく上州中仙道は板鼻宿最大の旅籠花菱屋に逗留し、遭遇した事件の数々。一世を風靡した孤高の渡世人・木枯し紋次郎の長脇差が翻る傑作連作小説集。
フツーの家族のフツーじゃない愛のカタチ。宮内家はどこにでもいる四人家族、なんだけど-神戸で「話し屋」として働くママは、誰よりパパを愛しているのにパパだけじゃ我慢できない困ったヒト。パパは誰かに恋して輝いてるママを包み込む大人の男だけど、若い女の人にフラフラしたり。高校生の明彦は女の子が放っておかないルックスにも関わらずホモセクシャル。中学生の美香は「大人の恋愛」に憧れてはいるものの、恋に恋するお年頃。ある日、美香はママの長電話から「ママの恋愛」を知る…。
「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。
聖地アンヌピウカでのUFO目撃以来、北海道の小さな町・富産別町では、UFOフェスティバルを推進する者、密かに巨利を企む者など、さまざまな思惑が蠢きだしていた。そんななか行方不明になっていた第一目撃者・亜紀子が戻ってくる。彼女はアイヌの心霊治療を身につけていた…。バブル崩壊後の時代状況を鋭く捉える野心作。“もうひとつの現実”をユーカラにのせて描く叙事詩的長篇。
夫が出稼ぎに発った晩から激しくなるばかりのからだのほてり。東北の海辺の町に住む35歳の浜浦登世は、自分でも不可解な性の衝動を抑えきれなくなり、幼なじみの英子に相談を持ちかける。やがて英子は病気で入院し、皮肉なことに登世はその留守中に近づいてきた英子の夫・聖次を受け入れてしまう。ある日、抱擁の現場を息子に覗かれ…。性に翻弄されて狂ってゆく平凡な女の運命。
不倫の場を覗かれた日から、貧しいながらも幸福な家庭に魔の影が忍び寄る。脅迫者に豹変した息子と娘は共謀して登世をゆすりだし、愛人にもやがて捨てられる。流産、結核の兆候、際限なくエスカレートする子らの要求…。追い詰められた登世は、パート先の事務長にからだを買われることに。破滅へと加速度的に転がる坂道。人間の内に潜む性の魔性を照射して新境地を拓いた長編。
女に手ひどく捨てられた極端に臆病な侍がどういうわけか一念発起して“千人斬り”達成をめざし始めた…。哀れな侍の末路を描く表題作。虎を奇天烈な方法で退治して金玉という情けない姓を拝領してしまった男のその後の系図を辿る「金玉百助の来歴」。落ちこぼれ忍者のドジな結末を描く「伊賀の蟹八」等、21編の掌編に8編の怪異譚を加えた痛快無比、抱腹絶倒のショートショート集。
電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。
ヘイドンのもとに青年時代の父を描いた絵の写真が屈いた。緑の瞳の美女の写真が続き、不審な写真が次々に送られてきた。そして最後にヘイドン自身の写真がー前日に撮られたもので、頭に銃弾を受けた様が書き加えてある。一体誰が、なぜ。一方、私立探偵スウェインの惨殺死体が見つかった。なぜか彼の部屋にはヘイドンの写真が…。秀逸な洞察力と精緻な背景描写の大作。
ホワイトハウスが新たな軍縮政策である『第一段階』を宣言したヴェテランズ・デイ前夜、陽は明日昇るの暗号のもと愛国者たちが行動を起こした。ある者はF-14トムキャットをハイジャックし、ある者は大統領の暗殺を企て、そしてー彼らは何者なのか。真の目的は。核ミサイルの抑止力に依存する軍縮交渉の場を軸に、核による人類の危機をリアルに描く迫真の軍事サスペンス。
愛称ゼーブル(縞馬、おかしな奴)の仕事は公証人。高校の数学の教師のカミーユと結婚して15年、13歳の息子と7歳の娘の父親である。彼は最愛の妻と可愛い子供たちに囲まれて愉快な人生を送ってきた。しかし妻と出会った時のあの愛の刺激を求めていたゼーブルは、愛の倦怠に耐えられなかった。そして、匿名でラヴレターを妻へ送り続けたが。フランスの気鋭が描く永遠の夫の逆転劇。
二十三年前、五月御霊会の日に事故死した父。その目に見えない力が、大きな潮流のように姉妹の運命を動かしている。離れて育った芭江と杉子の、二人の男性をめぐり交錯する恋愛。故郷に語り継がれた「かわうそ伝説」の秘密。-父祖の霊魂が生きる四国の村と七十年代の東京を舞台に、濃密な筆致で織りなす、長編小説。
OLのマリアンにはピーターという恋人がいる。このままいけば、結婚し、世間なみの幸福な家庭が約束されている。だが、果してそれだけが自分の人生だろうか、マリアンのアイデンティティを求める悩みは深く、彼女は拒食症に…。人生の岐路に立つ若い女性が一度はかならず経験する心の迷いを、女性特有の生理からリアルに描く、フェミニズム文学の先駆けとなった著者の処女作。
雪のコペンハーゲン。イヌイットの血をひき、雪と氷と孤独を愛する女性、スミラ。友人の少年が雪の屋根から転落死する。が、雪が「読める」スミラに残された足跡は告げる、これは事故ではない-。真相を追う彼女にかかる検察の圧力。無言の脅し。そして、スミラが単身乗り込んだ謎の船は、氷に閉ざされたグリーンランドへ…。全く新しいヒロイン像が欧米で爆発的にヒットした、北欧産海洋冒険ミステリー。
借財は歳入の八十年分。貧窮の越前大野藩を蘇生させるべく、刀を捨て、天賦の商才と経済感覚を武器に改革する侍、内山七郎右衛門良休。藩直営の特産店「大野屋」の設立、流通革命、価格破壊を施し、蝦夷地への開拓投資など奇策を弄して、藩を復興させた新しい経済武士の生涯を描く。