出版社 : 新潮社
人気女性キャスターがベストセラー作家を射殺、正当防衛の弁護を引き受けたパジェット弁護士。殺人現場で発見されたテープをめぐる検察側との攻防。そのテープから生々しく甦る、あの大女優の声、明らかになる、20年前の彼女の自殺の忌まわしい真相。そしてそのテープが、彼自身の運命の大きな落とし穴になろうとは-全米を興奮させた大型法廷サスペンス。
ダイヤモンドの出来事に写しとられた、様々な喜びと悲しみー。古ぼけたファーストミットに死んだ兄の青春を辿る少年、ホームプレートに戦災で失くした家と家族への思いを重ねる老審判など、生涯の四季それぞれを迎えた人々の姿を描く表題作など三編を収録。一投一打に宿った記憶が、いつしかそれぞれの人生への優しいオマージュを語り始める。直木賞作家による珠玉の作品集。
男子禁制の奥向で、女だけの御殿芝居を上演したお狂言師たち。芝居のみならず、男日照りの奥女中相手にといちはいちもしたという。お狂言師・坂東琴絵は立役専門の二枚目。贔屓筋を悦ばせるため、裏芸の研鑚にも日夜余念がなかった。知られざる奥向の実態を詳らかにする「お狂言師」もの連作5編のほか、間男するのが大好きだった天真爛漫な女を描く表題作など、江戸艶笑小説9編。
自分を書くことはアメリカを書くことだー本書は、アップダイク自身が新潮文庫のために14の短編を選んだ短編集。ボストンの小さな町にあるスーパーマーケットでの夏の日の出来事「A&P」、ハーヴァード大学の寮生活「キリスト教徒のルームメイトたち」、本邦初訳のベック氏の女性遍歴「オーストラリアとカナダ」、離婚歴の父娘の西部への旅「ネヴァダ」などを収録。自作解説付き。
シアトル警察の部長刑事ルー・ボールトは、休職中の日々を心静かに送っていた。そんな彼のもとに、かつて彼を愛した心理学者ダフネ・マシューズが訪れる。彼女がボランティアを務める更生施設に、レイプされて電気ショックで記憶を消されたうえ、腎臓を摘出された家出少女がやってきたのだ。刑事魂を刺激されたボールトは、捜査に舞い戻る。臓器移植の実態を鋭く抉る医学スリラー。
ぼくたちはもうすぐ12歳の兄妹。この夏立派な木の砦を作った。父さんもベトナムから戻ってきた。戦争後遺症に悩まされている父さんの働き口は決まらないけど、ぼくたちは父さんが一緒にいるだけで満足してる。ぼくたちの砦がもとで、近所の乱暴者七兄弟との間に、本格的な戦争が始まった。父さんは戦うことの虚しさをしきりに説くけど、ぼくたちはどうしてもあの砦を守りたいんだ。
ローマも場末のちっぽけな教会にイギリス人の青年が侵入、放浪罪で保護された。この青年、美術史を専攻する大学院生で、伴の冴えない教会には、聖画に擬装されたラファエロの知られざる傑作が、一世紀以上にもわたり飾られてきた筈だと供述。しかも彼が教会に侵入した時には、その絵は既になくなっていた、というのだが…。謎が事件を呼び事件が謎を生む、美術犯罪ミステリー。
日本を遠く離れて二十年…。異国の地アメリカに暮らす姉妹を結ぶ電話線を、英語混じりの笑いとため息が今日も行き来する。漱石や一葉の描いた日本に恋焦がれる妹。アメリカ人になりきれない姉。ふたつの国ふたつの言語に引き裂かれた彼女たちの「特別な一日」が始まる。
離婚歴のある39歳の男が、27歳の不思議な女と出会った。翻弄される濃密な時間。謎が音も立てずに近づいてくる。東京の暗部を照らしだす、スリリングで透明な恋愛小説。
僕たちは、生きてなくちゃいけないんですか。自殺はなぜいけないんですか。恋人と一緒に死にそこねた少年のテレビで発した言葉が社会を動かす。死んだ彼女に会いたいと、後追い自殺を企てようとする少年。そして街に溢れ、徘徊する自殺志願者の群れ-。自殺した生徒を「舞姫」と崇める女子校で、自らも兄を自殺で失った新任教師もまた、過去と決別するための熱病のような一夏を過ごした。山本賞候補作家が放つ魂を揺さぶる書き下ろし長編小説。
秘めたる魔法の力をもつ石は、もつれた運命の糸をゆっくりと巻き取り始めた。邪悪な闇の瞳を持つ見習い魔女ジリオン。青狼の毛皮を纏う王子ユルスュール。魔王。黄泉の国。伝説の湖。来るべき恋人を待ち続ける水売り娘ー愛と憎しみ、光と影が交わる刹那、世界はめぐり、すべてはあるべき場所へ…。果てしない冒険と限りない夢を壮大なスケールで描く書下ろし本格ファンタジー。
藩主の心変わりから暇を出された側室・お市の方は、家臣・笹原与五郎の妻となる。だが数年後、お市の生んだ子が世継ぎとなり、与五郎は妻の返上を求められる。藩命に従うべきか、それとも…(「拝領妻始末」)。温和な性格で武芸も不得手な男に上意討ちの命が下る。周りは心配するが男は秘策を練っていた(「上意討ち心得」)。家や主君、慣例に縛られる武士たちの悲劇を描く傑作短編集。
人々の願いと夢がついえたその場所にヒーローは忽然と姿を現す。沈思黙考の寡然な正義漢“むっつり右門”こと近藤右門。犯し、殺し、立ち去る“円月殺法”の剣士、眠狂四郎。暇を持て余し、懲悪が趣味となった“旗本退屈男”早乙女主水之介。そして陰惨背徳“四谷怪談”の色魔、民谷伊右衛門。皆の心に今も棲む十二人のヒーローたちが一堂に集結。シリーズの取を飾る壮麗な最終巻。
「今宵、吉良を殺す」-それは謀略の終結を意味した。赤穂藩廃絶後、大石内蔵助は藩士の被った恥を栄光に転化する為、密かな奔走を開始する。大坂塩相場に、町人の噂話の巷に、悲運に泣く女たちの許に…。内蔵助の仕掛けた刃は討入り前にすでにして吉良・上杉一門に迫り、雪の師走十四日は審判の日となった。忠臣、浪士ではなく“刺客”と化した四十七士を気高く描く画期的作品。
時は三代将軍・義満の治世。将軍の従弟にあたる剣の達人・来海頼冬は、血筋ゆえに刺客に追われる日々を送っていた。その前に現われた水軍の頭目父子。彼らは、南北の朝廷を超えて日本の「帝」たらんとする義満の野望を打ち砕くべく、玄界灘一帯で奇襲と抵抗に明け暮れていた。頼冬はそこに、歴史の光明を見出す。南北朝統一という夢を追った男たちの戦いを描く、『武王の門』続編。
宮本武蔵に打ち勝つ事。それのみを念頭に鍛練を重ねた兵法者がいた。夢想権之助は、香取神道流の印可を受け、一刀流、馬庭念流など様々な流派の奥旨を得て武蔵と立合ったが、あえなく敗れてしまう。剣を捨て、諸国を遍歴するうちに、権之助は、杖という新しい得物に出合う。幾年かの苛酷な鍛練の末、数々の秘技を会得して、独自の杖術に開眼する。そして、権之助は再び武蔵に挑んだ。
テキサス州の小さな田舎町、アガタイトで、ある日、若い女性の惨殺死体が発見された。しかも、綺麗にマニキュアされた指の爪のうち三本が、なぜか切り落とされていた。エイブル保安官は捜査を開始するが、犯人像は一向に浮かんでこない。大規模な葬儀が行われる暑い夏の朝、彼は三本の爪を持ち歩いている奇妙な男の話を耳に挾んだ…。ありふれた町を舞台に描く異色サスペンス。
顔面を潰す。切り刻む。マグナムで吹き飛ばす。そして両腕を切り落とす。なぜ。あの女たちに血のしるしがついていたからだ…。相次ぐ惨殺事件に凍りつくヒューストン。女手ひとつで娘を育てるケイシーは、そんな街のアパートメントに越してきた。隣人はフリーライター、心理学者、会計士。そのひとりの目に、この母娘の血のしるしが鮮明に映ったー。戦慄のサイコ・サスペンス。