出版社 : 新潮社
二重スパイ・ハートマンは、もう引退したかった。病床の妻は死に、息子は独立した。金のための嫌な仕事をする必要はない。そろそろ老いも感じる。しかし、あまりに卓越したその経歴のため、二大国の情報部は決して彼を自由にしてくれなかった。だが、ついにチャンスが訪れた。彼の身代りになってくれそうな男を見つけたのだ。人並みの幸せを夢みたスパイが立てた完壁な作戦とは?
ベルリンの富裕な銀行家の子として生まれたペーターとパウリのヴィンター兄弟は、若くして第一次世界大戦に従軍する。だが、過酷な戦争が終わった時、彼らが忠誠を誓った皇帝は退位し、第一級の強国だったはずのドイツ帝国は崩壊した。社会主義革命の暴動、大インフレの中、ヒトラーのナチが登場し台頭していく。-20世紀前半のドイツを舞台に、二人とその家族の波瀾の生涯を描く。
父の事業を継いだペーターの妻はユダヤ系アメリカ人だった。ナチに逮捕された彼女の釈放をかちとるべくペーターはアメリカへ渡る。一方パウリは父の庇護を失い、ゲシュタポの弁護士となった。第二次世界大戦が勃発し、ペーターは連合軍情報部の連絡員となって故国に潜入する。-とうとうたる歴史の流れを克明に辿りながら、揺れ動く時代に生きた人びとの姿を重厚に描く長編小説。
天の川のように人は流れ、時は流れる。別れた夫も難問にぶつかっている。性のざわめき、体の不調が私を襲う。あの頃は二人で居る孤独、今は一人で居る孤独の中に日々は過ぎてゆく。女性のシングル・ライフをつみめる長編小説。
かつては中世ボヘミアの王、いまはアインシュタインの友人。この男、名はアロバー、当年とって、千歳という。不老不死の甘き香りを求めて、男は旅立った。流れ流れて一千年。辿り着いたのは、二十世紀末のニュー・オーリーンズだった。同じ頃、シアトル在住の美人ウェイトレスのもとに、真っ赤なビートが届けられる。いったい誰が、何のために?鍵を握る究極の香水、K23とは。
ぼくはもう、こんな両親のもとでは一時間も暮せない。本当に理解しあえる両親を求めて、自由契約裁判を起したケース。テキサス、ハワイ、アラスカ、ニューヨークと契約養子を願う“理想的な親”のもとを訪ねて歩くが…もしもあなたが父親なら、子供に「ノースするぞ」といわれた要注意!この物語は、そんな親子の物語。
鬼才が描く4編の異常な愛の裏事情。-相続問題が引き金となって、嫁と舅の間に生まれた愛を描いた、「愛の帆掛舟」。癌に罹ったオールドミスの衝撃的な告白を綴った「愛の真珠具」。金持の息子とゲイボーイの愛の結末を描いた「愛の百万弗」。手堅い銀行員の夫に意外な愛人がー。夫婦の愛の行方を追求した「愛のハンカチーフ」。『愛の矢車草』の待望の続編、文庫書下ろし・各編挿画入り。
人間ってのは、みんな未完成な模造品だね、誰もが誰かを演じてるー。出来合いの「青春」を舞台にのせてドラマチックに演じきることを夢み、ついには、演技する自分を茶化すことにすら情熱を傾けてしまう永遠の青二才・亜久間一人。捉えどころのない「現代」をたくましく生き抜く自意識過剰な夢想的偽悪少年の、明るくねじれた自我の目覚めと初々しい愛と性の大冒険。新時代の青春文学。
フロイトの招きでウィーンに移住したペリー一家は、第二次ホテル・ニューハンプシャーを開業、ホテル住まいの売春婦や過激派たちとともに新生活をはじめる。熊のスージーの登場、リリーの小説、過激派のオペラ座爆破計画…さまざまな事件を折りこみながら、物語はつづく。現実というおとぎ話の中で、傷つき血を流し死んでゆくすべての人々に贈る、美しくも悲しい愛のおとぎ話。
キンギ牧師暗殺は、じつは本人の意志であり、その実行には、牧師の後継者で副大統領候補のバーネットが加担していた、という驚くべき情報がM16にもたらされる。休職中だった中年アナリスト、レイシーは、その真偽を確かめるべくスペインに飛ぶ。だが、情報提供者は殺され、レイシーは国際的な大陰謀に巻き込まれてゆく。老練な謎の暗殺者と中年スパイの死闘を描く長編サスペンス。
英国政府が矯正不能な男達を集めて大西洋の孤島に作った流刑地サート。そこではファーザーと呼ばれる男が指揮する規律ある集団ヴィレッジとアウトサイダー達が抗争を繰り広げていた。その陰で密かに進む脱出計画。そこに送られたラウトリッジを待つ運命は…。無実の罪に陥れられ、絶望のどん底に突き落とされながら、過酷な流刑地で人間として成長していく男の姿を描いた冒険小説。
野性よ、疲弊した文明を撃て。大雪山の闇を歩く。木が勾い、ヒグマが鳴いた。夜が明けると、そこは原初の村-自然とともに生きる人々の集落にまぎれこんだコンピュータ販売人が見たものは?迫力に充ちた長編小説。
20歳の娘アリスンはニューヨークに住んで演劇学校に通っている。芝居は彼女が夢中になれる唯一のもの。ボーイフレンドたちのいいかげんさにうんざりしていたとき、ディーンと出会った。彼は今までの男の子たちと全然違っている。優しくて知的だ。でも囲りの人間たちは二人の純愛を温かく見守ったりなんか決してしてくれない。強引に誘われたパーティー、それは二人にとって、ちょっと残酷なものだった…。80年代のサリンジャー、マキナニーの最もサリンジャー的作品。愛に向かって手を差しのべる、ポスト・モダンガール、アリスンの物語。
常識を遥かに超える擬似体験ゲーム機「クラインの壷」が開発された。スクリーンに映すべき映像を網膜に直接映し、聴覚嗅覚触覚、全てが現実そのままに感受される-だがそのテストモニターが消え、謎の組織が動き始めたとき…。緊迫の展開、驚異の結末、新たなミステリー世界が誕生した。
シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて5年、前途に希望を見いだせない長英は、牢屋主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄絶な追跡をはじめる。
放火・脱獄という前代未聞の大罪を犯した高野長英に、幕府は全国に人相書と手配書をくまなく送り大捜査網をしく。その中を門人や牢内で面倒をみた侠客らに助けられ、長英は陸奥水沢に住む母との再会を果たす。その後、念願であった兵書の翻訳をしながら、米沢・伊予字和島・広島・名古屋と転々とし、硝石精で顔を焼いて江戸に潜伏中を逮捕されるまで、6年4か月を緊迫の筆に描く大作。
宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。-吉原成立の秘話、徳川家康武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。
表向きは平凡な草紙屋、その実、謀事に抜かりなく、剣の腕も確かな悪党、巽屋孫兵衛。彼が墓守の卯平、女髪結いのお徳、遊女のお新、元浪人の妻お京といった、ひと癖もふた癖もある面々を率い、色と欲にボケた亡者どもを、あの手この手で引っ掛け、騙し、有り金残らず巻き上げるー江戸は深川界隅を舞台に繰り広げられる、痛快なダーティー・トリック・ストーリー10編。
主君織田信長からその政治的・軍事的手腕を高く評価されていた明智光秀は、天下人を自認する信長の増長をひそかに憂えていた。意に添わぬ者たちに対してはおびただしい殺戮をくりかえし、古参の重臣さえも些細な理由で追放する信長。しかし諌言は受け入れられず、いつか光秀の心は信長から遠ざかっていく…。逆臣の汚名を覚悟で主君を弑逆した悲運の智将の内面に迫る長編小説。